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王都編
10.牛牛パニックでピクニック①
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日中の陽射しが、だんだんと強まってきたこの頃。ヴァーミリオン家の庭でお茶をするリリアンとその友人達は、素朴なお菓子を摘んで他愛もないおしゃべりに花を咲かせていた。
「えっ、こちらのサブレはリリアン様の手作りですの?」
「ええ。そうなんです」
「てっきり、どこかのお店のものかと」
リリアンは、お口に合ったようで良かったわ、と微笑んだ。
リリアンの兄、レイナードの婚約者のクラベル。彼女はお菓子作りが何よりの趣味である。そんな彼女の作るお菓子は本当に美味しくて、リリアンは大好きだった。クラベルは隣国の公爵家の令嬢であるが、そんな高位貴族の令嬢であっても、美味しいお菓子が作れるのだ。リリアンはそれが不思議で、それでいて羨ましかった。自分にも出来るかしらと、そう尋ねたのが数年前。にこりと笑んで、クラベルは優しくリリアンにお菓子作りを教えてくれるようになった。
それからたくさん練習をして、最近ようやくリリアン自身満足のいくものが作れるようになった。だからこうして友人達に振る舞うようになったのだった。無事友人達も食べられる出来栄えだったことに、リリアンはほっとした。
「まだ、ケーキは上手に焼けなくて。サブレやクッキーが精一杯なんです」
そのリリアンの言葉に驚いてみせたのは、リリアンの友人、シャロンだった。彼女はトラウル侯爵家の娘で、リリアンとは慈善活動で繋がりがある。今までリリアンと共に孤児院へ行く機会があったが、その時リリアンはよく日持ちのする焼き菓子を持参していたことを思い出した。
「もしや、これまで孤児院に配っていた焼き菓子は」
「ええ。わたくしが焼いたものなの」
それに、まあ、と声を上げたのは、もう一人の友人、ミオラル・レンブラントだ。
「リリアン様お手製のお菓子を、子ども達に配られたのですか?」
「ええ、そうよ。ようやく人に食べて貰えるくらいには作れるようになったので、それで」
そうなのですか、とミオラルは呟いた。ミオラルの生家、レンブラント領は、交易の要所だ。大きな商会を有していることもあり、ヴァーミリオン家ともなにかと繋がりがある。ミオラル自身は、美しく多才なリリアンの信奉者だった。リリアンが孤児院の子ども達に手作りのお菓子を配っていたと知り、羨ましい、と拳を握りしめている。
「り、リリアン様お手製のお菓子を、市井の子ども達が味わっているだなんて……」
それは、ミオラルの心からの本心だ。美しく優しい、貴族令嬢の鑑であるリリアンには、彼女の家族以外にも心酔する者が多い。そんな彼女らからすれば、リリアンが不慣れながらもその手で作ったお菓子となれば、味わいたいと思う者は少なくないだろう。それは、ミオラルだけでなくシャロンも同じ思いだった。さっきまでとは違い、サブレを噛み締めるように味わっているのはそのせいだ。
じっくりお菓子を味わう二人を前に、リリアンは照れたように微笑んでいる。純粋に友人達が喜んでくれているのだと思っているのだ。
「まだたくさんありますから、召し上がって下さいね」
「まあ! ありがとうございま、す……」
と、ミオラルがリリアンの気遣いに感謝し、視線を上げた時だ。リリアンの遥か後方、屋敷の回廊の柱に、とある人物が潜んでいるのに気が付いた。柱の陰からちらりと覗く銀髪と、そのご尊顔は見間違えようもない。
言わずと知れたリリアンの父、アルベルト・ヴァーミリオンである。
突然の公爵当人の登場に、シャロンもミオラルも息を呑む。が、公爵はかなり離れた所にいる。潜むようにしておりこちらへ来る様子はない。どうやらこれは、こっそりと娘の姿を眺めようとしているようだ。リリアンに気付かれないよう、こっそりとシャロンとミオラルは視線を交わした。
(でも、なんだかわたくし達に仰りたいことがあるみたい)
(な、なにかしら。すごく視線を感じるけれど)
アルベルトはリリアンはもちろんだが、どうしてだかシャロンとミオラルのこともじっと見ているようだった。どうしたのかしらと二人は内心で首を傾げている。
(リリアン、今日もお菓子を焼いたのか……私の分はないのか!?)
