死にたがりと真の終焉

リグス

文字の大きさ
7 / 8
終章

エゴと運命

しおりを挟む
「なんだ、まだ生きてんの」
気がつくと俺は一面が真っ白に染まった床の上で倒れていた。状況をそこまで理解したところで、俺は目の前で聞こえた声の方へと向く。
俺の頭上には、不服げに顔をしかめるコハクの姿があった。でもその顔は彼女のものではない。いつしか見た男の顔だ。
「・・・またコハクの姿?」
こんな状況でも至って冷静に彼に尋ねた。すると男は一瞬驚いたようになってから、愉快そうに笑い始めた。
「まー気づかれてもおかしくないか。てことは、ここが夢の中って事態も既知か?」
「・・・もし、夢の中じゃないとしたら?ここは三途の川の手前?」
「残念ながらオレは死神じゃねぇ。でも悪魔と呼ぶには正しい。だからここは悪夢の底とでも呼ぶべきだな」
「じゃあ、この前のも悪夢なんだね」
「そ。だからこそ非現実的な理由を盾にしてオマエを殺せたのに、あと一歩の手前のとこで・・・」
また不満そうになってブツブツと呟く男に、俺は立ち上がって大きく首を横に振ってみせた。
「いや、あんたはきっとその時じゃ俺を殺せはしなかったよ」
「何でだよ」
「俺は簡単には死なないから」
答えると、蔑んだ瞳をして彼が吹き出した。
「今更恐れを成したのかよ。オマエも結局嘘っぱちの甘々ちゃんだったわけ」
以前はあまり長く見られなかった彼の表情を改めて見ると、思わず怯んでしまいそうな程に狂気に圧を帯びていた。あの因縁の相手二人の方がまだ僅かに可愛く思える。
それでも何故か対等にこの男と話せる自信が、俺にはあった。
「違うよ。ちゃんと聞いて。知ってるんだろうけど俺、死にたいくせにやたらと生命力があるんだ。叩いても落ちても焼かれても死なない。今までから今日までずっと失敗続きなのに、そんな曖昧で生半可なやり方でいきなり死ぬわけがない」
この男は俺という人間を知っているらしい。どういう理由なのかは定かではないが、恐らくその惨状も彼には全てお見通しなのだ。
それでもあの時俺を殺そうとしたのは彼の甘い対応だった。善意で自殺を手伝ったというのか、はたまた己の欲を満たしたかっただけか、いずれにせよそれは無駄を押し付けただけに終わるのは確定だった。
「もしかしたら生命力なんて関係無かったのかもしれない。単に自殺に必要な覚悟や犠牲が足りなかったんだよ。それを知らなかっただけ」
この男は既に自殺の為の犠牲というものを弁えていたのだろうが、その犠牲の対象が不足であった事に彼も気づかなかったのだ。
「そんなに言うって事は、今はその覚悟や犠牲やらを手にしてるんだろうな?」
「相応のものはある。・・・けど、」
「けど?」
夢の中なのに、まるで現実のように脳裏に鮮明な映像が次々と暗転していく。
そしてある一つの人物の顔が浮かんで止まった。
「その対象を、希望を、犠牲にしてしまうのが怖い」
あの駅での時、確かに死の決意を胸に彼らへ立ち向かった。
でもそれは決意だけで、希望を捨てたわけではない。
俺が行ったのは希望を救い、ステータスを整え直しただけ。後悔はしていない。寧ろこれはこれでピリオドを打てば良いのだ。
ただ、それが更に試練を肥大させる事態を生み出してしまった。
「例のあの男だろ。ついにそいつの情に絆されたか」
「絆されたんじゃない。これは本心が言ってる事だ」
何も無い空間から吹いた風が、轟々と唸り声を上げて辺りを揺らし始めた。
それに伴って床の白がゆっくりと動き出した。どうやら雲だったらしい。
男が目を潜ませて、「ふーん」と呟いた。
「オマエはもうそいつが寝返る可能性があるとは考えないんだな」
「考えても仕方なくなったんだ。ほら」
俺は男に少しだけ笑いかけた。
それを見た男が呆れたようにため息を吐き、腕を組んだ。
「情けないこったな。よりによってこんな面倒なやり方を選ぶなんてよ。・・・でも怖いっていってもよ、北沢君。そいつを捨てなきゃ望みは一生叶わねぇぞ。死ぬなと言われても、そいつがオマエの人生を保証してくれんじゃねぇんだ。ずっと仲良しこよしってのも望んじゃいねぇ。もしそいつがお前を本気で友達だと思っていても、所詮はただのお友達って枠。そんな関係なんざその気になればいつだって壊せんだからな」
分かっている。それが人だ。どれだけ善良であろうとも、今ある現実を過去になっていく毎に塵へと変えるという行動は避けられないのだ。
そう分かっていながら、それが高峰にも当てはまると思うと、信じられないと疑いながらもふと隙をつけば一気に沼の底に落ちていきそうな極限の気分に陥りそうになる。
あれだけの事があったのに、高峰が呆気なく僕を忘れていくなんて想像上手くつかない。
高峰は俺が死んだら悲しんでくれるのだろう。
そしてその後散々に乱された感情が彼の心をしっかり蝕み、一生のトラウマになってしまうのかと、そこまで遂に考えて心が独りでに疼き始める。
言葉を失いかけた俺を見兼ねた男が更に囁きかけた。
「オマエはすぐ目の前の未来だけに感情を寄せているんだろ。だからそこまで渋るんだよ。言ってんだろ、その未来はそいつの過去としていずれ消える。トラウマになると思ってる?馬鹿だな、それはほんの瞬間だけだって。友達たって、たった半年くらいの付き合いなんだろ?オマエに何の思い入れがあるってんだ。そんな短ぇ記憶の奴の存在を誰が一生覚えてるわけ。考えるだけ馬鹿らしいって思わねぇの」 
男がはっ、と鼻で笑いながら俺の胸の辺りに触れて、そして、強く突き飛ばした。 
「・・・っ!」
俺の足元を通っていた雲が体重をかけられてぶわりと散った。再び男の姿が大きく立ち塞がり、同時に彼に触れられた胸がじくじくと痛みを訴え始めた。
そのせいか分からないが、先程のようにすぐに立ち上がる事が出来なかった。痛む度にどんどん身体が石のように重くなっていき、座っているのがやっととなってしまった。
彼の手によって、醜悪な真実が知らしめられようとしている。
認めたくない。それが確かな気持ちだ。
しかし、それは自らの身を滅ぼし生き地獄を決意させているという表れでもある。
高峰は家族ではない。
所詮の友達。一時的な関係。そんな間柄に大した記憶など残る筈がない。
彼の人生にはすぐ側に夢も希望も溢れている。そこに介入するのは遥彼方の未来のみ。言い方を悪く向ければ、古く腐ったものは次々抹消されていくという事。
俺はいずれ彼に捨てられる。裏切られる。
最も恐れている事だった。だからこそ人間関係を作るというのを拒んできたのに、それが一番最悪な形で起きてしまうだなんて、酷すぎる。
そう思った次には、脳内に浮かんだ高峰のシルエットが、突然赤い牙をこちらに向けてきた。
死ぬなと言われ流された涙がプラスチックに変わって、ボトリと落ちて雲に溶けて消えた。
高峰という闇が迫り、咄嗟に頭を抱えた。
これが高峰の正体なのだろうか?
俺は信じ過ぎているのだろうか?
所詮と名高いこの関係を?
彼のシルエットが不意に俺に背を向けた。
その手に一塊の星を握り締め、静かにその場を離れていく。
──ああ。離れていかないで。
もう少しだけでも、隣にいてよ。
取り残された俺が進める未来などない。
その上、俺はその瞬間から望みさえも叶わなくなってしまう。
大王に舌を抜かれるより、血の釜で茹でられるより、遥かに苦痛な、正に本物の地獄だ。
それならばやられるより先に、彼を裏切って颯爽と世を去るのがベスト。この男が言ってる事は、悪魔のようで悪魔ではない。ただただ、妥当の答えなのだ。
─────だけど。
それでもどうしても、彼への慈悲は消えない。
どうしても、悲しませたくない。
ただの一瞬の記憶だとしても、その瞬間があるだけで俺はどれほど辛いのだろう。
俺は顔を上げて、努めて穏やかに言った。
「・・・それでも、今の俺には出来ない」
馬鹿らしいとは分かっている。だがこの心境はその馬鹿らしさに暖まりきっていた。
「・・・諦めた方が良いのかな」
初めてそんな弱音が力無く漏れ出た。
こんな事を言えばまたこの男が同じ話を繰り出して延々と時間だけが過ぎていくのだろう。
俺はどうすれば良い?
どの道を進めば皆が納得する?
永い永いジレンマに臓器ごと潰されそうになる。
このまま消えてしまいたい、とも思うのも結局自分の首を生きたまま締め上げるだけだった。
小さくなって悶える俺の真上では、男が黙ったまま。ただ、先程まであった荒みはいつの間にか消えていた。辺りの雲も今は大人しく動いている。
「・・・オマエさ」
男が不意にそう口を開き、しゃがんで俺と同じ目線になった。
「ちょいと面白ぇ未来が見えるって言ったら、興味湧くか?」
「え?」
素っ頓狂になって顔を上げる。
「面白い・・・未来?」
男の顔は何やら深刻げに別の方向を向いていた。
面白いといっても、彼が笑っていなくとも、良からぬ事ではないというのは間違いないだろう。
興味より恐怖が湧いてくる。それでも今は彼に縋る想いでいっぱいだった。
「これはある意味合法的かもしれねぇぞ。まぁ、だからってアンタの理想通りにはいかねぇだろうけど」
「どういう事だよ。それって、何・・・?」
男が息を吐いて、若干睨むようにして俺に視線を合わせてきた。
そして、彼にこう告げられた。 

