【完結 R18】ほかに相手がいるのに

～余韻～

質問

「ん…？…いない、って…」

拓海のくぐもった声…

明らかに、その声音に戸惑いの色が見えた。
ドアの前まで来ているのならもはや話すしかない…こんなことなら前からきちんと話しておけばよかったと、少し後悔しながらも私は口を開く。

「あのね…実は昨日から出張に来てるの、。。に」

「は… …？」

拓海の声が、少し大きくなった。

「仕事…出張でね…来てるの、。。に…だから私、今はそこにいないんだ…ごめん…」

「え… …マジで…？　出張って…そんなことおまえ一言も言ってなかったじゃん…マジで…  げーー」

「…ごめん…本当に急に…急遽決まって…私も初めてでびっくりしたんだけど…その…やっぱり新人だし、行きませんとか言えなくて…」

なんとなく…声が小さくなってしまうのを自覚する。

「………まじか～～てか葉月、いつ帰ってくるわけ…？まさか、明日とか言わないよな… タイミング悪ーーうわーー最悪だ…」

帰るのは今日だ…
今日の夕方近くになる…

もちろん拓海はいつものようにうちに泊まるつもりだろう… 

拓海がこちらに来たいというのを、仕事が最近かなり忙しいからと先延ばしにしていた。
そのうち私の方から福岡へ行くと伝えてもいた…

痺れを切らしてきたのか…
もしくは、実家などに、何かついでの用事でもあったのかも知れない…

「あの… 」

私がさらに言いかけた時、拓海が再び口を開いた。

「それで… 誰と言ってんの…？まさか、新人一人で行かせないよな…出張とかってさ…」
拓海の声が少し不機嫌だ…
眠気もあったのに私の部屋にも入れず、こんなことを聞かされて、イラついているのだろう…

でも…もはや、言わざるを得ない…

「えっとね… … 」
私は冷静を装いつつ、口を開いた。