アルベルトは柱の陰で、そんな事を思いながらリリアンのお茶会を見守っていた。
リリアンのお菓子作りの腕前は上がっている。年末に食べたパウンドケーキは本当に美味しかった。その後、屋敷に滞在するクラベルと共にいくつかお菓子を作って、それを振る舞ってくれたのだ。前に街に二人で出掛けた際に食べた、カスタードのパイを、アルベルトが美味しいと言っていたのを覚えてくれていたらしい。試しに作ってみたと言って差し出された時には涙が溢れた。パイ生地はクラベルが焼いたそうだが、リリアンが初めて作ったというカスタードクリームはくどくなくて品のある味わいだった。それがパイとよく合っていた。そう言ったのだがリリアンは出来栄えに満足出来なかったらしく、「もっと頑張ります」と言って決意を新たにしていた。向上心が高く素晴らしいことだと、アルベルトは心の底から感心したものだ。
年明けからはリリアンも忙しく、ようやく今日、来客に合わせて焼かれたリリアンのお菓子。たくさん作ったようだと聞いていたが、アルベルトの元にそれは届いていない。いつもならお裾分けして貰えるのだが、と気になって、こうしてお茶会を覗いているのだ。そんなアルベルトを呆れた顔で見るベンジャミンは、首根っこを掴んで主人を連れて行くべきかどうか悩んでいた。
ぐぬぬと様子を伺うアルベルトを背景に、リリアンは友人達にお菓子作りの楽しさを伝える。
「工程を遵守するのは難しいですし、その手順も、うまくいくとは限りません。さっくり混ぜる、だなんて、想像がつかなかったのですけれど。何度もやって、こつを掴んで、その結果美味しいクッキーが焼けると、とても嬉しいんですよ」
言ってリリアンは、ぱきりとサブレを一枚割った。
「努力をして、試行錯誤をして、そうして出来上がったものが他の人の喜びになる。わたくし、お菓子作りがこんなにもやりがいのある事だなんて、思ってもいませんでしたわ」
割ったサブレの片方を口に含んで咀嚼する。甘さが口一杯に広がり、リリアンは思わず微笑んだ。
「ですから、美味しいとおっしゃって頂けて、本当に嬉しいの。お義姉様がお菓子作りにのめり込まれた気持ちが、今なら分かるわ」
ふふ、と笑うリリアンに、シャロンとミオラルもまた微笑む。
(リリアン様の楽しげな微笑み! ああ、とっても愛らしいわ……!)
(う、羨ましい。ご家族の皆様が羨ましい。これをいつも拝見なさっているだなんて、羨ましい)
もちろんそんなことおくびにも出さず、微笑むに留める二人はまさしくリリアンの友人に相応しい振る舞いだった。もっとも、そうでなければ、まずリリアンの前に立つ事すら許されないから、当然のことだった。
ミオラルとシャロンはこっそりと視線を交わす。
(……であれば、サブレはできる限り頂くとして、いくらか残した方がいいわね)
(そうね、半分は残しておかないといけないと思うわ、なんとなく)
というのは、声には出していないが、リリアンとの付き合いが長い分、この二人の付き合いも長い。娘とその友人達とのお茶会に、アルベルトが顔を出すのもいつもの事だった。柱の向こうからこちらの様子を伺っているアルベルトが、どういう目的で来たのかを、なんとなく察したのだ。これもまた、リリアンとの友人付き合いに必要な技能だと言えよう。ヴァーミリオン家の中でも、いや、国内で最も機嫌を損ねてはならないのがこの男なのだ。彼の扱いを間違えては、最悪国が滅ぶ。
その要であるのが、彼の愛娘リリアン。彼女の存在こそ、現在のトゥイリアース王国における基幹であった。
そうと知らないのは本人ばかり。リリアンは、楽しげに家族との料理に関するエピソードを語っている。
それを聞いているうちに、シャロンとミオラルは、なんだか自分もそこに混じっているような、そんな高揚した気持ちになった。リリアンの話を聞いているとたまにあるのだ、そういう事が。それはおそらく、彼女が心底楽しそうにしているからだろう。リリアンの笑顔には、他者を惹きつける絶対的な魅力があるのだと、二人はそう思っている。
シャロンは、リリアンの話を聞いて、同行した孤児院での一幕を思い浮かべた。
「確かに、子ども達は喜んでいましたね。あの子達は、お菓子なんて滅多に口にしませんから、余計に」
リリアンはそれに頷く。
「ええ。だから余計に、力が入ってしまうの。滅多に口にできないものが美味しくなかったら可哀想でしょう? やはり喜んで貰いたいから、それで」
ミオラルは、ほう、と息を洩らして、関心したように頬に手を添えた。
「素晴らしいです。そんな風にリリアン様に想って頂けたら、わたしでしたらそれだけで充分です。その子達も喜ぶでしょう」
そしてことりと首を傾げる。
「でも、お話を聞いていると、本当に楽しそうですね。なんだかわたしも、料理を作ってみたくなりました」