「─────近い内に、高峰は死ぬ」

────え?
高峰が、死ぬ?

・・・そんな筈ない。
第一あってはならない。
有り得ない。絶対そんな事有り得ない!
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!

脳はもはや限界を超えてすっかり気が狂っているようだった。
思いも寄らぬ速さで立ち上がって、男に噛み付いた。
「あんた、そんなデタラメを俺に吐いて楽しいかよ!」
「バーカ。この状況でデタラメ言う鬼畜じゃねーわ。死相が見えんだよ、死相。幽霊になるとこういうのわりと見えんだよ。んで、何となく高峰を見たら、強い反応が出たわけ」
「ふざけんじゃねぇよ!何が死相だよ!何となくって何だよ!それを面白い未来って、そんな事を平気で言えるだなんて、お前どうかしてるんじゃないのか!?」
「どうかしてるっての。どうかしてるから、高峰が死ぬだなんて言えるんだろうがよ」
ピシャリと一切の躊躇無い残酷な宣告と返答に、もはや自分に向けた言葉すら失ってしまう。
男は全く楽しんでいるような素振りを見せない。彼が幽霊だと初めて知ったばかりなのに、その佇まいは単純に冷酷な一般人のようにも見れる。だからこそ、その信憑性の重みを身体全体に押し付ける事は至って容易な事になってしまった。
「何故・・・なんで、高峰が死ななきゃならないんだよ・・・っ」
それが未来の正体だなんて。
納得がいく筈がない。
もはや形容するのも困難な仕打ちだ。
「面白いわけない・・・こんなの・・・」
あぁ、自分は今どんな顔をしているだろう。
顔を覆う自分の手から伝わるのはぐしゃぐしゃでしなしなな感触だけ。だがもはやその感触すら失いつつある。
その代わりに新たに出たのは、どこかに消えた筈の脳内の高峰の、死体。
その、血溜まりが、
───────!!
考えたくない・・・考えたくなんて。
俺は顔を上げて、悪魔に縋った。
「なぁ、何とかならないのか!?あいつの未来を変える方法は・・・」
すると、男が冷静に俺の目をじっと見つめた。
「それはオマエが一番知ってるんじゃねーの」
そんな答えが返ってきて、「え」と思わず小さく声を上げた。
「オマエはアイツを生かしたい。だがその為にはヤツの代わりの命が必要。死の運命ってのはどうにも固定されているもんで、その日に還る魂の数は決まってるもんなんだってな」
男の悠々とした説明を最後まで聞くか否か、俺は本能のままはっきりと言った。
「それなら俺が死ぬ。運命が何だろうが関係無い」
彼の為に死ねるのなら本望だと確かな意思がここにある。
彼が生きて、そして俺がこの世を去れる。
高峰は俺の為に死ぬなと言った。
だけど、ごめん。
俺が死ななければ、他に誰があんたの為に死ぬという?
これは使命と幸福と、ほんの少しの罪滅ぼし。
「俺はあいつを救う為に自殺する。どんな死に方だろうと構わない」
そう宣言し、この言葉に置いた全ての重心を身体へ取り込んだ。
その刹那、周囲の空気が変わった気がした。
あれだけ唸っていた雲が動きを遅めて、穏やかに空中に浮かんでいた。
世界が急に見えてくるようだった。目の前で落ち着きを払っている男の表情がよりくっきりと映し出されているように感じた。
「これで未来は変えられるんだよな」
「そうだ。その状況でアンタがその通り犠牲になればな。まぁ、オマエの事だから、どんなシチュエーションだろうとも躊躇わずやり遂げてしまうだろうけどよ」
「あんた、もう知ってるのか?どんな風にそれが訪れるかを」
訊くと、男は楽しげに微笑み、
「当然」
と応えた。


