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圭一

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「…け…けい… い…ち…」

がさりと音を立てて、夜の闇に…突如現れたのは、
紛れもなく…圭一だった。

俺は驚きで声を失った…。 

     なんで… ここに… 

シュウは俺の服の中に手を忍ばせた状態のまま、ゆっくりと…背後を見上げ、圭一の姿を確認すると…
余裕な表情で口を開いた。

「お… やっとお出ましか… 王子様 …お姫様がヤラレそうになってんの、今回は察知、したんだな…」

「…てっ…めぇ… 何…してんだ… 今…すぐ、先輩…から…離れろ… 」

今までに聞いたことのないような、圭一の…低くて…、暗い声… 声が震えている…

「はっ!…やだね…俺がどんだけこの機会を待ってたと思ってんだ…邪魔、すんな…」シュウがニヤリと笑う。

「 …ふざけんな…!今すぐ…どけ…  !」 

圭一がもはや気持を抑えられないとばかりに、ガサリと音を立て、素早い動きで俺たちの至近距離まで近づく。

シュウの両肩を乱暴に掴んで、俺から引き離そうとする。しかし、シュウは俺の上から離れず、微動だにしない。

「…あ…?おまえ、その程度の力でコイツを守るとか…思ってんの…?くくっ…とんだ王子様だよ…笑わせんな…てかさ…まどろっこしいことしてないで、殴れば?… 俺を…今すぐ…殴るなり蹴るなり…好きにしろよ…?」

「ひ、ぁっ…!…」

不意に、シュウの指によって胸の尖りを乱暴にこするようにされ…思わず声をあげてしまう俺…!

「…ほら…おまえ、知ってんだろ…?僚介が、胸が弱いってこと…くくくっ… こんな時まで、俺に触られて声あげやがって…コイツは超がつくほどの、ド淫乱だよ…マジで…」

「…黙れ…先輩を冒瀆ぼうとくすんな…ってか、汚え手で先輩に触んなっ…!!…」
圭一がついに、シュウに殴りかかる… 

やめろ…圭一… コイツは危険だ… 俺の本能が訴える…

シュウはすぐさま飛び去るように俺から身体を離し、圭一の攻撃をかわした。

「…まだまだだな…圭一… そんなんじゃ、おまえのか弱~い大事な大事なお姫様を…これから先、守っていけないぜ…くく…」

「てめえ…マジで、許さねぇ… 」

俺はシュウが離れた瞬間を見逃さず、直ちに身体を起こし…はだけた服を整える…。


「圭、一… 圭一 … 」言いたいことは山ほどあるのに、うまく言葉にならない…。

投げ捨てられた携帯を見つけ出し、すぐさまバッグにしまう。腰が抜けたような感覚、震えてまだ、身体がうまく動かない…でも、圭一と一緒に早くこの場から逃げなきゃ…アイツは危険だ…圭一が危ない… そう思った…。


気付けば… 数メートル先の方で 圭一とシュウが… 一定の感覚を保ったまま、対峙していた。


その姿はまるで…ライオンと黒豹…とにかく獰猛な肉食獣…野獣同士が…草原で対峙しているかのような…
そんな、緊張感と…緊迫感…

相手から目を逸らした方が負け…一瞬の動きも命取りになりそうな、そんな雰囲気。

俺が今、下手に声を出して、シュウとにらみ合っている圭一の集中力を、絶対に削いではならない…

そう思った俺は一言も声を発さず、固唾を飲んでその状況を見守った。




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