その言葉にリリアンは、ぱあっと笑顔をきらめかせた。
「ミオラル様、本当ですか?」
「ええ。リリアン様の楽しげな様子を聞いていたら、そう思いました」
それはミオラルの本心だった。自分の手で作った物を誰かに振る舞ったことなんて、普通の貴族令嬢は経験する機会は少ない。大抵はお茶会の準備止まりだ。それも、家の体裁があるからと見栄を張ることがほとんどで、心遣いが伝わるかどうかは参加者次第。当主夫人になればそうやって手腕を振るうようになるが、嫁ぐ前の身では友人を招くくらい。ごく親しい友人としかやらなければ、やりがいも次第に減っていくだろう。
だがそれを、手作りのお菓子でもてなせたら。マンネリした友人とのお茶も、少しは楽しめるものになるだろう。
そう言うと、リリアンは分かりやすく頬を紅潮させた。
「すごいわ、素敵! ミオラル様にそう言って頂けるなんて嬉しい。ミオラル様の納得のいくものが作れたら、是非わたくしにも分けてちょうだいね」
「ええ、きっと。とは言っても、わたしはまったく経験がありませんから、いつになるか分かりませんが」
機会、と呟いて、リリアンはぱしりと両手を合わせた。
「では、三人で手製のものを持ち寄ってみませんこと?」
「三人で、ですか?」
「ええ。それでピクニックでもしませんか? そろそろ湖畔に可愛い花が咲く頃なの」
それにシャロンが、なるほど、と呟く。
「持ち寄ったものをお弁当にするのですね」
「そうよ。軽食を持ち寄って、それを湖畔で頂くの」
「ですがわたくし達は本当に初心者で」
「ごくごく簡単なもので良いの。サンドイッチだとか、マフィンだとか」
リリアンはそう言うが、サンドイッチやマフィンを作るだなんてこと、ミオラルとシャロンには未知数の事だった。困ったように顔を見合わせる。
「ですが、半端なものをリリアン様にお出しするわけには……」
リリアンは乗り気だったが、確かに未経験の状態でお菓子を作れ、と言われては困るだろう。それに思い至ったリリアンは、詫びの言葉を述べた。ミオラルとシャロンは、そんなリリアンにとんでもない、と慌ててそれを止める。
「リリアン様、そんな風に仰らないで。ただわたし達には、想像もつかなくて」
「そうです。どんなものであればわたくしに出来るのか、それが分かれば良いのですが」
「そうね……ああ、そうだわ、シルヴィア」
リリアンは背後に控えているシルヴィアを呼びつける。
「調理をした事がなくてもできる、持ち運び可能な軽食には何があるかしら」
それはなかなか難しい条件だ。種類はかなり限られるだろう。だがシルヴィアは、すっと腰を折って即座に答えた。
「刃物の扱いには気を付ける必要がありますが、カットフルーツが入門には良いかと。あとは、葉物野菜を中心にしたサラダ。それに慣れたら、スープが候補になり得ます。いずれにせよ、お二方のご実家の調理師の協力を仰げば、そう難しくはないと思われます」
シルヴィアの言葉に、シャロンとミオラルはなるほど、と頷く。それならばさほど難しくなさそうだ。怪我には気を付けなければならないだろうが、まずは簡単なところから始めればいいだけの話だ。
「その程度であれば、わたくし達にもなんとかなるかも知れません」
「そうだわ、家のシェフに手伝って貰えばいいのよね。出来る限り自分でできるよう、準備をお願いして」
「じゃあ、お二人とも」
リリアンの言葉に、シャロンは大きく頷いた。
「わたくし、やってみます。……へたくそでも笑わないで下さいね」
「笑うだなんて、そんな。シャロン様の努力の成果ですもの。どんな形であれ、それは尊ぶべきものです」
「リリアン様……」
ミオラルもシャロン同様頷き、頑張ってみると意気込みを見せた。それにリリアンは、心からの声援を送る。
「ご無理なさらないでね」
「ええ。怪我には細心の注意を払います。メニューは……今ここでは決められませんね」
シャロンの言葉に、そうねえ、とミオラルが同意する。
「少し、練習してみないことには、なんとも言えませんね」
「そうね。リリアン様、申し訳ありませんが、メニューは練習後に共有させて頂きますわね」
「ええ。それで構いませんわ」
であれば、と、シルヴィアが三人に提案を挟む。
「必要な容器などは、当家にご用命頂ければ、準備してお渡し出来ます」
「そうね。そうしましょう」
リリアンがそう言えば、あとはもう決まりだった。おおよそのところが纏まって、少女達は安堵してそれぞれお茶を楽しむ。
それを遠目で観察していたアルベルトは、リリアンの成長に涙せずにはいられなかった。
(は、は、はああ! リリアン、なんて高潔なんだ! 気高く清らかでそれでいて他者の努力を認め、称賛を惜しまない。なんて、なんて崇高な精神……! うう……うちの子はやはり天使だった!)
