Last flag

雨実 和兎

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<金賞の風景画>1

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「今日からの練習方法はどうしますか?」

ハカセの質問に健太は「チビは団旗を守る役やから身体を鍛えなあかんな」といかにも団長ぶった仁王立ちで答える。
チビは突然任された団旗を照れ臭そうに見つめたまま頷き返す。

「じゃあ、今からみんなで腕立てや~!」
「えっ!全員ですか?」

ノートを開こうとしていたハカセの手が思わず止まる。

「もちろん!その後は腹筋とランニングやな!」

突拍子もない健太の提案に「それは冗談ですよね‥‥」と真顔で詰め寄るハカセ。

「冗談や!冗談!」

健太は笑ってごまかすが「団長が言うと冗談に聞こえませんよ」とハカセは疑いの眼差しを向けている。

「けど、どうしようかな‥‥」

まだ健太が決めかねていると「とりあえず練習方法を考えましょうか?」とハカセはノートを差し出した。

「じゃあ、ウサギ飛びはどうやろ?」

早速書き記す健太に「却下です!」と冷たく即答するハカセ。
一冊のノートに三人は肩を寄せ合い話し合うが、この日練習方法が決まる事はなかった。
連日基地での作戦会議も虚しく、まだ練習方法が決まらないまま数日後。

「せっかく太鼓借りたのにな~」

中々決まらない練習方法に、健太は教室の天井を見上げぼやく。

「急ぐ必要は無いですよ」

ハカセはなだめるが、健太はふて腐れた表情を返し続けている。
二人の会話を見守るように笑顔のチビ。
この頃から休み時間はチビのクラスに集まり、作戦会議をするのが恒例になっていた。

「あいつらうるさくね‥‥」

チビを良く思っていない数人のヒソヒソ話しが聞こえると、チビは静かに畏縮しているが「やっぱり、ウサギ飛びで良いやろ!」と健太は気にするそぶりも無く笑い声を響かしていた。

放課後いつものように基地に向かいグラウンドを歩く三人は、音楽室に集まるブラスバンド部員を見つめ立ち止まっていた。

「やはり人気が違いますね‥‥」

ハカセが見上げる先には、笑顔で音楽室に駆け込む生徒達。

「そうか~?たった八人位やん!」

強がってはいるが気になるのか、健太は音楽室から視線を逸らさない。

「でも倍以上か~!俺達はまだ練習方法すら決まってないからな‥‥」

ため息を漏らす健太。

「関係無いですよ!太鼓返してくれとは言われてないですし」

ハカセは肩に担いだ太鼓を笑顔で見せつける。

「そうや!今日は気分変えて練習見に行こう!」
「良いですね!」

目的の決まった三人が早足で歩き始めると、グラウンドにはブラスバンド部の練習音が響いていた。

弱小野球部が練習する運動場に移動した三人は、邪魔にならないように隅に陣取っている。

「お~!やっとるやっとる!」

響く打球の快音に、テンションが上がった健太は跳びはねている。

「やはりスポーツしている姿は見ていて気持ちいいですね」

ハカセが伸びやかに背筋を伸ばしていると「決めた~!練習は音合わせにしよう!」と健太は突然大声を出し脅かす。

「良いですね!それなら文句は無いですよ」

ハカセは冷静を装い眼鏡を掛け直し、チビは笑顔で頷く。

「そうと決まれば俺達も練習や!」

三人がその場から立ち去ろうとした時、駆け寄って来た野球部員が「ブラスバンド部出来たらしいけど一緒にやるんやんな?」と爽やかに尋ねる。

「一緒に?」

話しを理解出来ず健太は聞き返すが「あぁ‥‥、そうか、俺はお前達の応援の方が好きやで!」と説明にならない返答を返し、走り去って行った。

「今の聴いた?俺の声が届いている証!」

健太は格別の笑顔で左右に首を振り、二人が頷くのを確認する。

「さっきのは、どういう意味だったのでしょうか‥‥?」

考え込むハカセに「そのまんまやろ~!!」と健太は緩む口元を抑えられずに笑う。

「一緒に、の意味ですよ?」

ハカセの言葉を掻き消すタイミングで「これからも応援するで~!!」と健太は両手を振り、後ろ姿の野球部員を見送る。

「じゃあ、基地行くか~!」

今にも走り出しそうな健太を見つめハカセは「まあ良いですか‥‥」と小声で呟く。

慌ただしく基地に移動した三人は「早く!早く!」と健太に急かされ、それぽっく隣りに立ち並ぶ。
困惑した表情を浮かべて立つチビを気遣い、ハカセは「立ち位置は、こんな感じで良いですよね?」と説明を求める。

「オッケー!じゃあ俺が声出しで、ハカセが太鼓、チビは旗振りな!」

健太の珍しく団長らしい振る舞いに、ハカセは思わず拍手している。

「それでは3・3・7拍子で良いですね」
「まだ他に知らんしな~!」

健太がいつものように笑顔を返すとハカセが太鼓を叩きだし、三人揃っての練習が数日ぶりに再開した。

一度合わせ終わり、静まり帰る基地。

「どうですかね‥‥?」

叩き終えたハカセが聞くと「良いやん!絶対良いやろ!」と健太は二人の肩を抱く。

「じゃあ、もう一回や!」

再び急かす健太に「その前に注意点とかは無いですか?」とハカセは冷静に練習方法を分析しようとしている。

「そうやな~、ハカセはもっと大きな音で叩いて、チビはもっと大きく旗振るかな!」

健太は大袈裟な手振りと真顔で答えるが「なんだか大雑把な注意点ですね‥‥」とハカセは思わず笑い、チビも笑顔で頷いた。
この日の練習はこんな調子のまま笑顔が絶えず、三人の一日は終わっていた。

翌日の昼休み。
給食を早食いした健太は、3組の教室でチビと二人ハカセを待っていた。

「謎が解けましたよ!」

珍しく慌てて駆け付けるハカセに、健太は返事も返さず驚いてる。

「一緒にの意味ですよ!」

ハカセは語調を強めるが「一緒に?何ソレ?」と健太には全く思い当たる事が無い様子。
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