「それはな───────────」




事実を知った俺は、驚愕しながら目を覚ました。



        ✣✣✣✣✣✣

以来、あの夢は現実に戻ってきている事を認知していても尚、まるで昨日の出来事であったかのようにその全貌を明瞭に脳に記憶されたようだった。
勉強やら食事をしていても、ふとすると男が告げた言葉が突然浮かんで手が止まるし、何より高峰といる時は、ずっとあの不吉の告知が離れないのだ。
『高峰は近い内に死ぬ。』
その近い内という抽象的な命日は、もうそう遠くない。正直こうして通常通りに生き逃れているわけにはいかずに、日々焦燥と恐怖と僅かな不審が募っていく。
この今踏んでる土の感触さえも、目前に海か谷かの底を携える崖のように感じる。
一つ一つが近くて重苦しい。感情が忙しなく切り替わって、目眩まで起こしそうだった。
「ハルやん、ハルやん。大丈夫?」
コハクが傍に来て、俺に声をかけてきた。
「こんな寒いのに縁側で座って。そんな事しても死なないよ」
「別に死ぬ為にいるんじゃないよ。・・・ちょっと考え事」
縁側にいるのはそれが大半で、同時に気晴らしというか、寒さで気を紛らわす為でもある。
たかが寒さで簡単に気が紛れれば良いのだが、やはり難しいようで、不意に触れた手はピリピリと痺れ、悴んでいるだけだった。
「考え事って、あの事だよね」
コハクが横に腰を下ろして、声を若干低くした。
あの夢と予言の件は既にコハクに伝えていた。本当は言いたくなかったのだが、何故かコハク自身が見据えていたかのように「夢を見たでしょう」と詰め寄ってきたのだ。
それ以来、というより、そう詰め寄った瞬間からコハクは訝しげな表情ばかり浮かべるようになっていた。今だって眉を歪めて少し不機嫌気味だった。
コハクとあの男には何かしらの縁があるのかもしれない。元より、男はコハクの身体を装って出てくるばかりだ。どういう事なのかは分からないけれども、恐らくコハク自身にとって彼は好意のある人物ではないのだろう。
「ハルやんはさ、本当に高峰クンが死ぬって信じてるの?」
「え?」
突然そう訊かれて、すぐには答えられなかった。

「あんな男のくだらない予言。確かに幽霊には死相が見える時はあるけど、アイツは信用ならない。アイツは悪霊だよ。人を嘘で脅して殺そうとしてる可能性もあるんだよ」
訴えかけるようにそう説得するコハク。
彼女の言葉にも一理あるのは確かだ。
ヤツが本当にそんな死相を見たのか、本当にその未来が訪れるのか。
正直、不安の隙間にそんな疑問はあった。
デマを吹きかけられて、でも俺の事だから死なずに何も起こらずに終わってしまうという確率も十分に高い。
それはそれで、高峰が死なないと安堵しながら自分に対する残念な気持ちだけが残るだけだから良い。
だけど、
もし、それが本当だとしたら?
ヘマをして、高峰をなすがままに殺してしまったら?
頭を垂れて、おもむろに首を横に振った。
「それでも・・・信じなきゃいけない。例え嘘であっても、それでも高峰を死なせちゃいけないから・・・覚悟だけは決めないと」
冷たい右手を握り、胸に宛てがう。
緊迫感と恐怖心。死という概念と俺という物体が巡り合う事の無かった感情。
「・・・怖くないの?そんな宣告されて」
「・・・・・・。怖くないって言ったら、嘘になる。だから俺はあともう一度だけ、死の恐怖を捨てないといけないんだ」
「捨てるのは・・・それだけじゃないよね?」
コハクの問いに、俺は少し泣きそうになりながら笑って一言答える。
「分かってる」
それは何物にも変えられない程の苦しい選択。
そして利己的で強欲な行動で、きっとこれは正義ではない───最低な裏切りなのだろう。
生きるという道以外に、俺は彼の為に何をしてやれるのだろうか?
朦朧とし過ぎて、分からなくなる。
「君がいなくなっちゃった後は、私はどうしようかね」
目を塞ぐ俺の横で、ふとコハクがそんな事を呟いた。
「コハクは成仏・・・出来ないんだっけ」
「そうね。今ある問題を片付ければ良いんだろうけど、簡単にはいかないわけ。もしかしたら、一生現世を彷徨う事になるのかもしれないよ」
さらさらと寂しげに言うコハク。コハクは今こうして共犯者になってくれているけれど、彼女には背負い続ける問題があるのだ。何だとは聞けないけれども、これではこちらばかり得を積んでいるようで不公平だ。それなら無理にでも聞き出せば、なんてデリカシーの無い行為など俺には出来ない。相手がいくら陽気な性格といえど、その心にどれほどの悩みを抱えているかなんて分からない。そしてそれを理解し解決に導ける他人もそうそういない。その故に内側に隠しておくのだから。
でも、せめて一時だけでも、そんな苦悩から逃れるように何とかしてやりたいとは思う。
高峰のようにそこまで積極的にはなれないけれど、何かしら出来る事があるのかもしれないと、考える。
「俺が・・・何か出来る事はないのかな」
「え?」
コハクが一瞬驚いたように目をぱちくりとさせた。
それからすぐに大人の微笑みを浮かべた。「大丈夫」だと言われるのだと思って、心の中で早くもため息を吐いたのだが、コハクの答えはこうだった。
「なら、君が願いを叶える瞬間をこの目でちゃんと見させてほしいな」
「願いを?」
「その死の宣告が本当だと信じてみるからさ、その瞬間が来た時に、笑っていてほしいの。人生で最初で最後の、最高の笑顔をね。泣いてでも良い。それを私なりの思い出にするから」
「それで良いのか・・・?」
「実のところ、既にこの時がもう思い出なんだけどね、私は君が心から満足して、嬉しそうな様が見たいんだよ。そうじゃないとこっちも協力のしがいがないってもんだ」
「・・・なるほどな」
「それ以外なら何にもいらないからね」
それならきっと出来るかもしれない。
少なくとも、自分が清々しく命を散らせる意を持ったなら。
その為に、俺が何か行動を起こさなければ。


