転生?乙女ゲーム?悪役令嬢?そんなの知るか!私は前世の夫を探しに行く。

コロンパン

文字の大きさ
123 / 126

我、鬼なりて、忍び寄る輩を喰らう者也。

しおりを挟む
ザカザカザカザカ。

私達三人は自分の足で目的地へ向かう。
流石チートゴリラ。
足に強化魔法を掛けて走る。
全く疲れない。
何と素晴らしい能力か。

「凄いな、ミリアム。俺達に普通について来れるとか。」

走るスピードはそのままに少し顔を此方に向けるデイヴィッド。
私は効果音が付くくらいのドヤァとした顔を作る。


「ふはははは。全てバカがくれたチートのおか・・・・・。せいなのだよ!!」

おかげと言ったら、感謝しないといけないからとても気分が悪いのでここは〈せい〉とする。
あのバカにはどうしても感謝したくない。
私の中の何かが囁いている。

「一応さ、あの人神様なんだから、バカって言ったら駄目だろう?
一応、俺とミリアムをもう一度引き会わせてくれた訳だしさ。
一応、感謝しておいた方が良いと思うぞ。」

一応。

「あのさ、デイヴィッドの方が結構失礼な事言ってるの分かってて言ってるよね?
顔、ほら、にやけてるし。」

「ん?そんな事無いぞ?俺いつもにやけ顔だもん。」

それは前世の君の顔だろうて。

「そんなイケメン面でにやけも糞もあるかよ!何だ!そのイケメン顔!?
ビフォーアフターでもこんなに変わらんわ!
別人でしたね!そうでした!」

夫の顔に慣れるのはいつになるだろう。
彼そのものが好きなのには変わりないが、如何せん顔が良い。
髪の毛白いけど、顔は流石乙女ゲームと言われるだけあって、本当にイケメンなのだ。
程よい大きさの形の整った灰色の瞳。
当然の如く鼻筋も通って、当然の様に唇も・・・て唇とか言うの何かエロティックな感じがする。
まぁ、結論、顔が良いのだ。

何もここまでイケメンに転生しなくても良かったんじゃないか?
私はマジマジとデイヴィッドの顔を見つめる。

「いや、俺よりミリアムの方が顔の変化は凄いと思うけど?
金髪もそうだけど、目青いもん。外国人じゃん。」

「名前の時点で外国人じゃないか。」

「あ、そうか。でも俺の目の灰色は別に日本人で少し黒目が薄いかな~でイケるけど、ミリアムのは駄目だね。
完全に外国人。ブルーアイズだもん。ブルーアイズ。」

自分の目と私の目を交互に指差して半笑い。
だから人を指差すんじゃありません!

「ブルーアイズ言うな!自分が変わり過ぎたのは認めるけど、デイヴィッドは外も中もイケメンになってしまったら、完璧超人じゃない。
セイさんに聞いたけど、言い寄って来る女性多かったって?
そら、寄って来るわ、完璧超人だもん。
ああああああ!!不安だ!あああ!!」

この世界の女性ったら、全員美の権化だろ!?
そんな女性に言い寄られるとか不安でしかない。

「私が美少女なのは分かる。自分で初めて見た時もたまげたからな!
でも、外身が幾ら綺麗でも、中身これだぞ?
腐ったポンコツだぞ!?
完璧超人と腐物と比べて、どちらが良いと思う?
10割完璧超人だろがっ!!
うああああ!!あのバカ!!バッ!!バッ!!」

頭の線がどこか切れたみたいだ。
デイヴィッドに会えた安堵とこれからの漠然とした不安で情緒不安定になってしまった。
セイさんが引き気味に私を見る。

「お、おい、デイヴィッド・・・。ミリアムさんどうしたんだ?」

「ん、ああ。何か時々不安になって、発狂するんだよ。ある程度吐き出したら落ち着くから、大丈夫。」

慣れた感じのデイヴィッドにセイさんの口元がヒクリと上がる。
やべぇ奴だって顔してんな!?
その通り、やべぇ奴だよ、私は。
前世の時から、こんな感じで蓮が大丈夫だと言っても、一人で不安になっていた。

勿論、何も起こった試しは無かった。
それは蓮本人だけでなく、共通の友人、更には己の身内にまでも同様の事を言われる。

『結愛が何を心配してるのか分からないけど、俺女の人にモテた事一度も無いからね?って、自分で言ってて悲しくなるけど。俺が同時にどうこう出来る様な器用な人間に見えないだろう?
こちょこちょ隠して、何かするの凄く面倒臭い。』

『結愛ちゃん、アイツは絶対浮気とかしないって。アイツがそんな事する様な性格じゃないって分かってるだろ?』

『蓮君はそういう女性関係に興味無さそうよね。そんな事するより、自分の趣味を優先しそう。』

分かってるんだ、それは私も。
絶対に彼はそう言った間違いを犯さない事は。
だが、この自分でも分からない言いようのない不安。

『結愛は変な漫画の読み過ぎなんだって。男が全員浮気するとかさ。』

そうなんだ。ごもっともなんだ。
それでも不安なんだ。

何故こんなに不安なのかは、理由は一つ。



・・・・私がどうしようもない人間だから、これに尽きる。
私の様な卑屈で陰湿で醜悪な人間をずっと好きでいてくれるのだろうか、それが心を占めている。
自分でもこの性格を直せばいいのは分かっている。
だが、清廉でいようと心がけるも、気を抜いたら生来の捻じ曲がった私が顔を出す。

こんなどうしようもない人間を彼はよく放り出さないのか。
いつか愛想を尽かされるのか内心ビクビクしている。

口では大きい事を言っているが、私と言う人間はこういう人間だ。
蓮を前にしたら、自分の矮小さが浮き彫りになる。

彼の性格が羨ましくも、そうなりたいとは思わない。
彼の存在が眩しくて仕方が無い。
その光に吸い寄せられる。
その光で自分の醜い中身が浄化されたらいいのに。

ま、多分私の汚れの方が勝ちそうだけどね。


うし。落ち着いてきた。

「ええと、牛虎はどの辺に居るの?」

「ええ!?何事も無かったかのように話してるし!!」

自虐の後の立ち直りが早いのは私の長所?であります。

「う~ん、もう森に入っているから、いつ出てもおかしくないけどな。」

デイヴィッドも全く気にする事無く返す。

「・・・・・・・・。」

セイさんや、済まないが慣れてくれ。これが私達だから。
唖然とするセイさんをそのままにして、私達は更に森へと足を進める。


「居た。」

デイヴィッドの指差した方向を見ると、それはまぁ立派な体格のパイソンタイガーが悠然と草を食んでいた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】転生したら悪役継母でした

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。 その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。 しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。 絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。 記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。 夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。 ◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆ *旧題:転生したら悪妻でした

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜

侑子
恋愛
 小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。  父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。  まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。  クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。  その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……? ※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。

残念な顔だとバカにされていた私が隣国の王子様に見初められました

月(ユエ)/久瀬まりか
恋愛
公爵令嬢アンジェリカは六歳の誕生日までは天使のように可愛らしい子供だった。ところが突然、ロバのような顔になってしまう。残念な姿に成長した『残念姫』と呼ばれるアンジェリカ。友達は男爵家のウォルターただ一人。そんなある日、隣国から素敵な王子様が留学してきて……

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...