【完結(続編)ほかに相手がいるのに】

もえこ

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~日常~

現実

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「お先に失礼します。」

ガタン・・・

その日、私は定時のチャイムとともに、席を立った。

「おっ、おお… お疲れ様~!」石田さんの声。

「あれ、水無月さん今日は珍しく早いね、出張も済んだことだし、もしかすると彼氏とデートかな?おつかれ~」
主任の声。

「ちょっと主任、そういうのがダメなんですって今は…セクハラになりますよ~相変わらず時代についていけてないっすね~」再び、石田さん。

「え~~こんなんも駄目…?ほんと他意はないっていうか…単なる雑談のつもりなんだけど…はあぁ…難しい世の中だな…あ、ごめん…今の、忘れて…お疲れ様、水無月さん…」

「お疲れ様でした。」

部屋を出る直前、いくつかのこんな言葉を身に受けつつ、私は少しだけお辞儀をしてバタンとドアを閉めた。

「… … っ … 」

最後の、お疲れ様でした…の声は…間違いなく、杉崎さん…

優しくて… どこか、控えめで… 今の私にとっては、どうしようもなく、愛しい声… 

「… … … 」

私は足早に、家に向かう。

朝の給湯室で… 杉崎さんに声を掛けられた。

杉崎さんの顔を見た途端…どうしようもなく、苦しくなった…。

出張先で…

最初は互いに…耐えるかのように遠慮しながらも、
結局抗えずに…引き寄せられるかのように、近付いて…見つめ合って…

狂おしいほどに、抱き合った…  

強い力で…抱き締められてからの、甘いキス…  

杉崎さんの、柔らかくて熱い舌が、私の口内をまさぐるかのように彷徨って…
私はすぐにおかしくなった。

杉崎さんの唇や舌が、私の肌の上を滑るようにうごめくたびに、体が熱くて…震えて…もう、たまらなくなって…

杉崎さんの、熱すぎる視線を全身に受け止めるたびに、どうしようもないくらいに身体が疼いて、たまらなくなった… 

何度、身じろいだかわからない…

もう、隠しようがない感情…  女の欲望…。

欲しくて… 杉崎さんが欲しくて、たまらなくなった… 

もう、認めるしかない… 否定のしようがない。
拓海は、何一つ間違っていない…。

私は、間違いなく淫乱だ…  

杉崎さんに触れて欲しい… そう思った…。

私の紛れもない本音…
あの日、あの夜…されたくて、仕方なかった…

杉崎さんに抱かれたいと、心から思った。

裸を見られるのが恥ずかしいとか…
コンプレックスのある場所を触れられるのが嫌だとか、そんな気持ち、以上に…

杉崎さんに、とにかく抱かれたい… … 

もういっそ…滅茶苦茶にして欲しい…
強くて逞しい…杉崎さんのそれで… 身体の奥深くまで、貫いて…激しく揺さぶって欲しい…

あの、出張の日の夜… 

そんな、女の…どうしようもない欲望が…間違いなく…私の中に渦巻いていた…。

そんな中、杉崎さんに愛されて… あんなにも満たされて、幸せだったのに… どうして…。

今の私はもはや…心から、笑うことができない…できなくなってしまった…。

今朝、杉崎さんの顔をまともに見ることすらできなくて…顔が引きつってしまった気さえする…

「… … … 」

信じられない… 信じたくない現実…

初めて… きちんと避妊をせずに、拓海と…セックスをしてしまった…。

ううん、違う…  あの、行為は…   

拓海がしたことは… 同意なき、セックスだ… 
無理矢理に、近い…
行為は、あまりにも強引だった…。 

私は嫌だと、何度も言った… 
叫んだ、のに… 
力が、到底及ばなかった…振りほどけなかった…。

ひどい … 
夢だったら、どんなにか良かっただろう… 

もしも…もしも仮に…  あの夜…  … にん、しん…  していた、ら… 

どうしよう… 

いや…駄目だ…今は、思い出したくない…。

私は唇を噛み締めながら、その記憶を無理矢理に頭から打ち消すかのように、家へ急いだ…。















 












 

  







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