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自分だけ安全な位置に居て、危険を知らせるとかホントどうかしてるぜっ!!

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なるほど、パイソンタイガーね。
体つきはパイソン、どちらかと言うとバッファロー寄りだけど、体の模様が虎柄。
角は無いけど、代わりに大きく鋭い牙がある。
ん~?肉食獣なのかな?

「あの牙で家畜とかを襲ってるの?」

「いいや、あの牙は木の幹を削って、その中の柔らかい部分を食べてる。
それで木が腐ってしまうらしくて、植林している木まで駄目にしてしまうらしい。」

ほう。

「ある程度討伐したら、群れがその土地から離れるから、時々こうやって依頼が出る。」

「ふむ。」

「でも、外敵から身を守るのにもあの牙は使うから、用心しないと牙で串刺しになるからね。」

ここのモンスターは刺すの好きだな。
こう、噛み千切るとか、切り裂くとか、磨り潰すとか他にも牙の使い様がありそうなものを。
刺すの一択とは。

「牙を取り敢えずブチ折ったらいい?」

私の手刀で両断だ。
・・・いや、それより首ごと切り落とせば血抜きにもなるし、後々の手間も省けるのでは無かろうか。

「首切り落とした方がいいよね。なら、風の魔法を使おうか・・・。」

鎌鼬の様な感じでスパッと切り落とすか、竜巻の様な渦で捩じ切るか、はたまた。

「手でもイケるか?」

私は自分の手を見る。
牙を両断出来るのなら、可能だ。

う~ん、どうしようか。


「・・・な、なぁ、ミリアムさん、走りながら何してんだ?」

「ん?う~ん?多分だけどイメージトレーニングじゃないか?手刀で首を切り落とすのにはどの位の速さで振り下ろせば良いかとか計算したりとか。」

「・・・・・・。お前の居た世界の女って皆、あんな感じだったのか?」

「え?いや、あの人は少し・・・、大分変わり者の部類だよ。時々、いや結構な頻度で本当に女性かなぁと思う事あるし。」


ぼそぼそと内緒話をしているが、聞こえているのだよ。
ま、聞こえているけど別にそれに対して反論は無いがな。

ただ、こんな美少女の外身なのに思考がどんどん物騒になっていくのは忍びないなぁと申し訳なくなる。
そろそろ年齢規制もかかりそうだよなぁ~、私の脳内自主規制だらけだもん。

「厨二っぽく技名言いながら切り込むのはどうだろうか。
気持ち悪いか、いや、寧ろ開き直ってやった方が逆に良いのか?」

「なぁ、」

「技名言うにしても、どんなのが良いのか。
初めての試みだもんな。
すごい緊張する・・・!」

「なぁ、って。」

「何とか斬!とか、影的なの付けるとか?」

「お、おい!!ミリアムさん!!」

何だよ!二人共!人が真剣に手刀の技名考えてるのに!!
というか、二人共遠くない?
何であんなに離れてんの?

ん?何?何指差してんの?後ろ?
振り返ると。

・・・・


あ、真後ろに、牛虎さんが。
大層お怒りに、大興奮状態じゃないですか・・・。

ああ、すんごい前足で地を蹴って、臨戦態勢ってやつですね、分かります。

これデジャヴだな。
あのダンジョンにいた大きい角ウサギと一緒だわ。
こっちの方が数倍威圧感あるけど。

あ、口を大きく開けて、私をその牙で刺すつもりのようですねぇ~。

ぐわぁ!!と私にその牙を向ける。



でも、残念。
その牙は私に届かないのよ。


ガキィンッ!!金属音の様な音の後、宙に舞うのは、牛虎の牙。
一瞬、何が起きたのか分からない様な表情をしたのを見て、同じ反応と笑ってしまった。

そら、そうだわな。
人間の体を貫ける筈なのに、自分の牙が折れているなんて信じられないよな。

本当にこの強化魔法、有能だわ。

「う~ん。まだ技の名前考えてないのになぁ~。」

頭を掻く。
仕方ない。

私は更に強化を掛けた腕を、真横に線を描く様に緩く動かす。



タンッ。

ごとり。

静かな音を立て牛虎の首が落ちる。
我ながら綺麗に切れた。
初めてにしては上出来じゃないか?