突然、ガタンという音と共に車内が揺れて、ガバリと顔を上げた。
いつもなら気にもならない、当たり前の揺れなのに、ボケっとしていたせいなのか過剰に身体が反応してしまったらしい。
車内は暖房と人混みの密度で十分に暖まっていた。だからそこまで気にしなくて良いのだろうが、腹や背中にびっしり汗をかいていた。思わず水分を求めたくなるが、生憎お茶は買っていなかった。今日に限って財布を持ってくるのを忘れたし、そもそも作るのも忘れていた。
そうなるとやむを得ない。耐えるのは得意だから、今日くらい水分が無くても平気だろう。
隣では高峰が鞄を枕代わりにして居眠りをしていた。
昨日は遅くまで学校で先生の手伝いをしていたらしい。生徒会に入っているわけではないのにそこまで身を粉にして学校に奉仕するなんて彼らしい事だ。そのせいで随分お疲れモードのようだけど。
汽車はもうじき目的地に着くようだ。周りも降りる準備を始めている。やっとこの熱気から解放されると肩を撫で下ろしてから、おやすみ中の所の高峰を起こした。
「そろそろ着くよ。起きて」
むくりと気だるそうに高峰が顔を上げる。
眠そうにしょぼしょぼに潰れた目が此方に定まって、そのまま呆然とされる。
「寝てたのか、俺」
「ん。俺も多分寝てた。でもそっちの方がかなり深く眠ってたみたいだよ」
「あぁ、・・・昨日あまり寝れなかったからかもしれんな」
「ご苦労なこったね。俺だったら夜まで学校にいる事すら出来ないのに」
「何だか困ってるみたいだったからな。あの先生、今年入ってきたばかりの新任らしい。まだ校舎の事も分からなかったみたいだし、誰かが助けてやらないと難しい状況だったんだ」
「もうすぐ一年経つのに、まだ校舎すら分からないんだね」
いくら新任といえども時期はもう冬を迎えている。一年生でもこれくらいになれば大抵の場所は把握しているだろうし、学校自体そこまで広くないというのに、未だに不慣れを繰り返してるだなんてその先生は余程の方向音痴なのだろう。
「先生になって初めての学校だから、仕事を覚えるだけで精一杯なんだと思うぞ。あの人は一年生の担任もあるし、校内を全て覚える余裕がないんだろう」
「最初は、そんなもんなのかね」
「先生を見ていればな。分かるぞ」
汽車が到着し、一斉に乗客達が郡を成して出て行く。人通りが減ったところで自分達も出て、冷たい空気に浸される。
ざわつくホームを歩きながら話は続く。
「高峰もいずれはそんな風になるのかな」
「恐らくな。学校であろうと病院であろうと、不慣れな環境に振り回されながら人の相手をするというには変わりない。きっと職場の人に迷惑をかける事になるんだろうな」
高峰の夢は精神科の看護師らしい。彼を知る人物なら満場一致に納得する進路先。医師でなく看護師という点については、この方がより患者の傍にいて支えられるからだと。何とも彼らしい理由である。
既に特定の大学に狙いを定めており、それ故かここの所の彼の成績はぐんぐんと上がっているようだった。
まるでいくつも粒子をかき集めて大きく実った星のように、キラキラとしていて。
高峰はその夢の話を度々俺にしていて、その勢いに圧倒されながらその後に必ずといって良い程言われる言葉があった。
それは俺の進路についてだ。きっとまたこの会話を期に何か言い出すのだろうかと考えていると、予想が半々の質問が投げかけられた。
「お前も何なら看護師になるか?」
俺は冗談として受け流そうと努める。
「俺が?止してよ、俺は永遠に患者側だって。患者が患者を看護しても逆効果でしょうよ」
「それは分からないだろう。患者側だからこその気持ちは必要不可欠な存在なんだぞ。医師や看護師の独り善がりな判断だけで精神を整えられる筈が無い」
「そうなんだろうけど、それでも俺には無理だよ。俺は誰かに希望を与えられるような力は持ってないの。半年も連れ添ったあんたも知ってるだろ」
患者は疎か、自分はこの目の前の友人にすら後に希望どころではない所業を行う事になる。そんな奴にどうして人助けが出来ように。何とも厚かましくて疎ましい。
俺の返答に、高峰は些か不満げな表情でポソリと言った。
「・・・まぁ無理強いはしないが」
「俺の事は良いって、いつも言ってるじゃんかよ。何回言っても俺の進路がぱっぱと決まるわけがないんだから」
「確かにまだ余地はあるが…けどもし大学なら早々に勉強始めないとならないんだぞ」
「いざとなれば専門行くって」
さっさとこの話を断ち切ろうと適当に流そうとするが、それは高峰の顔をますます曇らせるだけだった。
「もっと真剣に考えろ。でないとこっちが心配になってくる」
「もう分かった、分かったから。ちゃーんと考えますから!」
こっちはもっとアンタが心配だってのに。
それでも高峰はまだ腑に落ちないと言ったようで、遂にはきつい一押しを繰り出された。
「言っとくが天国、あるいは地獄なんて言えば冗談でもただじゃ済まないと思えよ」
「・・・・・・。分かってるってば」
せっかく言わないようにしてたのに。
その二択なら、きっと天国だなんて贅沢希望しないだろうな。
そう心で思いながら、無責任な返事をしておいた。
それからして、彼との別件をふと思い出し、刹那足取りに重りが乗せられた。
「そうだ、この前言ってた予定組めそうだよ」
すると、高峰の表情がおもむろに明るくなっていった。
「本当か。良かった」
遡ること三日前。放課後の帰り道に高峰が突然・・・いや、必然に、俺を遊びに誘ってきた。遊びといってもスケールはごくごく質素な、市外の大型ショッピングモールに出かけるだけというものだが、大人しい質の自分達にはこれくらいが丁度良い。それに、何よりこの平凡なチョイスが余計に心に来てしまって、愛おしく感じてしまうのだ。
三日の時間を使って、頭を抱え、それ以外に終止を付けなければならない事も考えて。ある意味、これは決意の表れとなるのかもしれない。
この時点で断ってしまうという選択肢も勿論あった。本来ならこれが正当な選択に見えるけれど、断っても全くの無意味なのだ。未来は何も変わらない。本人の意思とは裏腹に、酷に世界の運命はシナリオを押し通す。
俺はその頑固な暴政の一部を覆す。そして、叶える。
俺がそんな意を膨張させている横で、高峰は楽しそうに話を進めていた。
「モールで何をしようか。映画や、本屋にも行きたいな」
そんな彼から一歩歩数を遅らせて、飛び出すように横に並んでから肩をとん、と叩いた。
「ね。モールも良いけど、その近くに大型のゲームセンターが出来たの、知ってるかい?」
すると、「え?」と目を大きくさせて高峰が振り返った。
「本当か?」
「マジ。高峰、ゲームやるって前言ってたよね。ああいうの出来るっけ」
「ああ。街の方に出かけた時はいつもやるぞ。そうか、そんなものが出来たのか。知らなかった」
「おっ、良かった。・・・実はさ、俺そういうのは全然でさ。もし行きたければ、やり方教えてくれるかな。太鼓とか、ガンシューティングとか。やってみたいんだよね」
「勿論行きたい。いいぞ、ガッツリ教えてやる。でも意外だな。俺よりお前の方がやり込んでそうなのに」
「君に言われてもなぁ。俺はそもそも外に出ないんだよ。お家の中でガチャガチャやってるばっかだったね」
「ははっ、まぁお前らしいな。・・・意外と言ったら、お前から誘われる事も珍しいな。何か明るい兆しでもあったか?」
「んー?別にそういうんじゃないけど。ただせっかく遊びに行くならって思っただけ」
そう答えた俺を見る高峰は非常に機嫌が良さそうだった。何というか、ニコニコで温厚な、性格も変わってると言っても過言ではない状態。
「なら有難く。やるからにはトコトンやるぞ」
「え~、初心者にはお手柔らかにしてよ」
良かった。高峰は乗り気だ。
心底安心しながら、軽快に話にテンポを付ける。
「じゃ、その時を楽しみに、だね」
「ああ。そうだ、せっかくなら集合時間をもっと早めるか。そうすれば長く遊べるぞ。店が広いならそれほど沢山設置されてるのだろう。ならこれは決定事項か・・・」
突然早口になってブツブツと呟き始めた高峰に、少し口角が引いた。
「・・・思いの外乗り気だったんだね」
いずれにせよ、高峰が一先ず快諾してくれたからホッとした。

