【完結 R18】ほかに相手がいるのに

もえこ

文字の大きさ
393 / 538
~彼との分離~

これから

しおりを挟む
「じゃあ、俺はチェックアウトを済ませてすぐに建物を出るから…そうだな、水無月さんはホテルのレストランでお茶かランチでもして、帰ったらどうかな…?」

「え… … 」

「ここ、ケーキもすごく美味しいし紅茶の種類も充実してるんだ…確かケーキバイキングもやってたな、時期によっては…2階にレストランがあってね。」

「ケーキ…バイキングですか…」

このような状況下…バイキングなど、とても一人で行く気にはなれない…
それでも確かに私自身、杉崎さんとともに同じ時間帯にホテルを出て行く勇気はなかった。

「そう…ですね…そうしようかな…バイキングは絶対食べきれませんが、せっかくなので私、お茶して帰ります。」

「うん、是非そうして…それじゃあ、俺少し早いけど行くね…?少ししてから水無月さんは下に降りるといい。」

「はい…すみません、色々…あの、ここの支払いも… 」

ホテルの料金は恐らく物凄く高額なのに…
杉崎さんは私がどんなにお札を差し出しても、一円も…全く、受け取ってくれなかった。

「ここの支払いなんて、君が気にすることじゃない…俺、君よりいくつ年上だと思ってる…?基本的に独身のおっさんだからね…有り余ってるよ…」そう言って柔らかな表情で微笑んで、杉崎さんは私の頭を優しく撫でた。

独身…

杉崎さんが自然に発したそのキーワードにドキリとしながらも、
独身ではないけど、素敵な恋人はいる… 馬鹿な私は、そんなことを思ってしまった…

「有り難うございます…今度私、何かお詫びにご馳走しますので…」
申し訳なくなってそう言葉を返すと「それはいいね…それなら喜んで…楽しみにしてるよ…」

杉崎さんは私の頭の上からそっと手を離し、しばらくの間、私の目をじっと見つめてくる…
私はその視線に耐え切れなくなって、つい視線を逸らせてしまった。

「ごめんね…色々強引なことをして…また、今度ゆっくり…話そう…これからのこと」

ゆっくり… 何を話すというのだろう… これから、どうしたらいい…?

お互いに考えようということだろうか… 
それとも、…ひょっとしたら、昨夜のことは一時の気の迷いだったと、忘れてくれと…
やはり後日…頭を冷やした杉崎さんに、謝られるのだろうか…

私は… ?  私はどうしたいのだろう…

当然、答えは出ている…
拓海に話さなければ… 全てを… 正直に… 

好きな人ができたことを…  杉崎さんが好き… 
もう、拓海と、何事もなかったかのように、前のように付き合うことはできない…

でも…今日のことを…
昨夜から今朝にかけてのことを私は堂々と話せるだろうか… とても無理だ…
むしろ、話すべきではないのかもしれない…   

私は卑怯だ… そして、杉崎さんも… 

完全に黙ってしまった私に、杉崎さんが声を掛ける。

「時間だ、じゃあ行くね… また会社でね、水無月さん」

「はい… 」

その時の私には…
   そう、返事をするのがやっとだった…

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

巨乳すぎる新入社員が社内で〇〇されちゃった件

ナッツアーモンド
恋愛
中高生の時から巨乳すぎることがコンプレックスで悩んでいる、相模S子。新入社員として入った会社でS子を待ち受ける運命とは....。

危険な残業

詩織
恋愛
いつも残業の多い奈津美。そこにある人が現れいつもの残業でなくなる

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...