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〜二人きり〜

部屋へ

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「ふう…」

外の露天風呂でゆっくりと熱い湯に浸かる。

天気も良く景色も絶景… 少し肌寒いが最高に気持ちがいい…
やはり思い切って温泉に入って良かったと思う。
きっと職場の旅行会では、こんなにリラックスした気分でお湯になんてつかれない。

このあと部屋で、豪華な食事…しかも杉崎さんと…二人きりで個室…

なんだかまるで普通のデートのようだ。

さっき、お湯を手にこぼして強引に洗面台に連れて行かれた時…ドキリと心臓が跳ねた。

頭一つ以上高い位置から私を心配そうに見降ろしながら、手を冷やしてくれた…。
冷やしてくれているのに反して、つかまれた手首が熱を伴っていく気がした。

「はあ…もう、私一体、何、考えてんだろう…」

昨日の夜に拓海と電話で話したが、今日の予定をなぜかスムーズに伝えることが出来ない自分がいた。

拓海に聞かれたら答えるつもりではいたが、土日の予定を細かには聞かれなかったので、なんとなくそのまま…

単なる職場の旅行会の下見に、職場の先輩と行く…

ただそれだけなのに、やはり杉崎さんと車で二人きりで行くことに、少しやましい気持ちがあったのかもしれない…

ふと気付く…
少しゆっくり入り過ぎた…もうそろそろ、上がって身支度をして部屋に戻ろう。
まだ時間に余裕はあるけど、少し早めに戻っておきたい…できれば杉崎さんより前に…

そう思って露天風呂から上がり、火照った身体を手早く拭き上げ、持参した浴衣に着替える…。湯気で少し取れかけたメイクを鏡で直し、髪を整え部屋へ戻る。

杉崎さんは戻っているだろうか…バタバタして後から戻るより、私が出迎えたい…。

カギを開けて部屋に入りホッとする。

杉崎さんはまだ、戻っていなかった…
おそらくあの様子だと、全種類の温泉に浸かっているのではないか…温泉は網羅するタイプなのかもしれない…
時間もまだ、30分程はあった。

座ってテレビをつけ、お昼のワイドショーを見ていて、ハッとする…。
この…浴衣姿は…浴衣姿のままでの食事は…恥ずかしい…ふとそんな気がしてくる…

恋人同士でもない私と杉崎さんが、旅館でお風呂上りに浴衣をきて食事を囲むなんて…駄目だ…
しかも、食事中に浴衣が万一はだけでもしたら、本当にだらしないし恥ずかしい…。

私は慌てて、洋服をもって洗面所に駆け込む。

せめて着替えよう… 
女同士の気楽な旅ではないのだ… 相手は男性…しかも杉崎さん…
私は手早く、帯をほどき、浴衣に手をかける。

その時私は全く…気付いていなかった…

慌て過ぎて、部屋のドアの開く音やふすまが…開く音に…


驚いたように声をあげる杉崎さんの声だけが、突然、背後から聞こえた…























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