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第二章:独裁の予兆!?中央政治局常務委員《フラワーナイン》の選抜
第11話:前総書記様はお怒り!?シーの申し開き
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「あらあら、私のかわいい小猫ちゃんをいじめた本人は、自分は大事そうにペットを連れてくるのねぇ」
コウの声を聞いた瞬間、ドキンっとまた胸の鼓動がひとつ高鳴った。
甘美で妖艶な喘ぎ声を耳元で囁かれているような、そんな感覚に陥る。
ただ、先程と違い自制はできている。やはり、香りを吸っていないおかげだ。
シーに向けられた言葉、小猫ちゃんはボアのことだろう。
この会談は、引退しても、中央政治局常務委員に一番大きな影響力の持つコウに、シーか申し開きする場なのだ。コウの思い通りにしなかったシーの判断を。
「ご無沙汰しております、コウ様。お元気そうでなによりです」
シーはコウのイジるような発言には触れず、儀礼的に挨拶を述べた。
いつもの無機質な、感情の籠もってない声で。少しくらいうやうやしくしなくていいのかとこちらが心配になる。
「そうねぇ、元気は元気よ。ただ言うことを聞かない犬をどう躾ければいいのか、少し困ってるのよねぇ」
部屋に漂う緊張感が、急激に増した。シュウのアドバイス通り俺はコウを見ずに頭を垂れているので、コウの表情はわからないが、言葉と纏う雰囲気に怒りが込められているのはわかる。
「ボアは、危険な女でした。次期総書記《わたし》にとってだけでなく、コウ様にとってもです」
「あらあら、ボアちゃんは優秀な娘じゃない。シーちゃん、私が、ボアちゃんを気に入ってたからって嫉妬は良くないわよ」
「いえ、ボアは、自分を天子に見立てるほど、強欲な女です。そんなボアが、誰の下につくはずもありません。そして、そんなボアの欲を見抜いて、フー様はボアを認めなかったのです」
「そうねぇ。フーはボアちゃんを嫌ってたものね」
「今、民衆の心は党から離れつつあります。経済成長によって暮らしは前よりも良くなっているにもかかわらず。それは不正という党の理想とする平等からかけ離れたものが蔓延してるからです。そして、ボアは、その不正を体現したかのような女でした。出自、金、力、コネ、そして、暴力。使えるものはなんでも使って、権力のトップを目指してました」
「ボアちゃんは少し派手好きだけど、成果を残してるわ。そんなに悪く言うことないんじゃない?」
「ボアの底なしの野心は、必ず党を壊す争いを生んだでしょう。今党に必要なのは一人の強大な力でなく、党員の結束です。私には、ボアのような力はありません。だからこそ、党員の力とコウ様のようなこれまで党に尽くして頂いた諸先輩方の力を一つにまとめることが私に課せられた使命なのです。コウ様が築いた党の集団指導体制と結束を壊すわけにはいかないのです」
「………ふーん」
コウは少し面白そうに笑ったあと、何か考えるように黙った。
シーはまるで演説するかのように党の結束を謳った。
しかし、それは要は遠回しにコウにこう伝えたのだ。
ボアより私の方が扱いやすいですよと。
「わかったわ。ボアちゃんも少しおいたが過ぎたものね。少し反省してもらわなくちゃね」
「ご理解いただきありがとうございます」
(よかった。無事にすんだ)
最悪の場合、思力による闘争になるのではとも考えていたので、コウがあっさりシーを許して俺は胸をなでおろした。
「……ひぃ!」
次の瞬間、突然猛烈な悪寒が俺を襲い、俺は悲鳴を小さく出してしまった。
また、コウから発せられる張り詰めた緊張感ある雰囲気が、部屋中を包んだ。
「そんなことよりも、シーちゃん。あなた、フーに次期中央政治局常務委員を七人にするようお願いしたらしいわね。本当かしら?」
コウの声はこれまでの甘美なものとは違い、どす黒い怒りに満ちた声になっていた。
「ご存知でしたか。その通りです」
「それも、シュウちゃんの後継を作らないよう提案したそうじゃない。どういうことなのかしら。あなた、シュウちゃんの役割の大事さが分かってるの?」
「中央政治局常務委員の構造改革を直接直訴するなど、次期総書記だとしても、やり過ぎだ。特に現党中央法政委員会書記長である私に相談もなく、党中央法政委員会書記長をなくそうなどと」
これまで傍観していたシュウもシーに向けて敵意を放ってきた。
シュウの纏うプレッシャーもコウと遜色ない。
「この件については、もちろん、私が、総書記となったときの党運営を考えてですが、コウ様やシュウ様を守るためでもあります」
「ハッ、私やコウ様を守るだと!。戯言も甚だしいぞ」
「いえ、先輩方を守るためにも必要だと考えております」
「…………。どういうことなの。説明してちょうだい」
自分たちを守るためと予想もしてない答えが返ってきたからか、コウもシュウも、雰囲気が、すこし和らいだ。
少し前までは、すぐにでも闘争が始まるのではという緊張感であった。
「次期中央政治局常務委員、いえ、中央政治局常務委員になってもですが、メンバー入りが確定している者は三名います。そのうち、二人は現中央政治局常務委員で、年齢的に引退しない私とリーです」
「そんなの当たり前じゃない。あなたとリーは次の中央政治局常務委員のために見習いとして入れたようなものなんだから」
「そうです。コウ様のお陰で私は、中央政治局常務委員に入らせてもらいました。リーもです。リーは、フー様の後継者として」
「そうね。他七人は三十歳をすぎるから引退ね。シュウちゃんもね。お疲れ様。で、あと一人は?そして、これが何と関係あるのかしら?」