滲む涙をそっとシャツの袖で拭う。ベンジャミンが背後で渋い顔をしているのだが、そんな事とは知らないアルベルトは引き続きリリアンの様子を伺っていた。
(三人でピクニック。それに持ち寄る軽食は自分達の手で用意する、そういう事だな。シルヴィアの申し出の意図は、安全面か。適切に保存しないと、まだ寒いとは言え中身が傷んではまずい)
令嬢が手作りしたものだ、出来栄えはともかく、衛生面だけはしっかりしていないといけない。リリアンが傷んだものを口にするなどという異常事態だけは避けねばならない。少し前に、そういう保存容器が仕上がったばかりだ。実施実験はクリア済み、あとは量産体制を整えるところまで出来ている。今回使う分は、そのサンプルを回せば良さそうだ。
(いや、むしろ私の手で作るか……?)
だがそれには、少し時間が無さそうだ。容器は流用した方がいいだろう。
それよりも、アルベルトには気になる事があった。
(おそらく軽食とは言っても、本当にごく軽いものだけになるだろう。最悪お菓子だけになる可能性もある。それはだめだ、リリアンには良い物を食べて貰わないといかん!)
そう、持ち寄る料理が、いくら令嬢とは言え、成長期の子どもに与えるにはあまりに量が少ない。リリアンには良い素材のものを、それもとびきり美味しいものを食べて貰いたいと思っているアルベルトにとっては、見過ごせない事態であった。
(肉だ、肉が必要だ。最高の肉! それを美味しく調理すれば、リリアンも喜ぶに違いない!)
ぐっと拳を握り、アルベルトは決めた。ピクニックには、美味しい肉料理も持って行って貰おう。食べやすいように工夫が必要になりそうだ。ならば焼いた肉をサンドイッチにしたらいいだろうか。そんな風に考えを巡らせていたが、そう言えばいつピクニックへ行くと言っていたっけと、アルベルトは再度、リリアン達の会話に耳を澄ませる。
「では、一週間後でいかがでしょう」
(——一週間!?)
それはアルベルトの予想より、遥かに早い日程だ。友人達も急な事だと言うのではないかと、はらはらして様子を見守る。
「わかりましたわ」
「ええ、構いませんわ」
(構わないのか!?)
練習も含めると少し余裕がないのではないかと思ったが、そうこうしているうちに予定が決まってしまった。まあ、これに関してはアルベルトがどうこう言える立場ではないから仕方がない。
が、そうと決まったのであれば、こうしてはいられない。アルベルトは勢いよく立ち上がり、ベンジャミンを振り返った。
ベンジャミンはいつも通り、しょうもないものを見る目をアルベルトに向けている。
「なんだその目は」
「いえ、別に」
それをじとっと見返すアルベルトだったが、すぐに時間がない事を思い出した。
「こんな事をしている場合ではない。すぐに出掛けるぞ」
「承知しました。ところで、どちらへ行かれるのですか」
「肉だ」
「……肉?」
ベンジャミンは首を傾げる。いきなり肉、と言われてもわけが分からない。言うや否や歩き出したアルベルトを追い、どういう事だとベンジャミンは問い掛けた。
「肉が必要と、そういう事でしょうか」
「ああ、そうだ。そう言っている」
言われていたわけではないが、反論してもしょうがないので、ベンジャミンは黙っていた。
「普通の肉ではだめだ。リリアンにはとびきり旨い肉を食べて貰わないと」
「とびきり旨い肉……なるほど。であれば、その辺の家畜では駄目ですな」
「そういう事だ。なにか特別なものがいいんだが」
「牛であれば、この時期でしたらティーメル牛が獲れるやもしれません」
「ああ、あれか」
ティーメル牛は、東の草原でたびたび目撃される牛型の魔物だ。群れ単位で餌場を巡っており、そのせいか味が濃く旨味の強いことで有名な食肉牛として扱われているのだが、飼育ができない。けれども非常に美味なので需要は高い。その為、冒険者が狩りをすることでしか入手手段がない牛だった。
だが、それもなかなか困難なことで有名だった。ティーメル牛は気性が荒く、更に集団で敵に立ち向かう習性がある。冒険者の方の練度が高くなければ仕留める事ができない。だから、市場に滅多に出回らない牛肉としても有名である。
元王族ということもあり、アルベルトもこれまでに幾度となく口にしている。確かに、あれは味が濃くて旨い。野生種なのに臭みが無く、草原の爽やかささえ感じる味わいだった。なるほど、あれならば、リリアンのピクニック用に相応しいだろう。