これで一つ準備が終わった。そう思うと、もはやどういう顔をしていれば良いのか分からなくなってしまった。
・・・さあ、当日まで、あと二週間。




今年は例年そのまま、相も変わらず寒い日が続いている。それでも感覚がおかしい自分は今日やっと初めてコートを着て外に出た。去年じいちゃんが古着屋で買ってきた、紺色のダッフルコート。その時には、というより、元より寒いから厚着するという習慣があまり無かった為、一回も着ることは無かったのだ。
それを急に着るのは、何も寒いからというのではない。それを超えるような深い意味だってある訳ではないのだけど、何故だか着ていく方が良いと無責任な勘が言った。それだけ。
一人で出かけるつもりだったのだが、コハクがついて行くとねだって、結局二人で行く事になった。
これまで学校までの道しか記憶していなかった足も流石に覚えた、全く別の道筋を進む。今日は休日だから、近くで止まるバスを利用する。手に土産を持って、目的地が見えてくるのを確認すると、無性に目を逸らしたくなってきた。
腕にぶら下げた土産の袋をカサカサ言わせながら中に入り、最終地点まで着くと、心穏やかにドアを開ける。
「よう来たな。ご苦労さん」
窓が開け放たれ、そこから流れる優しい風がカーテンを泳がせている。それを背景に、テレビを観ていたじいちゃんが此方に振り返った。病人のくせして俺と違って目がキラキラと光を潤ませている。皮肉にも自宅にいる時よりも幸せに包まれているように見えた。
彼を目の前にして、ドアを閉めて、ちょっとばかし笑ってみせる。
「毎度毎度手荷物持って見舞いに来させる孫を、ちょっとは褒めてくれても良いんじゃないの」
そう発した俺に驚いたのか、じいちゃんが目をぱちくりとさせて言った。
「どうしたんだ、急に」
「まぁ、要はじいちゃんへの不満、ってとこだね」
「お、おお・・・すまんな、気が利かずに。ありがとう、ありがとう。お前はよくやってくれているよ」
強制に押し出された故の言葉なのだろうけど、言っただけマシ。それだけでスッキリ。

