【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～彼氏～

普通に

雑談で、お酒もすすんだ頃、

「そうそう！…あの、例の社員旅行はどうだったんですか？　幹事の仕事、無事に終了したんですか？そういえば葉月にも詳しくは聞いてなかったよな？」

拓海の不意の発言にドキリとする。

日数は経っているし、私の中では過ぎた出来事として
頭の隅に追いやっていたものだ。

拓海はもしかしたら何か…
杉崎さんと私のことを勘繰っているのだろうか…。
今日空港で会ってから今まで…そういえば全く、話題に上がらなかったなと、思い起こす。

とはいえ、拓海に会って早々、そういうホテルに連れて行かれて、散々抱かれた…そもそも会話という会話は、していなかったかもしれない。

「そうだったわね…順調に終わったの…？修哉さん、楽しかった？」

林さんも思い出したように杉崎さんの方を向く。言いながらさっきまで杉崎さんに絡めていた手を話して、ビールに手を伸ばす。

なんて言おう…差し障りのない回答…
少し酔い始めた頭を無理矢理にフル回転させる。

旅行は順調だった。
バス車内でも…温泉も…宴会も全て。
大きなトラブルもなくうまくいった方だと思う…。

ただ…ただ…

今まで遠かった私と…杉崎さんが…
近くなった…近づき過ぎた… 
それだけだ・・・

バス車内で密やかに手を握られ…
喫茶店でお互いの気持ちを確かめ合い…
杉崎さんの部屋で…裸にされ…あんな…あんなことを…

だめだ…いけない…

こんな場所で…拓海と林さんがいるこの場所で…そんなことを思い出してはだめだ…
私はどうかしている…
拓海が見ている…
林さんも真っ直ぐに私を見つめている…。

普通に…しなければ…