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第一章:独裁の萌芽!?華の国ツバキ市の腐敗
第41話:向かい合う陽と陰!? 対峙する二人の支配者
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「こちらになります」
そう言って、俺はボアをシーの待つ部屋に案内した。
俺はボアを記者会見の会場からシーの待つ部屋に案内する。そのまま、その部屋に警備員として同席するのだ。
この計画を指示された時、ボアと面識があるとシーとテイに不安を述べたのだが、
「ルーは落ちているゴミをいちいち記憶しているのか」
「一匹くらい虫けらが部屋に入り込んだとして、自分の家でなければ気にもかけないでしょ」
とシーとテイから身も蓋もないことを言われ納得するしかなかった。
これが支配者クラスから見た男の存在価値なのだ。
「ふん……」
ボアは明らかに不機嫌そうであったが、何も言わず部屋に入った。
続けて俺も部屋に入る。
ボアは一瞬、怪訝な視線を俺に向けたが、直ぐに興味を失なったように、部屋に待つ者に視線を向けた。
「来たか、ボアよ」
部屋の中央にはシーが一人立っていた。
この部屋はボアが記者会見をした全国政協礼堂の一室だ。
礼堂自体が、党が華の国は支配しはじめた黎明期に建てられた歴史ある建物であり、部屋の内装はシンプルであるが重厚な歴史の重みを感じさせる作りだ。
その一室でシーとボアは対峙している。
シーの表情は相変わらず無表情であるが、その瞳は、奈落を思わせるような闇が支配しているように俺には感じられた。
まだ、思力を解放していないにも関わらず、冷たいプレッシャーが部屋を覆っている。
「『お待ちしておりました。ボア御姉様』だろっ。次の総書記になろうとするものが礼儀のひとつも出来ないとは、党員としては、不安になるなぁ。シーちゃん」
対するボアは、ニヤニヤ笑いながらそう言った。
長く黒いストレートの髪をかきあげながら、部屋に入る前とは違い緊張がなくなったような態度だ。
シーの異様な圧力など気にもしていない。
自身はシーちゃんとシーを呼び、シーに御姉様と呼ばせようとしたのは、恐らく幼い頃からの顔見知りだからなのだろう。
二人とも建国の英雄、八大元老の血統である。
華の国の首都であるここロサ・キネンシス市には、党の血統だけが住める高級住宅地があり、シーもボアも幼年期をそこで過ごしている。
ボアの方が年上だが、幼い頃はお互い気安く呼べるような関係はあったのだろう。
そして、当然、ボアは、優位に立とうとそのようなことを持ち出したのだ。
「ボアよ、華の国中央政治局常務委員として通告する。貴様を、党員資格剥奪の上、拘束する。そして、貴様は、数々の不正について裁判にかけられる。党の理念に泥を塗った罪は重い」
シーはボアの挑発に乗らず、冷静にボアに党の決定を通告した
ボアは手で顔を覆いながら俯いている。
そして、肩が小刻みに揺れている。
「……ふ、ふ、ふーはっはっは。はーはっはは」
ボアは笑いを我慢していたのだ。そして、結局大きく笑い出した。
「ハハハ、そうか、それで、私を拘束するために来たのは、シー、お前だけか。そうか、ハハハ、フーとオンが二人で来たら流石の私もと少し身構えていたのだがな。それが、シー、お前だけとは。私を拘束する? よくそんな冗談、真顔で言えたな」
ボアの高ら笑いが部屋中に響き渡った。その笑い声は、勝利の確信に満ち溢れていた。
「実力も、実績も何もかも私に及ばない、シー!! そんなお前が私を拘束するだと。呆れを通り越して笑うしかないな!!」
「お前を拘束するのは、私ではない。党の意思だ」
「党の意思? お前が党を語るのか! お前は何も党に貢献していないだろ。ただ、血統だけで、いや、何も実績がないからこそ派閥の狭間でポカンと浮いて中央政治局常務委員に入っただけなのに。この数年間、中央政治局常務委員で、お前は何をした? 私はその間、貧しい民数十万人に家を与え、数百万人に職を与えて華の国を豊かにさせてやったぞ!!」
確かにボアが書記長を勤めるツバキ市も、ツバキ市の前に赴任していた市も、経済的に大きく発展した。
そして、貧しい者向けの住宅を整備する公共事業を代々的に行っていた。
貧しき持たざる者を豊かにしたという点においてボアの実績は疑いようがない。
対するシーは飛び級で、中央政治局常務委員になったものの、取り立てて目立った成果はないのだ。
「コウ様、シュウ様に感謝しないとな。中央政治局常務委員の決定は、私に白紙の委任状をくれたのだろう。つまり、シー、お前を支配して、次期中央政治局常務委員を統べよということだ!!」
ボアは、そうシーに言い放つと、臨戦態勢に入るかのように思力装纏した。
同時にシーも自身の思力を解放し、思力装を纏った。
支配者クラスが思力を解放したことで、辺りの空間が歪みだし、部屋の景色が一変し始めた。
思界顕現だ。
いよいよ始まるのだ。この国の最高峰の権力と思力を持つもの同士の決闘が。
果たして俺の思力は、ボアに通じるのか。