それから俺は手土産の袋を彼に直接差し出す。
「はい、週刊誌。それと、駅前の和菓子屋の黒糖まんじゅう」
「まんじゅうも?わざわざ買ってきてくれたのか」
「駅に用があったからね。ついでだよ、ついで」
というのは嘘で、じいちゃんが言った事が正しい。あまり残存していないなけなしの小遣いを出して買ったもの。といっても老人一人分だからそこまで量を買ったと膨張出来はしないけれども。
「そうか。すまんな、ありがとう」
「いえいえ」
近くにある椅子を引き寄せて座る。暖房がしっかり施されている部屋だが、今は換気で弱まっていた。お茶で暖を取ろうとして、ふとじいちゃんを見ると、じいちゃんが俺の顔をじっと見つめていた。目が合ったままお互い黙っている。茶を飲む手を止めて、彼に訊いた。
「何?何かついてる?」
じいちゃんは穏やかな微笑を浮かべている。
「春哉は、何だか暖かくなったな」
「暖かく?・・・どういう事」
「今の春哉の目は、お日様のように煌めいているんだよ。今までに見た事のない、そう・・・人生をちゃんと楽しんでいるような」
俺が思っている事をそのままそっくりと言われてしまい、少し困った。
人生をちゃんと、楽しんでいる。
否定したいところではあるけど、確かにそう。
俺は今は、楽しい世界にいる。
友人がいて、好きな事を言って、人や物に対する余裕が出来て。
そして、何より願いが叶うと確信している。
だがそれをひけらかしはしない。
あくまで、自分だけに留めておく。
「そう?窓辺にいるから光ってみえるんじゃないのかな」
「いいや、違うぞ。春哉、お前は変化している。その朗らかな喋り方、微笑みは、かつてのお前に無かったものだ。高校を進級して、高峰君と仲良くするようになってから、明るい方向に進んでいっているんだろうな」
突然親のように俺の事を語るじいちゃんに若干気が迷って、具現化させる反応に困ってしまった。
「・・・・・・あー・・・そう」
明るい方向、だって。
言われて嫌ではないけど、こっちからすれば大層皮肉なものだ。
「おお、そういえば今日は高峰君は一緒じゃないんだな」
また突然のカーブで高峰の話になって、耳まで変な方向に曲がりそうになる。
「そう毎回連れて来られないよ。ほんとじいちゃんは高峰が好きだよね」
「彼は本当に良い子だ。誠実で優しく、まるで出来上がった人間だよ」
高峰の事は、すんなり褒めるのにな。
別に嫉妬しているわけではなく、こんなのただ虚像の血縁を再確認出来る言葉に過ぎない。
「でもな、理由はそれだけじゃない。お前を唯一笑顔に出来るのは彼なんだ。わしじゃあ今のようにお前に不満ばかり与えるだけで、楽しい思い出もろくに作れなかった。それを今、高峰君がしてくれているのだろう?彼には本当に感謝してもしきれん」
何だか彼の調子が良すぎるせいか、些か苛立ちが顔に出そうになった。
「・・・なんで高峰とのそれを、じいちゃんが知ったかぶって言ってんだよ」
「おや、間違っているかな?」
「・・・間違っちゃ、ないけど」
人の事は言えないだろうけど、今日のじいちゃんは妙に機嫌が良すぎるし、やたらと粘着質に親たらしい発言をする。持ってきたまんじゅうのせいか、来る前にまた何か楽しい出来事でもあったか。今日はあれこれ言ってやろうとしているのに、これでは調子が狂う。彼には見えないコハクも、彼のコンディションに対し表情に困っているようだった。コハクも大体、俺と身内の距離感だとかいうものは把握している。だからあんな発言をしているのが不思議で仕方ないのだろう。
「だからこれからも仲良くやりなさい。もしかしたら、彼がお前の一番の友達になるかもしれんのだからな」
俺はじいちゃんから目を逸らして、やや反抗的に答えた。
「分かってるっての。言われなくても」
今の発言で小言を言われるかと思ったが、じいちゃんはやはりニコニコと笑顔を保ったままだった。
これでは俺の思惑と外れてしまう。今日は遠慮なく過去に無かった自然な方な喋り方と言葉で話そうと思って、何なら機嫌の一つ二つ悪くさせてやろうと考えていたのに。
─────何故なら、今回でじいちゃんと会うのは最後になるから。 
最後になるから、今日くらい好きに喋ったってバチは当たらないだろうと思って。
「進路に向けた勉強は進んでるか?」
げっ、と眉をひそめる。
「まぁ・・・まぁ、うん。進んでる」
「そうか?その顔だとあまりやっとらんのだろ?」
「・・・。何さ、お説教?」
「そうじゃなくて、まだ二年生だし、切羽詰まって勉強しなくても良いけど、一歩先くらいは進めておきなさい、と言いたいだけだ」
「・・・はいはい。考えとくよ」
「春哉は将来、何になるんだろうなぁ。あの大学だと栄養士や教師、福祉士になれるそうだが・・・まだ決まってないのだろ?」
「あの大学に行ったからってどれかになるわけじゃないよ。それに、それは進学してから決めるから」
「そうか。でも楽しみだな。まだ早いだろうが、大学生活楽しめよ」
「ほんとに気が早いね・・・まぁ、そうだね」
まだ受験期はおろか、三年生にもなってないというのに。
・・・いや、そもそもその時期には俺はもうこの世にいないのだけど。
どうせならこの場で言おうと口が走りそうになったが、それは止めた。
どうせ信じはしないし、わざわざ伝えて得をする事はない。
こっちがこれだけ不機嫌を散らしてるのにこのご機嫌さなのだから、このままでいさせてやるのがベターだ。
普段ならこれくらいの程度の談話でやり取りは終了するのだが、お互いに休息の間を空けている途中でじいちゃんが割ってこんな事を切り出した。
「・・・なぁ、春哉」
「今度は何?」
「お前は、本当はれっきとした両親の元で育ちたかったんだろう」
「は?いや・・・別に」
いきなり何を言い出すのだろう。こんな話、あれ以来今までほとんどして来なかったのに。
「正直に言いなさい。今日のお前は、素直に言えるんじゃないか?」
じいちゃんが眉を歪曲させ、苦笑を浮かべる。
やはりこの態度で孫の異様を感じたらしい。それを利用してこんな話を繰り出すだなんて何とも卑怯な行いだ。
だけども、もうこの話を直接面と向かってするのも一生無くなる。
コハクの方をチラリと見ると、コハクはいつの間にか腕を組んで眠っていた。・・・というより、寝たふりをしているのだろう。立ち去らないという事は、デリケートな話でも私も混ぜていただきますという意思なのかもしれない。まぁ、良いだろう。聞いていても得は無いけど。
俺はじいちゃんにしっかり身体と視線を向けた。
「じいちゃん。正直言ってもね、俺は母親も父親もいらなかった。ってか、そもそも家族の概念が俺には無い。いるいらない、じゃなくて『いない』のが当たり前なのね」
「自分が最初から孫という立場で、育ててるのが祖父母だって、違和感は無かったのか?」
「別に。それに、祖父母ったってあんたらは本物の身内じゃないんだから。違和感どころか普通の感覚も麻痺してるよ」
「そう・・・だよな。それも無理ない。・・・すまないな、せめてわしとばあさんが中年だったら、親のいる感覚を少しでも覚えさせてやれたのに」
「今更言ったって仕方ないじゃん。それにそんなもん無くても、俺はとりあえず生きてんだ。親じゃなくてもちゃんと家庭は成り立ってるんだし」
「・・・わしやばあさんを恨んではいないのか?」
「まさか。なーんとも思っちゃいないね。恨んでなければ、特別好いてるわけでもない。でも絶対恨むべきじゃないのは俺でも分かってる。あんたらがいないと、俺はここまで育つ事はなかったからね」
この本音の奥底の本音は置いておいて、それ以外オブラートの包みの配慮も気にせずに答えていく。
彼らの事は好きじゃない。けど、彼らは俺の本物の死期が来るまでの姿を形付けてくれた。間接的に彼らも俺の望みを叶えてくれるのだ。
「感謝は凄くしてる。だからそこまで負い目を感じられても困るんだよね」
俺がそう言った瞬間、じいちゃんが目を静かに見開いた。
「・・・まさか春哉からそんな言葉をかけられる日が来るなんて」
彼の小さな目が泣きそうに赤くなっていく。
「幻滅した?」
「そんなわけないだろう。嬉しいよ。それに、とても安心した」
ふっ、と消え入りそうなくらい小さな仕草でじいちゃんが笑った。
「お前は昔から無表情でわしらに一切のわがままも文句も言わなかっただろ?やっぱり血の繋がらない家族だから遠慮して全部抑えてるんだってずっと思っていたたんだ。こっちもお前に負担をかけたくなかったから、あれこれ首を突っ込まなかったんだが・・・だけど、いざこうして本音を言われると、嬉しいな。好きじゃないと言われても、親として受け入れられるよ」
「・・・俺に興味が無いわけじゃなくて?」
「無いわけないだろ。お前がわしらを家族と思っていなくとも、わしらはお前をずっと孫であり息子と思っていたよ」
胸の底がぎゅっと強く締まって、その後心地の良いそよ風がそっと巻きついているような感覚に陥った。
どうしようもなく情けなくなって、じいちゃんを直視出来ない。
そんな俺の頭に突然、ぽすりとじいちゃんの手が置かれた。そのままそっと撫でられる。
しわくちゃでむず痒い、不思議と覚えがある感触。
「・・・今更言っても、もう・・・変えられないよ」
「それで良い。春哉、お前はそのままで、自分の成りたい道へお進みなさい。春哉が幸せだと思う道・・・どんな方向でも、わしが背中を押そう」
俺の目をまっすぐに見つめ、じいちゃんはそう告げた。
成りたい道。・・・あぁ、どうして、それが寄りによって。
例えその道が『死』でも、じいちゃんは受け入れてくれるのだろうか?
あぁ、もう、俺は永遠に天国には行けそうにない。
じいちゃんの優しい微笑みが、そよぐカーテンが、冷たい風が。
酷く愛しくて、辛かった。
「・・・・・・ごめん、じいちゃん。こんな孫で、こんな息子で」
「そんなお前が、わしは好きだよ」
じいちゃんが目を細めて俺に両手を広げた。
俺は堪らず立ち上がって、じいちゃんをゆっくり両腕の中に包んだ。
じいちゃんのか弱い手が伸びて、俺の背をゆっくりと摩り、子供をあやすようにポンポンと叩いた。
───彼の気持ちをもっと早く聞けたなら、俺は変わっていたのだろうか。
泣きそうな気持ちをぐっと堪えながら、そんな事を考えて目を閉じた。


「これでまた一つ、捨てるものが増えたね」
帰り道、コハクが老人のように落ち着いた声で俺に言った。
「君には中々リスクが重いみたいだけど、大丈夫?」
あの一部始終をこっそり盗み聞きしていたコハクからの確認のような問いに、迷わず頷いた。
「じいちゃんは俺の望む事を、どんな形でも受け入れてくれるらしい。じいちゃんの事は、捨てる・・・のもそうだけど、同時に証明するんだ。死が、俺の幸福だって事を」
「でもどうやって?何かメッセージでも置いておく?」
「そうだね。世間にも自殺だって認知されたいし、紙にでも書こうかな」
「死人の置き土産、ね。でも何も自殺だって知らせなくても、そのまま事故死として残しとけば良いと思うけどねぇ」
「それじゃ意味無いだろ。俺は『自殺』で死ぬって決めてるんだ。嫌いな物は自分で排除してしまう」
それに、と視線は無意識的に遠くへと飛んだ。
「自殺じゃないと、高峰とじいちゃんに悪いから。じいちゃんにはさっきも言った示しも付けたいし、高峰にも余計な負担を押し付けたくない」
俺の意思がそれ以外に変わる事はない。
「全く、自己中なのか慈悲があるのか分からんね、ハルやんは」
コハクが呆れながらもクスクスと笑った。


