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ああ~・・・。やっちゃったなぁ。

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「との事だ。」

簡潔な報告を受けて、少し考え込む。

「うわぁ・・・。どうしようかな~。
大分お怒りじゃないか。」

その呟きに目の前の女性は嘆息する。

「お怒りだったな。エンペラードラゴンをミンチにするとか言っていたし。
そもそも、お前が持ち場を離れるからいけない。
私は大丈夫だと言ったのに。」

後頭部を手でガシガシと掻く。
そしてあの子の怒りを拗らせたら色々面倒臭・・・、いやいや厄介・・・・、ん~困るなぁと。
目の前の女性の話から意識を飛ばし始める。

「私の怪我をミリアムさんが直してくれたから良かったものの・・・。
というか、私達、ハンターの依頼だったのに、あのお方一人でエンペラードラゴンを撃退してしまって。
本当に情けない・・・。
・・・って聞いているのか!?」

「んえっ!?何?」

しまった。
全然話を聞いてなかった。

マルティナもお怒りだ。

「お前!また人の話を聞いて無かったな!!」

「ごめんなさい。」

反論したら余計怒られそうなので、素直に謝ろう。

「・・・っとに、心が入っていない謝罪、丸分かりだよ!」

「ははは。」

よし、大丈夫そうだ。
さて、彼女。結愛の事だ。
彼女は静かに怒るからなぁ。
あの、人を殺しそうな瞳で、滾々と理性的に説教を受けるのは精神的にキツイ。
かと言ってヒステリックに喚き立てられても、どうしたら良いか分からないし。

初動が大事だな。
間違えない様にしないと。

「おい、また違う事を考えてるだろ?」

「・・・・・。」

「全く・・・。早くミリアムさんに会いに行けよ。
怒ってはいたが、悲しそうでもあったからな。」

「そうだね。俺も早く彼女に会いたいよ。」





彼女が居なくなって、何十年。
心の中の半分以上が喪失した様で。

最初の数年は家に帰っても、彼女の朗らかな笑顔をもう見れなくなった事実を受け入れるのに費やした。
彼女はいつも変な事を言ったり、変な動きをしたりして、疲れて帰ってきた俺の癒しだった。
まぁ、変な事は俺の為でなく、デフォルトだったんだけど。

何だろう。
彼女の突拍子もない行動に驚かされたけど、それが居心地が良いと感じた俺もちょこっとだけ変だったのだろう。

「ただいま。」

と言っても、

「おかえりぃ~。」

とのんびり返す彼女が居ない。
これには結構堪えた。
全く、契約違反だよ。
先に居なくなったら駄目だよ?って言ったのに。
遺体を確認しに行って、余りにも現実味が無さ過ぎて。
自分の転職を自分以上に喜んでくれて、これで二人、いや子供も作れば皆でゆっくり過ごせるねって笑って言った彼女。
青白い彼女をぼうっと見下ろして、彼女の家族が泣き崩れる中で、何故か泣けなかった。
泣かないでくれって彼女が言ってそうで。

葬式とか諸々を終えて、二人の家に帰って、漸く彼女が居ない事を実感して、その時初めて泣いた。

「っあんだけ言ったのにっ!!」

誰に届く事の無い怒り。
床を拳で叩きつけ、蹲る。

淡々と暮らして、寿命を迎えたら、何故か変な子供が彼女の居る世界へ転生させてくれると言った。
彼女が生前好んで読んでいた異世界転生。
まさか自分が体験するなんて。
しかも、転生した自分の容姿は前世と掛け離れすぎて、






「でも、彼女は俺に気付いてくれるかなぁ~。」

「?」

マルティナが首を傾げて、自分を見る。

「何でもないよ。」

肩を竦めてみる。
マルティナは小さく息を吐く。

「まぁ、彼女は学園に通っているのだから、明日にでも行ってみたらいいんじゃないか?」

「分かった。」

というか、もしかしたら今の彼女は俺より年下なのかな?
何と言うか凄く新鮮だな。

思わず笑みが零れた。


「マルティナ。」

彼女はミリアムに重症の怪我を完治させて貰ったんだよな?

「その、ミリアムさんって、治癒魔法が使えるって事だよね?」

マルティナはキラキラと目を輝かせながら喋り出す。

「ああ!間近で女神の様な力を見る事が出来て私は幸運だ!
慈愛に満ちた微笑みで私を癒して下さったのだ!!」

「じあい。」

慈愛なんて結愛にあったっけ?
自愛なら分かる。
どちらかと言うと痛がってるのを見て、笑ってるイメージしかないのだけど。

「それって、本当にミリアムさん?」

偽物では無かろうか。
何気なく聞いたら、

「何を言っている!!あんなにお優しいミリアムさんがミリアムさんじゃない訳が無いだろう!!」

滅茶苦茶憤慨された。
しかもよく分からない理論を述べられた。

「ごめん、ごめん。何となく聞いただけだから。」

取り敢えず会ってみたら分かるかな。
お互いに気付くのかな?

「あれ?でも、明日、何かあったような気がするんだけど・・・。」

まぁ、いいか!

「そう言えば、デイヴィッド。」

「うん?」

「お前、ミリアムさんが通っている学園の事知っているか?」

「?知らないけど?」

マルティナは何とも複雑な顔をしている。

「あの由緒のある学園を知らないのか・・・。」

「そんなに凄い所なの?」

「名のある貴族が通う学園だぞ。」

「へぇ~。」

貴族なのか~。
凄いな。

「それだけかっ!? 」

「え?うん。」

何か、結愛がよく読んでた、何だっけ。
あのぷぎゃあ系?の小説みたいだな。
ぴぎゃあだっけ?

まぁ、そんなに有名な学園なら街の人とかも知っているだろうし、聞きながら向かおう。


取り敢えず、契約違反だ!と怒ってみようかな?













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