誰も褒めてくれないから、自分で自分を褒めてみた。
強いて反省するならば。

「うわぁ、無茶苦茶血が噴き出てるじゃん。」

そう、まるで血が元の頭部を復元するかの如く、大量に噴出している点だ。
血が苦手な方には死亡案件なこの状態をマシにするには、切った瞬間に傷口を焼いてしまうのが良いのか。
というか、まずそれよりも、だ。

私は呑気に言う声の主をジロリと睨む。

「うわぁ、無茶苦茶血が噴き出てるじゃん、じゃねぇ!」

「んえ?」

んえ?なんて可愛い声出しやがって!
大股で近づき胸倉を掴む。

「君ね、自分だけ避難しておいて、私を助けないとは何事かね!?
前もそうだったけど、薄情だとは思わないのか?」

二人で出掛けた時に、スズメバチが私の後ろに飛んでいたらしく、彼は後退りしながら自分の安全を確保した。
その上で『結愛、後ろ。』と告げたのだ。
振り返るわな、見るわな、スズメバチ飛んでるわな、ビビるわな。
その反応を見て、彼は笑っているだけ、そう笑ってるだけだった。
助けようともしないでやんの。

私は虫類は嫌いだ。
嫌いだが、恐怖で嫌いではなく、嫌悪の部類で嫌いなのだ。
だから、普通に昆虫類は触れるし、必要とあらば殺生も出来る。
前世の世界で忌み嫌われたあの黒光りしたGという虫も笑顔で処理できるのだ。
どの職場でもG討伐係を拝命した私は、ヤツが出現するとすぐさま招集がかかった。
そして手近にある堅めの物で全霊の力をヤツにぶつける。
全力を出し過ぎてGが一回転する位に。

彼からは『何もそこまでの力を籠めなくても・・・。』と引かれていた。
何を言うか、あの力を出してこそだ。
あの力のおかげでヤツの内容物を出さずに処理出来るのだ。
途中から如何に綺麗に殺すかの技を磨いていた。

只の自己満足だが。
話が逸れた。

何を考えてたっけ、ああ、虫が嫌いだけど怖くないと言う話。
だが、唯一恐怖する虫が蜂だ。

毒を持つとか恐怖以外の何物でもない。
それを知っていた筈なのに敢えて教えないっていうね、もう力の限り鋭角な肩パンをお見舞いしてやったよ。


今回は別に毒性のあるモンスターでも無いし、単に牙で刺される(ああ、蜂も刺すっけな。)だけだから、対処出来たが、セイさんと二人で離れた位置にいるってどういう事だ?

セイさんを見ると、私の思考が分かったのか、首がもげるんじゃないかという位横に振る。

「お、おおお、俺はヤバいって言いました!!だ、だけどデイヴィッドがイケるって言うから・・・・、その。」

「デイヴィッドのイケるは信用ならんと言ったじゃないですか。」

イケる勝率2割、2割も無いか。

「ミ、ミリアムさんだから、俺も大丈夫かなぁ、と思って・・・。ドラゴンも余裕で倒せてたし。」

「まぁ、問題は無かったですね。」

なら!とセイさんの顔に書いてある。

「私が言いたいのは、こんなに可憐な美少女をほったらかして、自分達だけ避難するとはどういう事だ、です。」

「か、可憐・・・・。」

セイさん、何故言葉に詰まっている?

「ミリアム、可憐って言葉の意味知ってる?」

喧嘩売って来たな、デイヴィッド。

「守ってあげたくなる様な可愛らしい様、愛らしい様子。」

ほら、文句ないだろうとふんぞり返る。

「なぁ、セイ。この態度可憐?」

「お、俺に聞くな!!」

何だと?じゃあ、これでどうだ。
首を傾げて、品を作ってみた。

デイヴィッドは何故か吹き出してお腹を抱えて笑う。
セイさんは顔が引き攣っている。

「顔が伴ってない!!無表情でそんなぶりっ子したって、只々怖いだけだって。慣れない事するもんじゃないよ。」

私はスッとデイヴィッドの背後に回り、彼のお腹に腕を回し、そのまま背面へ投げ飛ばした。






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