転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

文字の大きさ
98 / 126

ああ~・・・。やっちゃったなぁ。

しおりを挟む
「との事だ。」

簡潔な報告を受けて、少し考え込む。

「うわぁ・・・。どうしようかな~。
大分お怒りじゃないか。」

その呟きに目の前の女性は嘆息する。

「お怒りだったな。エンペラードラゴンをミンチにするとか言っていたし。
そもそも、お前が持ち場を離れるからいけない。
私は大丈夫だと言ったのに。」

後頭部を手でガシガシと掻く。
そしてあの子の怒りを拗らせたら色々面倒臭・・・、いやいや厄介・・・・、ん~困るなぁと。
目の前の女性の話から意識を飛ばし始める。

「私の怪我をミリアムさんが直してくれたから良かったものの・・・。
というか、私達、ハンターの依頼だったのに、あのお方一人でエンペラードラゴンを撃退してしまって。
本当に情けない・・・。
・・・って聞いているのか!?」

「んえっ!?何?」

しまった。
全然話を聞いてなかった。

マルティナもお怒りだ。

「お前!また人の話を聞いて無かったな!!」

「ごめんなさい。」

反論したら余計怒られそうなので、素直に謝ろう。

「・・・っとに、心が入っていない謝罪、丸分かりだよ!」

「ははは。」

よし、大丈夫そうだ。
さて、彼女。結愛の事だ。
彼女は静かに怒るからなぁ。
あの、人を殺しそうな瞳で、滾々と理性的に説教を受けるのは精神的にキツイ。
かと言ってヒステリックに喚き立てられても、どうしたら良いか分からないし。

初動が大事だな。
間違えない様にしないと。

「おい、また違う事を考えてるだろ?」

「・・・・・。」

「全く・・・。早くミリアムさんに会いに行けよ。
怒ってはいたが、悲しそうでもあったからな。」

「そうだね。俺も早く彼女に会いたいよ。」





彼女が居なくなって、何十年。
心の中の半分以上が喪失した様で。

最初の数年は家に帰っても、彼女の朗らかな笑顔をもう見れなくなった事実を受け入れるのに費やした。
彼女はいつも変な事を言ったり、変な動きをしたりして、疲れて帰ってきた俺の癒しだった。
まぁ、変な事は俺の為でなく、デフォルトだったんだけど。

何だろう。
彼女の突拍子もない行動に驚かされたけど、それが居心地が良いと感じた俺もちょこっとだけ変だったのだろう。

「ただいま。」

と言っても、

「おかえりぃ~。」

とのんびり返す彼女が居ない。
これには結構堪えた。
全く、契約違反だよ。
先に居なくなったら駄目だよ?って言ったのに。
遺体を確認しに行って、余りにも現実味が無さ過ぎて。
自分の転職を自分以上に喜んでくれて、これで二人、いや子供も作れば皆でゆっくり過ごせるねって笑って言った彼女。
青白い彼女をぼうっと見下ろして、彼女の家族が泣き崩れる中で、何故か泣けなかった。
泣かないでくれって彼女が言ってそうで。

葬式とか諸々を終えて、二人の家に帰って、漸く彼女が居ない事を実感して、その時初めて泣いた。

「っあんだけ言ったのにっ!!」

誰に届く事の無い怒り。
床を拳で叩きつけ、蹲る。

淡々と暮らして、寿命を迎えたら、何故か変な子供が彼女の居る世界へ転生させてくれると言った。
彼女が生前好んで読んでいた異世界転生。
まさか自分が体験するなんて。
しかも、転生した自分の容姿は前世と掛け離れすぎて、






「でも、彼女は俺に気付いてくれるかなぁ~。」

「?」

マルティナが首を傾げて、自分を見る。

「何でもないよ。」

肩を竦めてみる。
マルティナは小さく息を吐く。

「まぁ、彼女は学園に通っているのだから、明日にでも行ってみたらいいんじゃないか?」

「分かった。」

というか、もしかしたら今の彼女は俺より年下なのかな?
何と言うか凄く新鮮だな。

思わず笑みが零れた。


「マルティナ。」

彼女はミリアムに重症の怪我を完治させて貰ったんだよな?

「その、ミリアムさんって、治癒魔法が使えるって事だよね?」

マルティナはキラキラと目を輝かせながら喋り出す。

「ああ!間近で女神の様な力を見る事が出来て私は幸運だ!
慈愛に満ちた微笑みで私を癒して下さったのだ!!」

「じあい。」

慈愛なんて結愛にあったっけ?
自愛なら分かる。
どちらかと言うと痛がってるのを見て、笑ってるイメージしかないのだけど。

「それって、本当にミリアムさん?」

偽物では無かろうか。
何気なく聞いたら、

「何を言っている!!あんなにお優しいミリアムさんがミリアムさんじゃない訳が無いだろう!!」

滅茶苦茶憤慨された。
しかもよく分からない理論を述べられた。

「ごめん、ごめん。何となく聞いただけだから。」

取り敢えず会ってみたら分かるかな。
お互いに気付くのかな?

「あれ?でも、明日、何かあったような気がするんだけど・・・。」

まぁ、いいか!

「そう言えば、デイヴィッド。」

「うん?」

「お前、ミリアムさんが通っている学園の事知っているか?」

「?知らないけど?」

マルティナは何とも複雑な顔をしている。

「あの由緒のある学園を知らないのか・・・。」

「そんなに凄い所なの?」

「名のある貴族が通う学園だぞ。」

「へぇ~。」

貴族なのか~。
凄いな。

「それだけかっ!? 」

「え?うん。」

何か、結愛がよく読んでた、何だっけ。
あのぷぎゃあ系?の小説みたいだな。
ぴぎゃあだっけ?

まぁ、そんなに有名な学園なら街の人とかも知っているだろうし、聞きながら向かおう。


取り敢えず、契約違反だ!と怒ってみようかな?













しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

処理中です...