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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第17話:初めての仮病!?証拠を確認出来る個室
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「少し、体調が優れないので、本日有給を取らせていただきます」
俺は人生初めて仮病を使った。四十になるのに、情けない。
上司は、飛田さん、大丈夫?確かに顔色悪いね。と心配してくれた。
キャリア組の年下の上司であるが、こんなおっさんの心配をしてくれるなんでできた人である。
「こんな日に申し訳ありません」
「いいよ、いいよ。うちの本来の仕事じゃないんだし。今日はゆっくり休んで」
上司はそう言ってくれた。
職場を出ると俺は霞ヶ関の地下鉄には向かわず、新橋駅の方に歩いた。
スーツのポケットには、まだ、陣さんのSDカードが入っている。
この中身をどうやって見るか、職場のPCは問題だし(そもそも許可された媒体以外アクセス出来ないようになっている。)、今から、家に帰って見るのも妻になんと説明すればいいのか。
データを見るのにうってつけだと俺が思い付いたのは、そう。
――個室ビテオ。
サラリーマンの味方のあれだ。
ここなら、PCを使えるし、しかも匿名で使え、登録もいらない。
この時間にスーツで入るのは、相当恥ずかしいが、背に腹は代えれない。
俺は新橋駅の目についた個室ビデオに飛び込んだ。
幸い(いや、不幸にもか)アダルトビデオだけでなく、漫画も置いている店舗であった。俺は適当にマンガを籠に入れ、受付をした。
個室ビデオは、受付時に身分証明などしない。匿名でPCが使える。幸い直接SDカードのポートがあるPCであった。
SDカードの中は、様々なフォルダとファイルがぐちゃぐちゃに保存されていた。
何かリスト一覧のようなものを想像していたが、ファイル数が1000を越えており、そのようなリストは探せない。
人名と思われるフォルダ名がつけられているフォルダもいくつもあった。
試しに適当に開いて見ると画像ファイルがたくさん保存されていた。
中身は、ハニートラップという単語から連想されるような個室ビテオで見るにはおあつらえ向きな画像だった。
このフォルダに付けられた人名をネットで検索してみた。
名字が少し珍しく、名前の漢字もあまり使われない漢字であった。なので、検索にヒットすれば同一人物である可能性がかなり高い。
検索結果の中には、同姓同名が、内閣官房のスタッフにいることを示す資料があった。
(これは俺の手に負える資料がじゃないな)
これ以上中身を確認するのは時間の無駄だし、知らない方がいい情報もあるかもしれない。
俺はすぐに鶴見先生に資料を渡すことを決意した。
「鶴見先生、ご無沙汰してます。飛田です。大変失礼ながら本日会えないでしょうか。今朝のニュース絡みで大変な情報を入手しました。日中交流事業で知り合った中国人からの情報です。政権を揺るがす可能性があります。私は先生しか相談できません。ぜひご連絡のほどよろしくお願いいたします」
俺は留守電にそう入れた。一部分は盛っているが、こうでもしないと、俺なんか会って貰えないだろう。
その後、俺は借りた漫画を読んで、個室で待機していた。
正直、漫画を読んでる状況でないのだか、鶴見先生からの連絡を待つことが今俺に出来ることだ。
こんなとき漫画は気晴らしになって助かった。
手に取った漫画は、俺が中学生の時に連載が始まり、それがいよいよクライマックスというものだった。俺は少し前に連載を追うのを止めていて、久々にページをめくっていた。
どんな状況でも主人公の能天気さは変わらない。そんなストーリーに勇気付けられていた。
数巻読み終わったところで、ブーブーブーと携帯電話のバイブがなった。
鶴見先生が折り返しをくれたのだ。
「もしもし、飛田です。お忙しいところ急に連絡してしまい大変申し訳ありませんでした。折り返しいただきありがとうございます」
「久しぶりだね、飛田くん。久々に連絡が入ってきたと思ったら、君の声がとても悲壮でびっくりしたよ。で、どういうことかね」
鶴見先生はいつもの豪快かつ快活だが、丁寧でもある口調で話してくれた。
外資系の副社長をしていた経歴というのもあるのか、鶴見先生は誰に対してもフェアに接する。
「は、はい。実は本日、ある中国人からこれまでハニートラップにかけた人のリストだと言われデータを貰いました。少し、中身を確認しましたが、内閣官房のスタッフと同姓同名の名前もあり、決定的な証拠も入ってます。リストは、すべて確認出来てませんが、百人は越えるかもしれないです。私にデータを渡した中国人からは、鶴見先生に渡して欲しいと言われました」
「なに、ハニートラップ?中国?」
「申し訳ありません、要領を得なくて。その中国人はこれまで日本でスパイ活動をして、日本の要人をハニートラップしていたと言っておりました。ぜひデータを受け取っていただきたいと思います」
「…………、君が冗談や悪意を持ってこんなことを言う人ではないと分かってる。昼に議員事務所に来れるか?少しだが、時間が取れる」
「ありがとうございます。お忙しいところ申し訳ありません。ぜひ伺います」
「いやいや、真否はともかく、こんな日にその情報が出たのも、日本でも何か起こりつつあるかもしれない。こちらこそ連絡をくれたことにお礼を言うよ。ではな」
「改めてありがとうございます」
個室の中で誰も見ていないのに御辞儀をするという改めて考えるとなんともシュールな光景であるが、俺は、目一杯お辞儀をして電話を切った。
(夕方とか言われたら、時間を潰すのに困っていたから、すぐに会えるのは助かったな)
