【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～拓海～

鍵穴

その日の俺は、仕事でとても疲れ切っていた。

夜は自炊する気にもならず、コンビニで弁当と酒、少しのつまみを買って帰宅した。

何とはなしにテレビをつけ、ぐったりと座椅子に身を委ねた。

週末の夜、飲み会などの用事がなければたいてい葉月に電話していたが
その日はあまりに疲れ過ぎて、連絡する気力さえ残っていなくて…
温めた弁当をつつきながら本当にぼうっと…たいして面白くもないお笑い番組を観ていた。


少しして　…　　

　　　ガチャガチャと　玄関の方で、　奇妙な音がした。

こんな夜になんだ…　？　　ドキリとする…。


まるで、鍵穴にカギを差し込んで、現実にドアを開けようとしているような、音…

　　　　ガチャガチャ…ガチャ…　

　
　…　マジで…　なんか、おかしい…　
隣の家のドアの音かと思いつつ耳を澄ませるが、やはり確実に我が家のドアのようだ…。


　　　　　ガチャ…　ガチャ…

こんな週末の夜に、堂々と…　なんなんだ…　

空き巣か…？　…　マジでなんか、怖い…

仮にもしドアが開くことがあったら‥家に入ってくる気か…？　
　
俺はすぐにテレビの音量を下げ、最小の注意を払いながら忍び足で静かに玄関の方へ向かう…。


　　　　　　ドアスコープを覗くと…
　　　　
　　　丸いレンズの中に茶髪…の、つむじ…
　　　下を向いているのか顔は見えない…。

　　　…ショートカットくらいの…女…？…

　　　　　　　　とりあえず、
イカツイ男ではなさそうで、少し落ち着く俺…


　　　女なら、きっと、なんとかなる…

　　　　　　　そう考え、遂に、
　　ゆっくりとドアを開けることにした…。