【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

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~杉崎~

身勝手

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「水無月さん…!」

俺は、洗面所のドアを開ける。

「あっ… 」

彼女は鏡周りを点検していたのだろう… 
俺が声を掛けると、ビクリと肩を震わせた。
いきなり声を掛け、驚かせたのだろうか…

鏡の中の水無月さんの顔が、少し驚いているのがわかった…

「…ごめんね、いきなりドア開けて、驚かせちゃった、かな… … 」

彼女の目が、ゆらりと揺らいだのがわかった。
完全に驚かせたのだろう… 
朝から重ね重ね…駄目な男だなと、思った。

「…いえ、そんな…ごめんなさい、わ、忘れ物…点検してて…もしかしてここ、使うんだったら私すぐ、…」

「いや、違う… !」

「あっ…あ、のっ… !す…杉崎さん…」

彼女の話を全て聞き終わる前に…俺は背後から、彼女を抱き締めていた…

「… … … 」
どうやら、さらに驚かせた… 
鏡の中の彼女を見つめると、彼女は信じられないような顔つきで、目を見開いて…俺を見ていた…

俺の胸の中にすっぽりと納まる、彼女の細い身体…  
腕にあたる、柔らかな胸の感触…
あたたかな体温…  
香水でもつけているのか…ごくわずかに香る、花のような香り…  
彼女にとても似合う…控えめな…甘い香りが、俺の鼻腔をくすぐる…。

「す…杉崎、さ… ん…あの…」
彼女は俺に抱き締められたまま…震える声を発した。

俺は、鏡の中の彼女を真っ直ぐに見つめた…

ふと、思い出した…  
この状況に 似た、シチュエーションを… 

あれは、社員旅行の下見の日…

少し前のことだが、遠い昔のような気さえしてくる…

俺が気付かずに浴室前の洗面所に足を踏み入れ…彼女の半裸を見てしまったあの日…

彼女は怒るだろうか…

俺があの後、何度彼女の裸体を思い出して、下着に隠されたその先を、想像したか…
男として淫らな妄想に、ふけったか…
もし仮に、彼女が俺の頭の中を覗くことが出来たとしたら…
彼女は顔を真っ赤にして怒りだすか…
いや、違うな…彼女ならきっと、恥ずかしさにその場を逃げ出すだろう…

鏡の中の彼女は… 悲しいくらいに…
昨夜、俺の前に現れた時の女性らしい華やかな服を、キッチリと身にまとっていた。

俺はさらに力を込めて彼女を抱き締め…くるりと、彼女を俺の方に向かせた。

「すぎさ… き、   さ んっ… …」

俺はすぐさま彼女の細い顎に手をかけ、彼女の小さな唇を塞いでいた…   

「んっ… ん、ぅ… んっ…」

彼女の唇の端から漏れだす小さな声と…吐息が…俺の耳を、かすめる…

     くちゅ… くちゅ…

彼女に一切の伺いも立てずに…俺は勝手に、舌を差しいれ、絡める…
身勝手な、キスだ…
…甘い… 熱い… 彼女の、口内… 
俺の激しいキスに…おずおずと…逃げるように動く彼女の舌が愛おしい…

俺の中のどこに… こんな感情があったのかと不思議で…仕方が、なくなる…  

離れるのが… 

物理的に…彼女を、今から手放さなければならないことが、切ない…  

まるでその気持ちを、
そのキスに、注ぎ込むかのように… 俺は彼女を貪った…

その時の彼女の内心には、
 
      全く…お構いなしに…






























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