【完結 R18】ほかに相手がいるのに

〜戸惑いの日々〜

二本目の

「かしこまりました…では失礼いたします」

オーダーを取り終わり、綺麗な装いの店員さんがゆっくりと立ち去る。

「すみません、突然お誘いして…実は前から一度お話してみたかったんです。水無月さんと…」

私は話したいと、思ったことはない…
むしろ苦手なタイプかも…だなんて、もちろん言えない…私はなんとなく笑顔で相槌を打つ。

「あ…確かに、ゆっくりお話したこと、なかったですよね…えっと、細野さんは入社して…3年位…でしたかね…？」
確か私よりは…数年先輩のはず…年齢はあまり変わらないけど、確か細野さんは高卒とかで、若くして入社したと、誰かに聞いた記憶があった。

「はい、そうなんです、今年入社3年目なんです～でもまだ、慣れないことも沢山ありますけどね…」

「いえいえ、私はまだ半年少しなんで…すごいですね細野さん、3年か～…3年経ったら、私ももう少し成長できてるといいんですけど…」

「そんなこと、ないですよ。成長だなんて…そんな変わんないですよ。でも水無月さんのことは…私すごく、羨ましいです…だって、あの素敵な杉崎さんに、手取り足取り、仕事を教えてもらえるなんて…」
かなり唐突に、細野さんが杉崎さんのことを話題に出してきた。

このシチュエーションは…あの時に似ている。私は思い出した…

林さんに、釘を刺されたあの夜の食事の時を…。

彼女に、杉崎さんと付き合っている…と、唐突に告げられたあの日。

「あ…いえ、そんな…手取り足取りってほどでもないですけど…でも…そうですね、杉崎さんはとても親切に、仕事を色々教えてくれるので、すごく助かってます…」そこは素直に認めてみた。

「ほんと、仲良しですよね…杉崎さんと水無月さん…今朝も、見ちゃいましたよ。頭をポンって…されてましたよね…？彼女さんが今朝のお二人を見たら、ちょっと嫉妬しちゃうかもですよね…ふふ…」

林さんのことを知っているらしい細野さんから、そんな角度で釘を刺される…　

朝のポンポンを…見られていたのか…
迂闊だったなとは思いつつ、突然杉崎さんにされたことだし、私には防ぎようもなかった…
だから、そんなことを言われても…と思ってしまう自分もいた。

とにかくやっぱり、杉崎さんがモテる男性だというのを痛感する私…
近付くのは、色々な意味で危険だ…

「あ…はは、まあ、…年齢もかなり離れていますから…私が頼りなさ過ぎかもですよね…もう少ししっかりしようとは思っています…」

「お待たせしました～」
料理がどんどんと、並べられる…けど、残念ながら、心から味わって食べられる気がしない…

ランチで2000円も…したのに…ああ…　こんなことなら、やっぱりはっきり断って500円のラーメンで良かった…

私は項垂れつつ、フォークとナイフを手にした。