さすがに、あと何時間も個室ビデオにはいたくない。
個室ビデオのタバコの残り香を無理やり消したようななんとも言えない匂いは苦手なのだ。
俺は人生初めて仮病を使った。四十になるのに、情けない。
上司は、飛田さん、大丈夫?確かに顔色悪いね。と心配してくれた。
キャリア組の年下の上司であるが、こんなおっさんの心配をしてくれるなんでできた人である。
「こんな日に申し訳ありません」
「いいよ、いいよ。うちの本来の仕事じゃないんだし。今日はゆっくり休んで」
上司はそう言ってくれた。
職場を出ると俺は霞ヶ関の地下鉄には向かわず、新橋駅の方に歩いた。
スーツのポケットには、まだ、陣さんのSDカードが入っている。
この中身をどうやって見るか、職場のPCは問題だし(そもそも許可された媒体以外アクセス出来ないようになっている。)、今から、家に帰って見るのも妻になんと説明すればいいのか。
データを見るのにうってつけだと俺が思い付いたのは、そう。
――個室ビテオ。
サラリーマンの味方のあれだ。
ここなら、PCを使えるし、しかも匿名で使え、登録もいらない。
この時間にスーツで入るのは、相当恥ずかしいが、背に腹は代えれない。
俺は新橋駅の目についた個室ビデオに飛び込んだ。
幸い(いや、不幸にもか)アダルトビデオだけでなく、漫画も置いている店舗であった。俺は適当にマンガを籠に入れ、受付をした。
個室ビデオは、受付時に身分証明などしない。匿名でPCが使える。幸い直接SDカードのポートがあるPCであった。
SDカードの中は、様々なフォルダとファイルがぐちゃぐちゃに保存されていた。
何かリスト一覧のようなものを想像していたが、ファイル数が1000を越えており、そのようなリストは探せない。
人名と思われるフォルダ名がつけられているフォルダもいくつもあった。
試しに適当に開いて見ると画像ファイルがたくさん保存されていた。
中身は、ハニートラップという単語から連想されるような個室ビテオで見るにはおあつらえ向きな画像だった。
このフォルダに付けられた人名をネットで検索してみた。
名字が少し珍しく、名前の漢字もあまり使われない漢字であった。なので、検索にヒットすれば同一人物である可能性がかなり高い。
検索結果の中には、同姓同名が、内閣官房のスタッフにいることを示す資料があった。
(これは俺の手に負える資料がじゃないな)
これ以上中身を確認するのは時間の無駄だし、知らない方がいい情報もあるかもしれない。
俺はすぐに鶴見先生に資料を渡すことを決意した。
「鶴見先生、ご無沙汰してます。飛田です。大変失礼ながら本日会えないでしょうか。今朝のニュース絡みで大変な情報を入手しました。日中交流事業で知り合った中国人からの情報です。政権を揺るがす可能性があります。私は先生しか相談できません。ぜひご連絡のほどよろしくお願いいたします」
俺は留守電にそう入れた。一部分は盛っているが、こうでもしないと、俺なんか会って貰えないだろう。
その後、俺は借りた漫画を読んで、個室で待機していた。
正直、漫画を読んでる状況でないのだか、鶴見先生からの連絡を待つことが今俺に出来ることだ。
こんなとき漫画は気晴らしになって助かった。
手に取った漫画は、俺が中学生の時に連載が始まり、それがいよいよクライマックスというものだった。俺は少し前に連載を追うのを止めていて、久々にページをめくっていた。
どんな状況でも主人公の能天気さは変わらない。そんなストーリーに勇気付けられていた。
数巻読み終わったところで、ブーブーブーと携帯電話のバイブがなった。
鶴見先生が折り返しをくれたのだ。
「もしもし、飛田です。お忙しいところ急に連絡してしまい大変申し訳ありませんでした。折り返しいただきありがとうございます」
「久しぶりだね、飛田くん。久々に連絡が入ってきたと思ったら、君の声がとても悲壮でびっくりしたよ。で、どういうことかね」
鶴見先生はいつもの豪快かつ快活だが、丁寧でもある口調で話してくれた。
外資系の副社長をしていた経歴というのもあるのか、鶴見先生は誰に対してもフェアに接する。
「は、はい。実は本日、ある中国人からこれまでハニートラップにかけた人のリストだと言われデータを貰いました。少し、中身を確認しましたが、内閣官房のスタッフと同姓同名の名前もあり、決定的な証拠も入ってます。リストは、すべて確認出来てませんが、百人は越えるかもしれないです。私にデータを渡した中国人からは、鶴見先生に渡して欲しいと言われました」
「なに、ハニートラップ?中国?」
「申し訳ありません、要領を得なくて。その中国人はこれまで日本でスパイ活動をして、日本の要人をハニートラップしていたと言っておりました。ぜひデータを受け取っていただきたいと思います」
「…………、君が冗談や悪意を持ってこんなことを言う人ではないと分かってる。昼に議員事務所に来れるか?少しだが、時間が取れる」
「ありがとうございます。お忙しいところ申し訳ありません。ぜひ伺います」
「いやいや、真否はともかく、こんな日にその情報が出たのも、日本でも何か起こりつつあるかもしれない。こちらこそ連絡をくれたことにお礼を言うよ。ではな」
「改めてありがとうございます」
個室の中で誰も見ていないのに御辞儀をするという改めて考えるとなんともシュールな光景であるが、俺は、目一杯お辞儀をして電話を切った。
(夕方とか言われたら、時間を潰すのに困っていたから、すぐに会えるのは助かったな)
さすがに、あと何時間も個室ビデオにはいたくない。
個室ビデオのタバコの残り香を無理やり消したようななんとも言えない匂いは苦手なのだ。
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