【完結 R18】ほかに相手がいるのに

〜お互いの日常〜

結婚願望

気付けば…10時を過ぎようとしていた。

「…そろそろ…出ようか…」杉崎さんが言い、いつものようにスマートに会計を済ませる。

「…いつも、ご馳走になってしまい、すみません。」
毎回支払いをしようとするが、杉崎さんに連続して断られている。

「水無月さん…これ位は大丈夫だから、ほんと気にしないで。俺、頻繁に飲みに行ってるわけじゃないし、気楽な独身男なんだから…」
お互いの家に向かって歩きながら、杉崎さんが笑いかける。

「はい…ありがとうございます…。」
続けて、ふっと浮かんだ気になることを思い切って口にする。

「杉崎さんって、そろそろ…結婚とか…考えたりしないんですか…？」

独身というキーワードを聞いたせいか、私は少し好奇心にかられて聞いてみる。

杉崎さんが、数秒考えるようにして黙り込む…

しまった…

こんな踏み込んだ質問…すべきじゃなかったのかもしれない…林さんもいるし、恋人達のデリケートな話題にズカズカ触れて、ああ…私のバカ…撤回しなきゃ…

「あ、あのっ…すみま…」私が慌てて質問を取り下げようとすると、

「うーん…結婚、ね…
まあ、正直に言うと具体的には考えたことはないかな…今のところ。やっぱ独身って自由だし、こんな風に誰とでも気にせず飲みにこれるし…うん、まだ、いいかな…絶対結婚しないって決めてるわけでもないんだけど…

水無月さんは…女性だしやっぱり願望とかあったりするのかな…あ、まだ若いから、ないかな…？」
杉崎さんが反対に尋ねてくる。

「…私自身は、結婚願望なんて全然ないです。杉崎さんと同じです、なにより自由ですし。
ただ…拓海…あ、すみません、彼氏、からは…何度も…まあ、冗談だとは思いますが、軽い口調で何度も結婚しよ、しよって…言われたりは、あります…」

とても素直に、恥ずかしい内情を話してしまった。

こんな話は、友人にもしたことがないのに、杉崎さんにはなんでも話してしまう自分が、本当に不思議だった…