この時のタイムリミットは、あと一週間。



               ✣✣✣✣✣✣



「・・・・・・」
特にこうといった理由が見つからぬまま、突如変な時間に目が覚めてしまった。
閉眼していないくせして辺りは闇でしかなくて、冬特有の不気味な静寂と冷えきった空気が世界を制圧していた。エアコンのタイマーが切れたらしい。その冷たさで起きたのだろうか。現に指先や顔は血の抜けるようだ。
・・・、いや、きっとそれじゃない。
手探りでスマホを手にして、時間を確認した。
ブルーライトの覇気の奥に映る時間。
「あぁ、そうか」
無意識にそんな声が出た。
「今日は、」
カチリとスマホを切る。

「───俺の命日」

せっかく今日で眠るのも最後のベッドだが、起き上がって下に降りる。
棚の上のボールペンとコピー用紙を手に取って机に向かう。
まだメッセージ、書いてなかったんだった。


                   ✣✣✣✣✣✣


今日は凄く平和だ。そう、凄く。
快晴で雲もほとんど無い。集合場所のいつもの駅周囲には人がガヤガヤと賑わっていて、どこに行くにも絶好の日和だと言えるだろう。
俺にとっては嬉しいような憎たらしいような、その両方が取っ組み合ってるような気持ちだ。
「今日が雨じゃなくて良かったね」
いつもなら俺の目の前で浮いて話すコハクも、今日は不自然に俺と背を合わせて語っていた。
「うん。でもなんでそんな体勢で喋ってんの」
「今日は高峰クンと二人でお出かけだからね。私は天の声としてお送りしようかなって」
「別に良いのに。どうであってもコハクを連れ回す事にはなったんだから」
「ダメダーメ。これが最期なのにお邪魔するだなんて真似出来ますか。私は一重に影から見守ってるよ」
「・・・まぁ、コハクがそうしたいならそれで良いけど」
「だから気にせずたっぷり遊んできなよ。根本を忘れたり忘れなかったりして、ね」
その言葉に、彼女の方に振り向きつつあった顔をそっと戻した。
「忘れるわけない。だけど、うん。今からは忘れてる。普通の人間になってるよ」
「そうだね、君に限って忘れるなんて事有り得ないか。その意気でね」
辺りで混雑していた人々が続々と改札口の奥へと雪崩れていく。人が減って気分も多少は楽になる。
今朝は早めに家を出て、一瞬だけ寄り道をしてからすぐにここに来て高峰を待っていた。そしてもうじき予定の時間になる。胸がドコドコと音を立てて鳴っている。彼の姿が見えるその瞬間が訪れるまで、家に置いてきた置き手紙と、このカバンに隠したもう一枚のメッセージの事を思った。
家に残した手紙はじいちゃんと亡きばあちゃんに宛てて、仏壇の部屋の机に置いた。二人に伝えたい事は色々あったが、鬱憤はあの日消えてしまったし、かといって思い出話を長々語るなんてのも何だかぎこちない。そもそもそこまで続かせる程の思い出なんて無いのが現実。
だから最後まで自分らしく短く認めた。その文で伝わるが分からないけれど、自分としてはきちんと想いを込めたつもり。
そしてここにある手紙は、言うまでもなく高峰のもの。
彼に関してはじいちゃんよりもっと文で心情を表現しづらかった。身内よりずっと短期だった筈なのに、思い返す記憶の彼は彩度が濃すぎて手に余った。
それに伝えるのはそれだけではないのだ。今日起こる出来事の経緯を納得するように説明しないとならない。だけどあの頑固で責任感の強いあいつは正直どう伝えても完全に納得する事はないだろう。それにこんなのは経緯なんて偽った言い訳にしか聞こえない。だからこの紙には本当に伝えたかった言葉を絞って、丁寧に綴った。
この手紙はタイミングを見計らってこっそりあいつの鞄に忍ばせておく事にしている。
さて、そろそろだろうか。
顔を上げると、丁度改札口の波から黒髪の青年が姿を現した。
彼が俺に気づくと、一直線にこちらへと近づいてくる。
「よう、早いな」
高峰とこうしてどこかへ行くのは初めてではないが、今回の高峰はいつになくめかしていた。いつもは付けてるメガネがコンタクトになって、心なしか別人にも見える。
「今日はメガネじゃない」
「ああ。ちょっと気分を変えてな。イメチェン?とまではならないだろうが」
「良いじゃん。何か新鮮だわ。別人みたい」
「普段コンタクトしないから多少違和感はあるが・・・メガネが無いのも楽なもんだな」
「何でコンタクトにしないの?」
「付けたり外したりするのがめんどくさくてな。それならメガネで良いかと」
「ふーん。高峰でも面倒だって思う事あるんだねぇ」
「そりゃあ人間だからな。なるべく手間は省きたいものだ」
「それは同感。でも俺はコンタクトの方が良いと思うな」
「そんなにメガネ変か?」
「違う違う。俺としてはこっちの方が顔が見やすいなってね」
メガネへの偏見が邪魔していたのか、コンタクトの高峰はいつもより柔和で大人びて見える。堅さが削減されている事に伴って、先程変かと訊いた時の戸惑った顔がおマヌケに映って面白かった。
その際にシシシ、と変な笑い方をしたせいで揶揄されたと感じ取られてはないかと思ったが、高峰は至って普通を貫いていた。
「そうか。それならメガネ無しも検討しようか・・・」
そう呟いて目の辺りを摩る高峰の肩をポンと叩く。
「今日はいつもと違う気分で楽しめそうだよ。さ、そろそろバス停行こう」
今度は屈託を持たない笑みを見せ、彼の前を歩き始めた。
「早くしないと置いてくよ」
そう振り向くと、高峰の背後に潜むコハクが子を見るように目を細めて手を振っていた。