「よし、それにしよう」
「組合に問い合わせてはいかがですか」
「回答を待っている時間が無駄だ、出向いた方が早い」
アルベルトは馬車に乗り込み、行き先を冒険者組合の一番近い支部にすると、どっかりと腰を下ろした。ベンジャミンはそんな主人にため息を吐かずにいられない。冒険者組合の支部は、公爵当主がほいほい出掛ける場所ではないのだ。
だがそれも、アルベルトに言ったところでなんの意味ももたらさない。大人しく従うしかないベンジャミンであった。
「えっ、こちらのサブレはリリアン様の手作りですの?」
「ええ。そうなんです」
「てっきり、どこかのお店のものかと」
リリアンは、お口に合ったようで良かったわ、と微笑んだ。
リリアンの兄、レイナードの婚約者のクラベル。彼女はお菓子作りが何よりの趣味である。そんな彼女の作るお菓子は本当に美味しくて、リリアンは大好きだった。クラベルは隣国の公爵家の令嬢であるが、そんな高位貴族の令嬢であっても、美味しいお菓子が作れるのだ。リリアンはそれが不思議で、それでいて羨ましかった。自分にも出来るかしらと、そう尋ねたのが数年前。にこりと笑んで、クラベルは優しくリリアンにお菓子作りを教えてくれるようになった。
それからたくさん練習をして、最近ようやくリリアン自身満足のいくものが作れるようになった。だからこうして友人達に振る舞うようになったのだった。無事友人達も食べられる出来栄えだったことに、リリアンはほっとした。
「まだ、ケーキは上手に焼けなくて。サブレやクッキーが精一杯なんです」
そのリリアンの言葉に驚いてみせたのは、リリアンの友人、シャロンだった。彼女はトラウル侯爵家の娘で、リリアンとは慈善活動で繋がりがある。今までリリアンと共に孤児院へ行く機会があったが、その時リリアンはよく日持ちのする焼き菓子を持参していたことを思い出した。
「もしや、これまで孤児院に配っていた焼き菓子は」
「ええ。わたくしが焼いたものなの」
それに、まあ、と声を上げたのは、もう一人の友人、ミオラル・レンブラントだ。
「リリアン様お手製のお菓子を、子ども達に配られたのですか?」
「ええ、そうよ。ようやく人に食べて貰えるくらいには作れるようになったので、それで」
そうなのですか、とミオラルは呟いた。ミオラルの生家、レンブラント領は、交易の要所だ。大きな商会を有していることもあり、ヴァーミリオン家ともなにかと繋がりがある。ミオラル自身は、美しく多才なリリアンの信奉者だった。リリアンが孤児院の子ども達に手作りのお菓子を配っていたと知り、羨ましい、と拳を握りしめている。
「り、リリアン様お手製のお菓子を、市井の子ども達が味わっているだなんて……」
それは、ミオラルの心からの本心だ。美しく優しい、貴族令嬢の鑑であるリリアンには、彼女の家族以外にも心酔する者が多い。そんな彼女らからすれば、リリアンが不慣れながらもその手で作ったお菓子となれば、味わいたいと思う者は少なくないだろう。それは、ミオラルだけでなくシャロンも同じ思いだった。さっきまでとは違い、サブレを噛み締めるように味わっているのはそのせいだ。
じっくりお菓子を味わう二人を前に、リリアンは照れたように微笑んでいる。純粋に友人達が喜んでくれているのだと思っているのだ。
「まだたくさんありますから、召し上がって下さいね」
「まあ! ありがとうございま、す……」
と、ミオラルがリリアンの気遣いに感謝し、視線を上げた時だ。リリアンの遥か後方、屋敷の回廊の柱に、とある人物が潜んでいるのに気が付いた。柱の陰からちらりと覗く銀髪と、そのご尊顔は見間違えようもない。
言わずと知れたリリアンの父、アルベルト・ヴァーミリオンである。
突然の公爵当人の登場に、シャロンもミオラルも息を呑む。が、公爵はかなり離れた所にいる。潜むようにしておりこちらへ来る様子はない。どうやらこれは、こっそりと娘の姿を眺めようとしているようだ。リリアンに気付かれないよう、こっそりとシャロンとミオラルは視線を交わした。
(でも、なんだかわたくし達に仰りたいことがあるみたい)
(な、なにかしら。すごく視線を感じるけれど)
アルベルトはリリアンはもちろんだが、どうしてだかシャロンとミオラルのこともじっと見ているようだった。どうしたのかしらと二人は内心で首を傾げている。
(リリアン、今日もお菓子を焼いたのか……私の分はないのか!?)
