Last flag

雨実 和兎

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<忘れていた感謝>2

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「えっ?合同練習をですか?」
「違う!一緒に応援するのを!」

少し声を荒らげる健太に、ハカセとチビは目を円くして驚いてる。
動揺を落ち着かせるように、ハカセは一呼吸間を空けて聞いた。

「それはまたどうしてですか?」
「やっぱり応援団は硬派じゃないとアカン!」

冗談ではなさそうに言い切る健太に、ハカセはため息混じりに答える。

「そんなの断る理由にならないですよ!また誰かさんの悪影響じゃないですよね?」
「違うわ!俺の考えや!」

一瞬の沈黙の後、健太は「何を頑張った訳でも無いのに、野球部の応援横取りしたくせに‥‥」と本音をこぼした。
それを聞くとハカセはこれ以上何も追及出来なくなり、会話の無くなった三人は静まり返っていた。

「あれっ?何か聞こえなかったですか?」

聞き覚えの有る音が響き
、ハカセは耳を済まして辺りを見渡す。

「えっ、出前の屋台やろ!」
「そんな音じゃなかったですよ」

チビは頷き、ハカセは思わず吹き出している。

「あれは屋台やろ~!」
「この辺で屋台なんて見たこと無いですよ、確かめに行ってみましょうか?」

いつもの明るさを取り戻した三人は、面白半分に音の正体を探しに行く。

「こっちの方から聞こえたと思うんですけどね」

三人はウロウロと辺りを散策するが、それらしき何かは一向に見当たらない。

「もう屋台走って行ったんやろ!」

健太がそう言ったタイミングで再び音が響く。
無言でチビが指差している河原の向こうを二人が見つめると、部活が終わっても練習しているブラバン部員の姿があった。

遠巻きに三人が見守るなか、お世辞にもまだ上手いとは言えない音が時折河原に響く。

「僕達は何か誤解していたのかも知れませんね!明日断る必要が無くなったんじゃないですか?」

からかうようなハカセの一言に健太は「そうやな、明日が楽しみに変わったわ」と吹っ切れたように笑顔を返した。

合同練習当日グラウンドに集まった三人とブラスバンド部員は、緊張した面持ちで練習開始を待っていた。

「それでは始めましょうか!」

音楽教師の合図と同時にハカセが太鼓を叩き始め、チビが精一杯団旗を抱え上げる。

「ガンバルズの勝利を願いまして~、三・三・七拍~子、フレ~!フレ~!ガンバルズ~!フレフレガンバルズ、フレフレガンバルズ!」

練習どうりに健太の三々七拍子がグラウンドに響き終えると、ブラスバンド部が演奏する課題曲が流れ始める。

「中々良いんじゃないですか?‥‥」

小声で感想を求めるハカセに健太は「そうやな!‥‥でも何か足らんな~!」と腕組みをして、何やら考え始めている。

「曲の間って事ですか?」
「そうそう、それや!振り付けや!」

思いつきのままに健太は、大雑把に両手を振り上げだす。

「それでは盆踊りですよ」
「じゃあコレでどうや!」

ブラスバンド部員の演奏に合わせて、健太は正拳突きを始める。
苦笑いを返すハカセとは裏腹に、チビも陽気に団旗を振り始めると「セイヤ!セイヤ!」と健太は妙な掛け声まであげてブラスバンド部員達に笑われている。

課題曲の演奏が終わり、その場に居た全員が感動に浸っていると「中々良かったですよ、次は盛り上がる部分を強調して!それでは、もう一度最初からやってみましょう」と音楽教師の号令で、練習は再び始まる。
次々に他の生徒達が帰宅して行く中、合同練習は幾度となく繰り返しグラウンドには賑やかな音が響き続けていた。

何度目かのチャイムが鳴り終えると「はい!まだ練習期間が短いので拙い部分が沢山有りますが、応援団の三人と力を合わせて明日の本番を盛り上げていきましょう」と音楽教師の合図で合同練習は切り上げられた。

不慣れな振り付けで幾度となく笑いを取ったからか「明日もヨロシク!」とブラスバンド部員達は応援団を歓迎するように笑顔で拍手している。
三人は照れ臭そうに片手を揚げて応えたまま、その場を去って行った。

「さあー!急いで作らな間に合えへんぞ!」

合同練習後いつものように基地に集まった三人は、大慌てで明日の準備に取り掛かっていた。

「こんなに大きくなくても良いんじゃないですか?」

効果の程にハカセは疑いの眼差しを向けるが「大きい方が晴れるに決まってるやろ!」と健太は真剣な表情で、特大てるてる坊主の顔を描いている。

「出来た~!完成や~!」

枕サイズの特大てるてる坊主を、健太は満足気に縛り吊るしていると「それにしてもブサイクな、てるてる坊主になりましたね!」とハカセは冷ややかな冗談を投げ掛け、チビも納得するように笑っている。

「そっちは出来た?」

思い出したように健太がチビに聞くと、チビは大きく頷き改造後の団旗を抱え上げ見せつけた。

「お~!!ええやん!」
「やはり高さが有ると、迫力有りますね」

前よりも長い棒に括り変えられた団旗は、三人の身長よりも高くそそり立っている。

「後は俺の振り付けと、団旗の振り方を決めやなアカンな」

張り切って準備運動を始める健太に、チビは笑顔で頷き返す。

「それにしても、やはり三人で行動すると初心に返りますね」

ちょっとしたハカセの呟きに「そうや大事な事を言うの忘れてた、二人共一緒に応援してくれてありがとうな‥‥」健太は思い出したように真剣な表情でお礼を言い、チビは何だか嬉しそうに笑顔を返している。

「突然どうしたんですか改まって?」

からかうようにハカセが尋ねると「何でもな~い、初心忘れるべからずやろ」と健太は照れ臭さをごまかすように、準備運動を再開した。
吊り上げられ夕焼けに照らされた特大てるてる坊主は、まるで三人の行く末を見守っているようだった。
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