【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

文字の大きさ
235 / 538
〜二人〜

抗えない感情

しおりを挟む
杉崎さんが私の手を握ったまま…
       無言で、私を見つめてくる。

欲しい…

     抱きたいと…

間違いなく、そう言われた…。

そんなことは、ダメに決まっている…
私自身は拓海と…
杉崎さんは林さんと…きちんと別れてから…

それが、人との付き合い、ケジメであり、筋である…頭ではわかってる…本当に。

そうすべきだ、そうでなければならない。

人はいついかなる時でも正しく、他人を傷つけないように、自分が非難されないように、真っ直ぐに生きなければならない…。

実際今までそうやって…私は、生きてきた…。

人を傷付けたいとも思わないし、今まで傷付けた自覚すら、ないのだから…。


だけど…

   だけど、本当にそうだろうか…。

どんなに正しい人間でも…
その、長い一生の間に、人を傷つけたことがない人間など、この世に存在するのだろうか…。

何気ない一言や、からかいの言葉が気付かぬうちに誰かの心を傷付けていたり…

自分が良かれと思って起こした行動が、実のところ、相手に、違う意味で、受け取られるかもしれない。

私はきっと…
自分が正しいと思いこんで生きてきただけで、今までにたくさん…人を傷つけているに違いない。

でも…今は違う…無自覚じゃない…
ちっとも正しくない…。
私は、完全に人として間違っている…のに、自らの意志で、完全に…ダメな女になろうとしている。

拓海に自分の気持ちを伝えないまま、
 杉崎さんと…次の段階へ進もうとしている…
  林さんにだってもう…合わせる顔がない。

知られれば、
拓海と林さんを失望させ…
     間違いなく、傷付けるだろう…



それでも…

    そうだとしても…

私は今この瞬間、 
杉崎さんと一緒にいたいと…
彼の身体に…熱い肌に、今すぐ触れたいと思っている。

触れたいし、触れられたい…
 キスしたいし、力強く…抱きしめられたい…

杉崎さんの身体を見たいし、
 彼の欲望全てを…この身体で、感じたい…。

もう…理性なんて、無いに等しい…

        欲望に、抗えない…


「…水無月さん…今…頷いた…?
 俺の言ったこと…言っている意味…
        本当に、…わかってる…?」

                        杉崎さんの握る手に…力が込もる。

「…はい…意味…は、わかっています…」

                       私はそう言って、隣に立つ杉崎さんを見上げる。

        目が合う。

杉崎さんの瞳の奥が、まるで動揺しているかのようにゆらりと揺れている…。

「…私も…同じ気持ちです…杉崎さん… …」

言葉を発した途端、さらに手を強く握り込まれ、息が止まりそうになる。

「…そろそろ、行こうか…」 
    杉崎さんの、少し上擦った声…

私はコクリとうなずき、
   手をぎこちなく繋がれたまま…
      
    無言で彼の少し後ろに続いた…



しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

処理中です...