アルベルトは柱の陰で、そんな事を思いながらリリアンのお茶会を見守っていた。
リリアンのお菓子作りの腕前は上がっている。年末に食べたパウンドケーキは本当に美味しかった。その後、屋敷に滞在するクラベルと共にいくつかお菓子を作って、それを振る舞ってくれたのだ。前に街に二人で出掛けた際に食べた、カスタードのパイを、アルベルトが美味しいと言っていたのを覚えてくれていたらしい。試しに作ってみたと言って差し出された時には涙が溢れた。パイ生地はクラベルが焼いたそうだが、リリアンが初めて作ったというカスタードクリームはくどくなくて品のある味わいだった。それがパイとよく合っていた。そう言ったのだがリリアンは出来栄えに満足出来なかったらしく、「もっと頑張ります」と言って決意を新たにしていた。向上心が高く素晴らしいことだと、アルベルトは心の底から感心したものだ。
年明けからはリリアンも忙しく、ようやく今日、来客に合わせて焼かれたリリアンのお菓子。たくさん作ったようだと聞いていたが、アルベルトの元にそれは届いていない。いつもならお裾分けして貰えるのだが、と気になって、こうしてお茶会を覗いているのだ。そんなアルベルトを呆れた顔で見るベンジャミンは、首根っこを掴んで主人を連れて行くべきかどうか悩んでいた。
ぐぬぬと様子を伺うアルベルトを背景に、リリアンは友人達にお菓子作りの楽しさを伝える。
「工程を遵守するのは難しいですし、その手順も、うまくいくとは限りません。さっくり混ぜる、だなんて、想像がつかなかったのですけれど。何度もやって、こつを掴んで、その結果美味しいクッキーが焼けると、とても嬉しいんですよ」
言ってリリアンは、ぱきりとサブレを一枚割った。
「努力をして、試行錯誤をして、そうして出来上がったものが他の人の喜びになる。わたくし、お菓子作りがこんなにもやりがいのある事だなんて、思ってもいませんでしたわ」
割ったサブレの片方を口に含んで咀嚼する。甘さが口一杯に広がり、リリアンは思わず微笑んだ。
「ですから、美味しいとおっしゃって頂けて、本当に嬉しいの。お義姉様がお菓子作りにのめり込まれた気持ちが、今なら分かるわ」
ふふ、と笑うリリアンに、シャロンとミオラルもまた微笑む。
(リリアン様の楽しげな微笑み! ああ、とっても愛らしいわ……!)
(う、羨ましい。ご家族の皆様が羨ましい。これをいつも拝見なさっているだなんて、羨ましい)
もちろんそんなことおくびにも出さず、微笑むに留める二人はまさしくリリアンの友人に相応しい振る舞いだった。もっとも、そうでなければ、まずリリアンの前に立つ事すら許されないから、当然のことだった。
ミオラルとシャロンはこっそりと視線を交わす。
(……であれば、サブレはできる限り頂くとして、いくらか残した方がいいわね)
(そうね、半分は残しておかないといけないと思うわ、なんとなく)
というのは、声には出していないが、リリアンとの付き合いが長い分、この二人の付き合いも長い。娘とその友人達とのお茶会に、アルベルトが顔を出すのもいつもの事だった。柱の向こうからこちらの様子を伺っているアルベルトが、どういう目的で来たのかを、なんとなく察したのだ。これもまた、リリアンとの友人付き合いに必要な技能だと言えよう。ヴァーミリオン家の中でも、いや、国内で最も機嫌を損ねてはならないのがこの男なのだ。彼の扱いを間違えては、最悪国が滅ぶ。
その要であるのが、彼の愛娘リリアン。彼女の存在こそ、現在のトゥイリアース王国における基幹であった。
そうと知らないのは本人ばかり。リリアンは、楽しげに家族との料理に関するエピソードを語っている。
それを聞いているうちに、シャロンとミオラルは、なんだか自分もそこに混じっているような、そんな高揚した気持ちになった。リリアンの話を聞いているとたまにあるのだ、そういう事が。それはおそらく、彼女が心底楽しそうにしているからだろう。リリアンの笑顔には、他者を惹きつける絶対的な魅力があるのだと、二人はそう思っている。
シャロンは、リリアンの話を聞いて、同行した孤児院での一幕を思い浮かべた。
「確かに、子ども達は喜んでいましたね。あの子達は、お菓子なんて滅多に口にしませんから、余計に」
リリアンはそれに頷く。
「ええ。だから余計に、力が入ってしまうの。滅多に口にできないものが美味しくなかったら可哀想でしょう? やはり喜んで貰いたいから、それで」
ミオラルは、ほう、と息を洩らして、関心したように頬に手を添えた。
「素晴らしいです。そんな風にリリアン様に想って頂けたら、わたしでしたらそれだけで充分です。その子達も喜ぶでしょう」
そしてことりと首を傾げる。
「でも、お話を聞いていると、本当に楽しそうですね。なんだかわたしも、料理を作ってみたくなりました」
