【完結（続編）ほかに相手がいるのに】

～智花〜

本命

「あ～結構飲んでたんですね…やっぱ、ヤケ酒ってやつですか？」

リビングに足を踏み入れた途端、三橋君がそんな事を言って笑う。

やっぱり、どうしたって昼間の話に持って行きたいらしい…私が修哉さんにフラれたことを面白がっているのか。

私はため息をつきながら三橋君をソファに促した。

「グラス、出すからとりあえず座って…で、昼間のこと冷やかしにきたの…？もしかして本当に、全部…聞いてた？」

私の斜め後ろのテーブルに…私の背中側が見えるような位置で、三橋君は座っていた…。

つまり、三橋君から見て、修哉さんの正面の姿が全て見えていたということ…。
だからこそ、彼は修哉さんのことを、かなりのイケメンだと表現したのだ…。

不躾に、修哉さんの顔をジロジロと見たのではないか…そんな不安すら、感じた…。

せめて、修哉さん側の席に私が座っていたなら、きっと三橋君の存在に気付いたのにと、悔しくなる…。

「だから全部は…聞いてませんって…そもそも俺も、彼女連れですし…限界ありますよ、聞き耳、たてるのにも」

「聞き耳…全く、もう…なんで気付かなかったんだろう…ほんと、最低…」

「いや、仕方ないっすよ…俺、すぐ智花さんに気付いて、かなり声のトーン、落としましたから…」

「はあ～声、かけてほしかった…ほんと、やだ…それで…あの子は…その…三橋君の、その…本命の…彼女なの…？　」

少し、気になっていたことを口にする。

彼女がいるのに平気で合コンに行った話もしていたから、あの子が本命の彼女じゃない可能性も十分にある…。
　
　　　　　そう、思ったからだ…。