【完結】人妻の危険な誘い

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『…あなたは今…どこにいるんですか？　』
女に、問われる…

「は…？
どこですか、ここ…
こっちが聞きたい……ここは、どこなんですか…さっぱり意味が…わからない…」
俺が、尋ねる…

『私の主人は今、どこにいるんですか…？』

また、女に問われる…
一体…  何を、言ってるんだ… 
田代は死んだ…       気でも、狂ったか…？

背筋がゾクリとした…

「…　は…　？ …
あ…    ああ…  あんたの主人は、あの世…だろうよ…じ、自分で…飛び降りたんだろう…？…」

『ふふ…自分で…？
まあ…自殺ですから…そうなりますよね…ですけど、私は主人に、いつも言っていました。あなたに…松本さんに、毎回威圧的な態度を取られているなら…皆の前で、これ見よがしに馬鹿にされた発言をされているなら…ましてや、密かに打たれたり…蹴られたりしているなら…更に上の上司に、報告すべきだと…すぐに問題を解決するように、動かないとって…』

やはり、田代は…

　　　　　美穂に…  俺の話を…  …

『でも、主人は…あなたを尊敬していたんです…仕事が早くて…合理的で…人の使い方もうまくて…だから全て、自分の要領が悪いせいだと自分を責めて…私が何度言っても何も、主張しなかったんです…訴えもせず…毎日、私達家族の前ではなんとか無理に笑って…耐えていました…。

ですが最近は、少し違いました…　
普通に、笑えなくなって… 笑っても、なんだか顔が引き攣っていて…夜も何かにうなされて…眠れない日が続いて…。
私にはわかりました…
主人はあなたに何度も虐げられることによって精神を病み…あなたに失望すると同時に…遂には、自分自身に失望していったんです…最後に私に…電話をしてきて…ごめん…ごめんって、駄目な旦那で…駄目な父親でごめんって、何度も私にそう、　泣きながら　　…』

「そ…んなの…　知らない…そんなこと、今更言われても…お…お宅の旦那が死んだことが俺のせいだなんて、決めつけるなよ…  そんな…  
そうだ…  しょ…  証拠でも、あるのか…？」
思わず、声が震える… 

『…聞いていました…あなたが最後に夫に放った言葉を…私の愛する…大事な夫に…あなたは、消えろと…そう、言いましたよね…？

あなたにとっては何気ない、普段の会話でしたか…？あなたには自覚がないようですが…その言葉は、凶器です…
肉体だけでなく精神への攻撃…つまりは、言葉の暴力です…それが駄目なことは、子供でも知っています…ましてや大人…しかも組織の上の人間なら、常識だと思うのですが…？

間違いなく、主人が死を選んだのはあなたのせいです…あなたが、私の夫を殺した…』

「…そ、　そんなの、…は…単なる、言葉のあやだ…　言いがかりはやめ…て、くれ…
とにかく、ここは…どこ…な、ん、だよ…」　

まさか、　
あの日…電話が繋がっていた…
もしくは、会話を録音…  されていた…  ？

心臓が冷えてくるような…  
おかしな、
　　　　　　　感覚を覚える。