最初は事前に予定した通りゲームセンターへ。
そこで高峰の心の赴くままにあらゆるゲームを遊び尽くした。彼のお得意だというガンシューティングをひたすらやり込んで、基礎を掴んだら別のゲームへと移動する。クレーンでも小銭をチャリチャリ鳴らしてアームの行方を追った。その繰り返しで、終わる頃には既に昼になっていた。
高峰が取ったゲームキャラのぬいぐるみを袋に詰めて、次の場所へ。この時点でかなり満足感が得られたが、これは急遽の前菜だ。メインディッシュの映画観賞へと急ぐ。
高峰が見たがっていたという映画は青春もののようだが、どうやら恋愛系というよりバリバリスポーツの友情タイプのものらしい。そのおかげで俺も容易く画面に注目出来たし、高峰も釘付けになって眺めていた。
終了し、館内から出た高峰は突然足を止めて辺りに目を配り始めた。何事かと不審になって訊くと、高峰は間を空けてからこう答えた。
「やっぱり、俳優の感想しか聞けなかったな」
どういう事かと呆然となりそうになったが、すぐその意味を理解した。
「ほらな。みんなイケメン美女目当てなんだって」
「内容は面白かったのに。残念なこった」
「まーまー、それぞれの楽しみ方があるんだよ。ほとんどが俳優目当てってだけでね」
「お前はどうだ?面白かったか」
「そうだね、ああいうの初だったからかなり新鮮だったね。意外と面白かったよ」
そう言うと、高峰が満足げに笑った。
「そうか。お気に召したなら良かったよ」
そうしてこの後も本屋やら雑貨屋やら手当り次第に店舗を回った。けどその中で俺が買ったのは一つだけで、他には何にもお金を使っていない。それももう言わずもがな。唯一買った物は高峰にあげる為の物だ。どこかのタイミングで渡そうとしているが、いつになるだろう。
それを見計らいながら時間が過ぎていき、そろそろモールを出る頃になって、その前に休憩にベンチに座る事になった。チャンスだと思って、ある程度時間を置いてから高峰に投げかけた。
「な、高峰。アンタ近々誕生日来るだろ?ちょっと早いけど、これやるよ」
袋からプレゼントを取り出して、高峰に差し出す。包装し忘れているので中身はそのままな為、その内容をすぐさま目に止めた高峰は大層驚いたように目を開いた。
「これは・・・財布じゃないか。それも、凄く高そうな・・・こんなの貰って良いのか?」
「貰ってほしいから買ったんだよ。でもそれはブランドものじゃない、普通のやつだけど。それでも良ければ受け取ってよ」
「いいや、どんな物だって構わない。嬉しいよ。じゃあお言葉に甘えて、ありがとうな」
口元を緩めながらも冷静に言って、高峰が受け取った。
本当は、形の残らないものにしようかと考えた。
食べ物ならその場で食べてもらって、何もかも残らず綺麗におサラバが理想だった。
けどそれはあまりに卑怯な行いだ。これは彼の為ではなく、結局俺だけが心地よく逝く為の行動でしかない。
だからあえて具体である物として、彼に似合いそうな財布を贈呈する事に決めた。
彼の手にある黒い革の艶やかな長財布。高峰の髪色にそっくりだから、なんて安直な理由でこの色に決めたが、悪くない選択だった気がする。
それに、その財布の中には更に『ある物』も潜ませている。万が一店側に起こったトラブルだと勘違いさせない為に、その値札にペンで宛先を記しておいた。
外見だけ見ているようだが、今はそれで良い。俺がいなくなってから、じっくり発見してほしい。
やる事は、これで全て終わった。
時刻は夕暮れ、と言ってももう夜が半分以上差し迫っている。それでも予定に狂いは無い。確かにこの先に運命が待ち構えている。
楽しかった今までが何もかも失われたような虚無感に襲われながらも、それでも歩を進める。
横では何も知らない高峰がご機嫌になって歩いている。
モールから離れ、駅に続く街に差し掛かるその道は終焉までの道。それでも俺は平然を装い、他愛ない話を続けた。彼にとっても自分にとっても最期が気まずい雰囲気になるのは物凄く勿体ない。
運命の場所までに余計な寄り道は必要無い。この道をひたすら行くことで自然と死のアーチを潜る事になるのだとあの男が言っていたから。
コハクはちゃんと後ろをついて来ているのだろうか。浮遊していると足音が聞こえないから分からないし、今は冬で冷気が来てもコハクのものなのか判断がつかず気配を察せない。
気になって後ろを振り向こうとしたが、今朝の事を思い出して止めた。
もう他の事に目を向けてる暇は無い。
運命の場所が、もうじき姿を現す頃だ。


              ✣✣✣✣✣✣



駅がうっすらと現れる距離になり、俺はピタリと足を止める。
俺と高峰の左に聳えるはこの県では珍しい高層のビル。それでももう随分と古びていて、現在は工事が進められているようだった。
俺は一瞬空を仰ぎ、ソレに気づき、そして俯いてその場から動かない。
すると、異変にすぐに気づいた高峰が振り返る。
「・・・北沢?どうした、具合悪いか」
高峰がこちらに近づこうとする。が、それを阻止するべくいち早く顔を上げた。
高峰の位置はちょっとだけ変わったが、それも予定の内。高峰は今、ビルの真ん中に立っている。
「・・・・・・北沢?」
「─────今日は、楽しかったね」
「え・・・?」
高峰が困惑して俺を見つめている。
それでも続ける。時間がもうない。
「今日は今までの人生の中で一番、楽しかった。俺がこれまで全然出来なかった事を、高峰は一緒にやってくれた。それが・・・嬉しかった」
「北沢・・・?急に何を言い出すんだ」
俺は笑って、でも酷く、酷く苦しくて、泣き出しそうになるのを堪えた。
「俺はどうしようもない社会不適合者だし、手に負えない自己中だ。けど、そんな俺でも、誰かの役に立つ日が来たんだ」
「役に立つ・・・日?一体何の話をしてるんだ!全く理解出来ないぞ」
「急でごめん。ただ、伝えたかっただけ。・・・あとは、これだけ言っておいて良いかな」
間もなく、ソレが来る。
我慢しきれず涙が溢れ出し、それでも笑みを崩さず、懸命に声に出した。
「─────本当にありがとう」








刹那、俺は高峰に向かって走り出した。
そして高峰を遠くに飛ばせるように渾身の力で突き飛ばす。
高峰が俺から離れていく。
その姿を最期に、

─────────頭上から、無数の鉄骨が。





・・・あぁ。
何となく分かった事がある。
死ぬ為には、自身こそが感じる希望を捨てなければならない。
でもそれだけでもなかった。

死ぬ為には、死ぬ以上の苦しみを持たなければならなかったのだ。
とりわけ自殺という特殊な死に方を選択するのなら、これは何より必要なものだったのだろう。

あぁ、だけど、それでも、
ようやく幸せになれるんだ。
長年の夢が、ここに────
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

煙草屋さんと小説家

男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。 商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。 ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。 そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。 小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あやかし警察おとり捜査課

紫音みけ🐾書籍発売中
キャラ文芸
※第7回キャラ文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。 【あらすじ】  二十三歳にして童顔・低身長で小中学生に見間違われる青年・栗丘みつきは、出世の見込みのない落ちこぼれ警察官。  しかしその小さな身に秘められた身体能力と、この世ならざるもの(=あやかし)を認知する霊視能力を買われた彼は、あやかし退治を主とする部署・特例災害対策室に任命され、あやかしを誘き寄せるための囮捜査に挑む。  反りが合わない年下エリートの相棒と、狐面を被った怪しい上司と共に繰り広げる退魔ファンタジー。  

あまりさんののっぴきならない事情

菱沼あゆ
キャラ文芸
 強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。  充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。 「何故、こんなところに居る? 南条あまり」 「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」 「それ、俺だろ」  そーですね……。  カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

烏の王と宵の花嫁

水川サキ
キャラ文芸
吸血鬼の末裔として生まれた華族の娘、月夜は家族から虐げられ孤独に生きていた。 唯一の慰めは、年に一度届く〈からす〉からの手紙。 その送り主は太陽の化身と称される上級華族、縁樹だった。 ある日、姉の縁談相手を誤って傷つけた月夜は、父に遊郭へ売られそうになり屋敷を脱出するが、陽の下で倒れてしまう。 死を覚悟した瞬間〈からす〉の正体である縁樹が現れ、互いの思惑から契約結婚を結ぶことになる。 ※初出2024年7月

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...