その言葉にリリアンは、ぱあっと笑顔をきらめかせた。
「ミオラル様、本当ですか?」
「ええ。リリアン様の楽しげな様子を聞いていたら、そう思いました」
それはミオラルの本心だった。自分の手で作った物を誰かに振る舞ったことなんて、普通の貴族令嬢は経験する機会は少ない。大抵はお茶会の準備止まりだ。それも、家の体裁があるからと見栄を張ることがほとんどで、心遣いが伝わるかどうかは参加者次第。当主夫人になればそうやって手腕を振るうようになるが、嫁ぐ前の身では友人を招くくらい。ごく親しい友人としかやらなければ、やりがいも次第に減っていくだろう。
だがそれを、手作りのお菓子でもてなせたら。マンネリした友人とのお茶も、少しは楽しめるものになるだろう。
そう言うと、リリアンは分かりやすく頬を紅潮させた。
「すごいわ、素敵! ミオラル様にそう言って頂けるなんて嬉しい。ミオラル様の納得のいくものが作れたら、是非わたくしにも分けてちょうだいね」
「ええ、きっと。とは言っても、わたしはまったく経験がありませんから、いつになるか分かりませんが」
機会、と呟いて、リリアンはぱしりと両手を合わせた。
「では、三人で手製のものを持ち寄ってみませんこと?」
「三人で、ですか?」
「ええ。それでピクニックでもしませんか? そろそろ湖畔に可愛い花が咲く頃なの」
それにシャロンが、なるほど、と呟く。
「持ち寄ったものをお弁当にするのですね」
「そうよ。軽食を持ち寄って、それを湖畔で頂くの」
「ですがわたくし達は本当に初心者で」
「ごくごく簡単なもので良いの。サンドイッチだとか、マフィンだとか」
リリアンはそう言うが、サンドイッチやマフィンを作るだなんてこと、ミオラルとシャロンには未知数の事だった。困ったように顔を見合わせる。
「ですが、半端なものをリリアン様にお出しするわけには……」
リリアンは乗り気だったが、確かに未経験の状態でお菓子を作れ、と言われては困るだろう。それに思い至ったリリアンは、詫びの言葉を述べた。ミオラルとシャロンは、そんなリリアンにとんでもない、と慌ててそれを止める。
「リリアン様、そんな風に仰らないで。ただわたし達には、想像もつかなくて」
「そうです。どんなものであればわたくしに出来るのか、それが分かれば良いのですが」
「そうね……ああ、そうだわ、シルヴィア」
リリアンは背後に控えているシルヴィアを呼びつける。
「調理をした事がなくてもできる、持ち運び可能な軽食には何があるかしら」
それはなかなか難しい条件だ。種類はかなり限られるだろう。だがシルヴィアは、すっと腰を折って即座に答えた。
「刃物の扱いには気を付ける必要がありますが、カットフルーツが入門には良いかと。あとは、葉物野菜を中心にしたサラダ。それに慣れたら、スープが候補になり得ます。いずれにせよ、お二方のご実家の調理師の協力を仰げば、そう難しくはないと思われます」
シルヴィアの言葉に、シャロンとミオラルはなるほど、と頷く。それならばさほど難しくなさそうだ。怪我には気を付けなければならないだろうが、まずは簡単なところから始めればいいだけの話だ。
「その程度であれば、わたくし達にもなんとかなるかも知れません」
「そうだわ、家のシェフに手伝って貰えばいいのよね。出来る限り自分でできるよう、準備をお願いして」
「じゃあ、お二人とも」
リリアンの言葉に、シャロンは大きく頷いた。
「わたくし、やってみます。……へたくそでも笑わないで下さいね」
「笑うだなんて、そんな。シャロン様の努力の成果ですもの。どんな形であれ、それは尊ぶべきものです」
「リリアン様……」
ミオラルもシャロン同様頷き、頑張ってみると意気込みを見せた。それにリリアンは、心からの声援を送る。
「ご無理なさらないでね」
「ええ。怪我には細心の注意を払います。メニューは……今ここでは決められませんね」
シャロンの言葉に、そうねえ、とミオラルが同意する。
「少し、練習してみないことには、なんとも言えませんね」
「そうね。リリアン様、申し訳ありませんが、メニューは練習後に共有させて頂きますわね」
「ええ。それで構いませんわ」
であれば、と、シルヴィアが三人に提案を挟む。
「必要な容器などは、当家にご用命頂ければ、準備してお渡し出来ます」
「そうね。そうしましょう」
リリアンがそう言えば、あとはもう決まりだった。おおよそのところが纏まって、少女達は安堵してそれぞれお茶を楽しむ。
それを遠目で観察していたアルベルトは、リリアンの成長に涙せずにはいられなかった。
(は、は、はああ! リリアン、なんて高潔なんだ! 気高く清らかでそれでいて他者の努力を認め、称賛を惜しまない。なんて、なんて崇高な精神……! うう……うちの子はやはり天使だった!)