「はい。あと一人、確定がおります。圧倒的な実力と成果を誇り、誰もが認めざるえない者が。中央政治局員に。オウキ・ザンです。」
コウの声を聞いた瞬間、ドキンっとまた胸の鼓動がひとつ高鳴った。
甘美で妖艶な喘ぎ声を耳元で囁かれているような、そんな感覚に陥る。
ただ、先程と違い自制はできている。やはり、香りを吸っていないおかげだ。
シーに向けられた言葉、小猫ちゃんはボアのことだろう。
この会談は、引退しても、中央政治局常務委員に一番大きな影響力の持つコウに、シーか申し開きする場なのだ。コウの思い通りにしなかったシーの判断を。
「ご無沙汰しております、コウ様。お元気そうでなによりです」
シーはコウのイジるような発言には触れず、儀礼的に挨拶を述べた。
いつもの無機質な、感情の籠もってない声で。少しくらいうやうやしくしなくていいのかとこちらが心配になる。
「そうねぇ、元気は元気よ。ただ言うことを聞かない犬をどう躾ければいいのか、少し困ってるのよねぇ」
部屋に漂う緊張感が、急激に増した。シュウのアドバイス通り俺はコウを見ずに頭を垂れているので、コウの表情はわからないが、言葉と纏う雰囲気に怒りが込められているのはわかる。
「ボアは、危険な女でした。次期総書記《わたし》にとってだけでなく、コウ様にとってもです」
「あらあら、ボアちゃんは優秀な娘じゃない。シーちゃん、私が、ボアちゃんを気に入ってたからって嫉妬は良くないわよ」
「いえ、ボアは、自分を天子に見立てるほど、強欲な女です。そんなボアが、誰の下につくはずもありません。そして、そんなボアの欲を見抜いて、フー様はボアを認めなかったのです」
「そうねぇ。フーはボアちゃんを嫌ってたものね」
「今、民衆の心は党から離れつつあります。経済成長によって暮らしは前よりも良くなっているにもかかわらず。それは不正という党の理想とする平等からかけ離れたものが蔓延してるからです。そして、ボアは、その不正を体現したかのような女でした。出自、金、力、コネ、そして、暴力。使えるものはなんでも使って、権力のトップを目指してました」
「ボアちゃんは少し派手好きだけど、成果を残してるわ。そんなに悪く言うことないんじゃない?」
「ボアの底なしの野心は、必ず党を壊す争いを生んだでしょう。今党に必要なのは一人の強大な力でなく、党員の結束です。私には、ボアのような力はありません。だからこそ、党員の力とコウ様のようなこれまで党に尽くして頂いた諸先輩方の力を一つにまとめることが私に課せられた使命なのです。コウ様が築いた党の集団指導体制と結束を壊すわけにはいかないのです」
「………ふーん」
コウは少し面白そうに笑ったあと、何か考えるように黙った。
シーはまるで演説するかのように党の結束を謳った。
しかし、それは要は遠回しにコウにこう伝えたのだ。
ボアより私の方が扱いやすいですよと。
「わかったわ。ボアちゃんも少しおいたが過ぎたものね。少し反省してもらわなくちゃね」
「ご理解いただきありがとうございます」
(よかった。無事にすんだ)
最悪の場合、思力による闘争になるのではとも考えていたので、コウがあっさりシーを許して俺は胸をなでおろした。
「……ひぃ!」
次の瞬間、突然猛烈な悪寒が俺を襲い、俺は悲鳴を小さく出してしまった。
また、コウから発せられる張り詰めた緊張感ある雰囲気が、部屋中を包んだ。
「そんなことよりも、シーちゃん。あなた、フーに次期中央政治局常務委員を七人にするようお願いしたらしいわね。本当かしら?」
コウの声はこれまでの甘美なものとは違い、どす黒い怒りに満ちた声になっていた。
「ご存知でしたか。その通りです」
「それも、シュウちゃんの後継を作らないよう提案したそうじゃない。どういうことなのかしら。あなた、シュウちゃんの役割の大事さが分かってるの?」
「中央政治局常務委員の構造改革を直接直訴するなど、次期総書記だとしても、やり過ぎだ。特に現党中央法政委員会書記長である私に相談もなく、党中央法政委員会書記長をなくそうなどと」
これまで傍観していたシュウもシーに向けて敵意を放ってきた。
シュウの纏うプレッシャーもコウと遜色ない。
「この件については、もちろん、私が、総書記となったときの党運営を考えてですが、コウ様やシュウ様を守るためでもあります」
「ハッ、私やコウ様を守るだと!。戯言も甚だしいぞ」
「いえ、先輩方を守るためにも必要だと考えております」
「…………。どういうことなの。説明してちょうだい」
自分たちを守るためと予想もしてない答えが返ってきたからか、コウもシュウも、雰囲気が、すこし和らいだ。
少し前までは、すぐにでも闘争が始まるのではという緊張感であった。
「次期中央政治局常務委員、いえ、中央政治局常務委員になってもですが、メンバー入りが確定している者は三名います。そのうち、二人は現中央政治局常務委員で、年齢的に引退しない私とリーです」
「そんなの当たり前じゃない。あなたとリーは次の中央政治局常務委員のために見習いとして入れたようなものなんだから」
「そうです。コウ様のお陰で私は、中央政治局常務委員に入らせてもらいました。リーもです。リーは、フー様の後継者として」
「そうね。他七人は三十歳をすぎるから引退ね。シュウちゃんもね。お疲れ様。で、あと一人は?そして、これが何と関係あるのかしら?」
「はい。あと一人、確定がおります。圧倒的な実力と成果を誇り、誰もが認めざるえない者が。中央政治局員に。オウキ・ザンです。」
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