【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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~彼氏~

運動

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林さんの主張と杉崎さんの弁解を受けて、今度は拓海が口を開く。

「なるほどーー!それなら俺も、すげえ林さんの気持ち、わかりますよ…!葉月なんて、何回言っても俺んちに来てくんないんすよ…いつも俺ばっか、こっちに会いに帰ってるっていうか…だから飛行機代も馬鹿になんないんですよ~。まあ、宿泊費はかからないから、そこはいいですけどね…」

拓海が林さんに同調するように、そんな発言をする。

「ごめん…私も飛行機、苦手だし… 正直、極力乗りたくないの…ごめんね…」
思わず隣にいる拓海に、謝罪する私。

飛行機が苦手…それは紛れもない事実ではあった…
でも、…本当は…私にそこまでして行きたいという気持ちが…ない…
それもまた、拓海には絶対に言うことができない私の内心だった…。

「ふははっ…おまえさ、そんな真面目に謝ってくんなよ、葉月…」
拓海が豚の角煮を頬張りながら、横目に私を見て笑う。

「冗談冗談…全然いいって…おまえが飛行機、苦手なのは前から知ってるし…俺は自分んちより、おまえんちの方が居心地良くて好きだし…俺の家より、たまにおまえんちかこっちのその辺のホテルに泊まる方が全然、新鮮だし、気分転換になるよ…なっ!」

拓海の手が私の頭の上に伸びる。
突然くしゃくしゃと…、まるで動物と接するような動きで、頭を撫でられる…。

「わっ…仲が良いですね!水無月さんと拓海さん…やっぱり私達…お邪魔だったっかもね…修哉さん!うふふ」
林さんが笑顔で杉崎さんの方を向きながら、杉崎さんの腕に、ゆっくりと自分の腕をからめる…。

「…そう…だね…本当に…」 
杉崎さんがそう言って、私と拓海のやり取りを静かに見つめながらビールを口にする。

その、杉崎さんの静かな視線に…なんとなくドキリとする…。

いたたまれない… 
そんな気持ちになってしまった…。

「あーー…ってか、久々運動したんで腹減った~…俺、すみません、全然食べ物足りなくって…少し注文増やしますね、お二人、なんか食べたい物、他にないですか?」

また…運動と口にする拓海… その発言が、再び気にかかる…。

運動…もしも仮に、何かここに来る前に運動したんですか…?などと、普通に尋ねられたらどう答えるつもりなのか…それとも…勘繰りかもしれないがもしかしたらわざと面白がって…そんな発言をしているのかもしれない…

幸い、その後にすぐ食べ物を注文することに集中したため、拓海のその言葉に意識を逸らされることはなかったのか、杉崎さんらはなんの反応もしなかった…。

でも…

その拓海の発言の意図が…杉崎さんにじわりと知れていたことを…

私はその後に、嫌というほど…知ることになる…。


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