滲む涙をそっとシャツの袖で拭う。ベンジャミンが背後で渋い顔をしているのだが、そんな事とは知らないアルベルトは引き続きリリアンの様子を伺っていた。
(三人でピクニック。それに持ち寄る軽食は自分達の手で用意する、そういう事だな。シルヴィアの申し出の意図は、安全面か。適切に保存しないと、まだ寒いとは言え中身が傷んではまずい)
令嬢が手作りしたものだ、出来栄えはともかく、衛生面だけはしっかりしていないといけない。リリアンが傷んだものを口にするなどという異常事態だけは避けねばならない。少し前に、そういう保存容器が仕上がったばかりだ。実施実験はクリア済み、あとは量産体制を整えるところまで出来ている。今回使う分は、そのサンプルを回せば良さそうだ。
(いや、むしろ私の手で作るか……?)
だがそれには、少し時間が無さそうだ。容器は流用した方がいいだろう。
それよりも、アルベルトには気になる事があった。
(おそらく軽食とは言っても、本当にごく軽いものだけになるだろう。最悪お菓子だけになる可能性もある。それはだめだ、リリアンには良い物を食べて貰わないといかん!)
そう、持ち寄る料理が、いくら令嬢とは言え、成長期の子どもに与えるにはあまりに量が少ない。リリアンには良い素材のものを、それもとびきり美味しいものを食べて貰いたいと思っているアルベルトにとっては、見過ごせない事態であった。
(肉だ、肉が必要だ。最高の肉! それを美味しく調理すれば、リリアンも喜ぶに違いない!)
ぐっと拳を握り、アルベルトは決めた。ピクニックには、美味しい肉料理も持って行って貰おう。食べやすいように工夫が必要になりそうだ。ならば焼いた肉をサンドイッチにしたらいいだろうか。そんな風に考えを巡らせていたが、そう言えばいつピクニックへ行くと言っていたっけと、アルベルトは再度、リリアン達の会話に耳を澄ませる。
「では、一週間後でいかがでしょう」
(——一週間!?)
それはアルベルトの予想より、遥かに早い日程だ。友人達も急な事だと言うのではないかと、はらはらして様子を見守る。
「わかりましたわ」
「ええ、構いませんわ」
(構わないのか!?)
練習も含めると少し余裕がないのではないかと思ったが、そうこうしているうちに予定が決まってしまった。まあ、これに関してはアルベルトがどうこう言える立場ではないから仕方がない。
が、そうと決まったのであれば、こうしてはいられない。アルベルトは勢いよく立ち上がり、ベンジャミンを振り返った。
ベンジャミンはいつも通り、しょうもないものを見る目をアルベルトに向けている。
「なんだその目は」
「いえ、別に」
それをじとっと見返すアルベルトだったが、すぐに時間がない事を思い出した。
「こんな事をしている場合ではない。すぐに出掛けるぞ」
「承知しました。ところで、どちらへ行かれるのですか」
「肉だ」
「……肉?」
ベンジャミンは首を傾げる。いきなり肉、と言われてもわけが分からない。言うや否や歩き出したアルベルトを追い、どういう事だとベンジャミンは問い掛けた。
「肉が必要と、そういう事でしょうか」
「ああ、そうだ。そう言っている」
言われていたわけではないが、反論してもしょうがないので、ベンジャミンは黙っていた。
「普通の肉ではだめだ。リリアンにはとびきり旨い肉を食べて貰わないと」
「とびきり旨い肉……なるほど。であれば、その辺の家畜では駄目ですな」
「そういう事だ。なにか特別なものがいいんだが」
「牛であれば、この時期でしたらティーメル牛が獲れるやもしれません」
「ああ、あれか」
ティーメル牛は、東の草原でたびたび目撃される牛型の魔物だ。群れ単位で餌場を巡っており、そのせいか味が濃く旨味の強いことで有名な食肉牛として扱われているのだが、飼育ができない。けれども非常に美味なので需要は高い。その為、冒険者が狩りをすることでしか入手手段がない牛だった。
だが、それもなかなか困難なことで有名だった。ティーメル牛は気性が荒く、更に集団で敵に立ち向かう習性がある。冒険者の方の練度が高くなければ仕留める事ができない。だから、市場に滅多に出回らない牛肉としても有名である。
元王族ということもあり、アルベルトもこれまでに幾度となく口にしている。確かに、あれは味が濃くて旨い。野生種なのに臭みが無く、草原の爽やかささえ感じる味わいだった。なるほど、あれならば、リリアンのピクニック用に相応しいだろう。
「よし、それにしよう」
「組合に問い合わせてはいかがですか」
「回答を待っている時間が無駄だ、出向いた方が早い」
アルベルトは馬車に乗り込み、行き先を冒険者組合の一番近い支部にすると、どっかりと腰を下ろした。ベンジャミンはそんな主人にため息を吐かずにいられない。冒険者組合の支部は、公爵当主がほいほい出掛ける場所ではないのだ。
だがそれも、アルベルトに言ったところでなんの意味ももたらさない。大人しく従うしかないベンジャミンであった。
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