思界で歪みだし、まだ定まっていたない空間の中で、俺は、静かに自分の役割を果たす覚悟をもう一度固めた。
そう言って、俺はボアをシーの待つ部屋に案内した。
俺はボアを記者会見の会場からシーの待つ部屋に案内する。そのまま、その部屋に警備員として同席するのだ。
この計画を指示された時、ボアと面識があるとシーとテイに不安を述べたのだが、
「ルーは落ちているゴミをいちいち記憶しているのか」
「一匹くらい虫けらが部屋に入り込んだとして、自分の家でなければ気にもかけないでしょ」
とシーとテイから身も蓋もないことを言われ納得するしかなかった。
これが支配者クラスから見た男の存在価値なのだ。
「ふん……」
ボアは明らかに不機嫌そうであったが、何も言わず部屋に入った。
続けて俺も部屋に入る。
ボアは一瞬、怪訝な視線を俺に向けたが、直ぐに興味を失なったように、部屋に待つ者に視線を向けた。
「来たか、ボアよ」
部屋の中央にはシーが一人立っていた。
この部屋はボアが記者会見をした全国政協礼堂の一室だ。
礼堂自体が、党が華の国は支配しはじめた黎明期に建てられた歴史ある建物であり、部屋の内装はシンプルであるが重厚な歴史の重みを感じさせる作りだ。
その一室でシーとボアは対峙している。
シーの表情は相変わらず無表情であるが、その瞳は、奈落を思わせるような闇が支配しているように俺には感じられた。
まだ、思力を解放していないにも関わらず、冷たいプレッシャーが部屋を覆っている。
「『お待ちしておりました。ボア御姉様』だろっ。次の総書記になろうとするものが礼儀のひとつも出来ないとは、党員としては、不安になるなぁ。シーちゃん」
対するボアは、ニヤニヤ笑いながらそう言った。
長く黒いストレートの髪をかきあげながら、部屋に入る前とは違い緊張がなくなったような態度だ。
シーの異様な圧力など気にもしていない。
自身はシーちゃんとシーを呼び、シーに御姉様と呼ばせようとしたのは、恐らく幼い頃からの顔見知りだからなのだろう。
二人とも建国の英雄、八大元老の血統である。
華の国の首都であるここロサ・キネンシス市には、党の血統だけが住める高級住宅地があり、シーもボアも幼年期をそこで過ごしている。
ボアの方が年上だが、幼い頃はお互い気安く呼べるような関係はあったのだろう。
そして、当然、ボアは、優位に立とうとそのようなことを持ち出したのだ。
「ボアよ、華の国中央政治局常務委員として通告する。貴様を、党員資格剥奪の上、拘束する。そして、貴様は、数々の不正について裁判にかけられる。党の理念に泥を塗った罪は重い」
シーはボアの挑発に乗らず、冷静にボアに党の決定を通告した
ボアは手で顔を覆いながら俯いている。
そして、肩が小刻みに揺れている。
「……ふ、ふ、ふーはっはっは。はーはっはは」
ボアは笑いを我慢していたのだ。そして、結局大きく笑い出した。
「ハハハ、そうか、それで、私を拘束するために来たのは、シー、お前だけか。そうか、ハハハ、フーとオンが二人で来たら流石の私もと少し身構えていたのだがな。それが、シー、お前だけとは。私を拘束する? よくそんな冗談、真顔で言えたな」
ボアの高ら笑いが部屋中に響き渡った。その笑い声は、勝利の確信に満ち溢れていた。
「実力も、実績も何もかも私に及ばない、シー!! そんなお前が私を拘束するだと。呆れを通り越して笑うしかないな!!」
「お前を拘束するのは、私ではない。党の意思だ」
「党の意思? お前が党を語るのか! お前は何も党に貢献していないだろ。ただ、血統だけで、いや、何も実績がないからこそ派閥の狭間でポカンと浮いて中央政治局常務委員に入っただけなのに。この数年間、中央政治局常務委員で、お前は何をした? 私はその間、貧しい民数十万人に家を与え、数百万人に職を与えて華の国を豊かにさせてやったぞ!!」
確かにボアが書記長を勤めるツバキ市も、ツバキ市の前に赴任していた市も、経済的に大きく発展した。
そして、貧しい者向けの住宅を整備する公共事業を代々的に行っていた。
貧しき持たざる者を豊かにしたという点においてボアの実績は疑いようがない。
対するシーは飛び級で、中央政治局常務委員になったものの、取り立てて目立った成果はないのだ。
「コウ様、シュウ様に感謝しないとな。中央政治局常務委員の決定は、私に白紙の委任状をくれたのだろう。つまり、シー、お前を支配して、次期中央政治局常務委員を統べよということだ!!」
ボアは、そうシーに言い放つと、臨戦態勢に入るかのように思力装纏した。
同時にシーも自身の思力を解放し、思力装を纏った。
支配者クラスが思力を解放したことで、辺りの空間が歪みだし、部屋の景色が一変し始めた。
思界顕現だ。
いよいよ始まるのだ。この国の最高峰の権力と思力を持つもの同士の決闘が。
果たして俺の思力は、ボアに通じるのか。
思界で歪みだし、まだ定まっていたない空間の中で、俺は、静かに自分の役割を果たす覚悟をもう一度固めた。
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