36 / 538
〜お互いの日常〜
苦手なもの
しおりを挟む
それからしばらくして、久しぶりに部署全体の飲み会が開催された。
大人数の飲み会が苦手な私も、今回ばかりは逃げられなかった。
広報係についに幹事の役目が回ってきたからだ。
さすがに主任や、先輩である石田さんや杉崎さんに幹事を任せて、自分は不参加などとできるはずもなく、今回は店の手配や回覧、配席くじの作成など、下っ端である自分が出来ることを率先して準備し、参加することになった。
「お疲れ様です、すみません、こちらでくじを引いて、席に座ってください」
私はくじ引きの小さな箱を持って、建物にある2階の宴会場の入口で、階下から次々に上がってくる社員を迎え入れた。
「あ、あ… 補佐の隣の席だ…うわー気が重っ…」とか、「わ!女性に囲まれてる席だ、こえー…」とか、自分の席を確認した社員が思い思いのコメントを残しながら、自分が引き当てた席へ向かっていく。
最後の一人を待って、やっと自分の席へつく。
今回は幹事ということもあって、広報係は幹事席として一番端の席に固まって座ることが出来たことがせめてもの救いだった。
「では…!」乾杯の挨拶は主任から。
飲み会のこまごました準備をしたおかげで、最初の挨拶などの役目は免れ私は全てを終え、肩の荷が下りた気がしていた。
「…カンパーイ。」簡単な挨拶が終わり、色々な場所でグラスが重なりあう音がして、各席で歓談が始まった。
「水無月さん、最近すごく頑張ってるね~課長も褒めてたよ。その調子で是非、頑張って…」主任が、褒めてくれたのが普通に嬉しかった私は、「あ…ありがとうございます。これからも頑張ります。」真面目か…少しも気の利いたセリフが出てこない自分が恨めしくなった。
「ほんとほんと、水無月さん、仕事すごく早くなったし、一度言ったことは忘れないし、ほんと優秀だよ、これからも頑張って。」横に座る杉崎さんも褒めてくれた。密かに…嬉しい。
「はい…皆さんの足手まといにならないように、頑張ります。」やっぱり…こんなつまらない優等生みたいな返しばっかり。
私は自分が嫌いだった。私と話をしている相手は、全然楽しくないんじゃないだろうかと思うほどに、真面目な返事しかできない自分が、いやだったのだ。
高校時代に、同級生に真面目過ぎてつまらないと言われたことがあり、そのことが一種のトラウマになっていた。
でも、なかなか自分の性格は変えられない…今もそのまま…成長できていないのだ。
話を合わせながら、空いてるグラスの人に飲み物の希望を聞いたり、料理を取り分けたりしながら、やっと飲み会が終わる。
「二次会組、こっちね~!カラオケか…もしくは、更に飲みにいきまーす」多くの人がそこに流れていく中、私は帰ることにする。これ以上、気を遣っていくのは疲れるだけだ…。
「すみません…私はここで失礼します。お疲れ様でした。」そう言って頭を下げて、ゆっくり集団から離れて自宅へ向かっていると、背後から聞きなれた声がする。
「水無月さん、俺も帰るから、良かったら一緒にいいかな?同じ方向だし。」
杉崎さんが、少し後ろを集団から離れて、歩いて来ていた。
さっきは、二次会組の輪の中に、取り込まれていたような気がする…「杉崎さんも行きましょうよ~」と、女性たちの黄色い声が聞こえていたのに…それを断って、帰ることにしたのだろうか…
「あ…はい…では…」そう返事をして二人、並んで夜道を歩く。
なんだか嬉しい… それが私の、正直な気持ちだった…けど、
まさかその後に…あのようなことになるとは、想像もしていなかったのだ…。
大人数の飲み会が苦手な私も、今回ばかりは逃げられなかった。
広報係についに幹事の役目が回ってきたからだ。
さすがに主任や、先輩である石田さんや杉崎さんに幹事を任せて、自分は不参加などとできるはずもなく、今回は店の手配や回覧、配席くじの作成など、下っ端である自分が出来ることを率先して準備し、参加することになった。
「お疲れ様です、すみません、こちらでくじを引いて、席に座ってください」
私はくじ引きの小さな箱を持って、建物にある2階の宴会場の入口で、階下から次々に上がってくる社員を迎え入れた。
「あ、あ… 補佐の隣の席だ…うわー気が重っ…」とか、「わ!女性に囲まれてる席だ、こえー…」とか、自分の席を確認した社員が思い思いのコメントを残しながら、自分が引き当てた席へ向かっていく。
最後の一人を待って、やっと自分の席へつく。
今回は幹事ということもあって、広報係は幹事席として一番端の席に固まって座ることが出来たことがせめてもの救いだった。
「では…!」乾杯の挨拶は主任から。
飲み会のこまごました準備をしたおかげで、最初の挨拶などの役目は免れ私は全てを終え、肩の荷が下りた気がしていた。
「…カンパーイ。」簡単な挨拶が終わり、色々な場所でグラスが重なりあう音がして、各席で歓談が始まった。
「水無月さん、最近すごく頑張ってるね~課長も褒めてたよ。その調子で是非、頑張って…」主任が、褒めてくれたのが普通に嬉しかった私は、「あ…ありがとうございます。これからも頑張ります。」真面目か…少しも気の利いたセリフが出てこない自分が恨めしくなった。
「ほんとほんと、水無月さん、仕事すごく早くなったし、一度言ったことは忘れないし、ほんと優秀だよ、これからも頑張って。」横に座る杉崎さんも褒めてくれた。密かに…嬉しい。
「はい…皆さんの足手まといにならないように、頑張ります。」やっぱり…こんなつまらない優等生みたいな返しばっかり。
私は自分が嫌いだった。私と話をしている相手は、全然楽しくないんじゃないだろうかと思うほどに、真面目な返事しかできない自分が、いやだったのだ。
高校時代に、同級生に真面目過ぎてつまらないと言われたことがあり、そのことが一種のトラウマになっていた。
でも、なかなか自分の性格は変えられない…今もそのまま…成長できていないのだ。
話を合わせながら、空いてるグラスの人に飲み物の希望を聞いたり、料理を取り分けたりしながら、やっと飲み会が終わる。
「二次会組、こっちね~!カラオケか…もしくは、更に飲みにいきまーす」多くの人がそこに流れていく中、私は帰ることにする。これ以上、気を遣っていくのは疲れるだけだ…。
「すみません…私はここで失礼します。お疲れ様でした。」そう言って頭を下げて、ゆっくり集団から離れて自宅へ向かっていると、背後から聞きなれた声がする。
「水無月さん、俺も帰るから、良かったら一緒にいいかな?同じ方向だし。」
杉崎さんが、少し後ろを集団から離れて、歩いて来ていた。
さっきは、二次会組の輪の中に、取り込まれていたような気がする…「杉崎さんも行きましょうよ~」と、女性たちの黄色い声が聞こえていたのに…それを断って、帰ることにしたのだろうか…
「あ…はい…では…」そう返事をして二人、並んで夜道を歩く。
なんだか嬉しい… それが私の、正直な気持ちだった…けど、
まさかその後に…あのようなことになるとは、想像もしていなかったのだ…。
1
あなたにおすすめの小説
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる