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<風を切る月>2
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「チビ~!!」
健太の大声に気付いたチビが振り返ると同時に、無情にも閉まる電車の扉。
不器用そうに慌ててチビが窓を開けると「破門なんかじゃないからな!!」先頭車両前に駆け付けた健太が、今にも泣き出しそうな顔で叫ぶ。
「僕達はいつまでも仲間ですよ‥‥」
笑顔で語りかけるハカセに、思わず泣き出したチビは涙も拭かず頷く。
「何で泣くんや‥‥」
笑顔で送りたかったのか必死で涙を堪えていた健太も、チビの泣き顔を見ると堪え切れず涙が溢れている。
恥ずかしげも無く泣き顔を見合わせる三人に、チビの担任は言葉も掛けられないでいた。
チビは何かを伝えようと口を動かすが声が出ず、三人の別れを惜しむ間もなく電車は走りだす。
もう一度健太が名前を呼ぶと、電車が走りだしたのも構わずチビは窓から身体を乗り出す。
「‥‥あ゛‥ありがと‥‥う゛‥‥」
二人とも初めて聞くチビの声だった。
電車の音で聞き取りづらくても、二人には充分過ぎる程伝わっていた。
時計が秒針を刻むように、電車の車輪はゆっくりと回り始める。
三人の心に刻み込むその一瞬一瞬は、別れを惜しむ三人の気持ちを汲んだかのように、まるでスローモーションに時間が過ぎていく。
気持ちを入れ直すかのように瞼を軽く閉じた健太は、両足を拡げ背筋を伸ばして立ち直した後、大きく深く息を吸い込む。
一瞬驚いた表情のままチビは目を見開き。
健太は身体中に溜め込んだ酸素に気持ちを乗せて精一杯出そうとするが「‥‥だ‥‥旅゛立つ仲間チビの‥‥さ゛らな゛る幸せと‥発展を願いま゛して‥‥」と途切れ途切れな涙声になってしまっている。
それでも構わず叫びながら必死に両手を振り回し、片手に握り締められた団旗がヒラヒラと風に舞う。
靡く団旗が三人に出会いから今日迄の一日一日を思い出させるからか、三人共泣いているが笑顔を交わす。
必要以上の力で木の棒を握り締めたハカセも、健太の声に合わせ恥ずかしげもなく柱を叩き、あっという間に手の平は赤く擦り切れていく。
二人の真剣さに気圧された担任は、近所迷惑を注意する事も出来ず後ずさり下を向いている。
止まる事なく車輪は周り電車は走り続けるが、チビは臆する事なく身体を乗り出したまま懸命に手を振り続けていた。
車窓に反射する光と建物の少ない町並みに吸い込まれ、溶け込むように電車とチビの姿は小さくなっていき、二人からはもう見えなくなっている。
健太の声やハカセの太鼓がこの場所から隣町まで聞こえる事は無いかも知れない、それでも健太とハカセが途中で手を止め声援を送るのを止める事はしなかった。
「行ってしまいましたね‥‥」
「また団員捜さなアカンな‥‥」
健太は平気なふりをしているが、瞳は真っ赤に染まっている。
「次の学校で新しい仲間が出来ると良いですけどね」
「大丈夫やろ!以外と声も大きかったしな!」
自信満々に答える健太に「声の大きさは関係無いと思いますけどね‥‥」と冷静にハカセは冷やかす。
笑顔を交わす二人は、対向車線の電車が起こす風を気持ち良さそうに浴びている。
思い思いに二人が見据えるレールの先には、チビの未来への希望と期待が込められているようだった。
チビが居なくなって数日後、まだ落ち込んでいるせいか健太は授業中に外を見ている事が多くなっていた。
この日の授業中も健太は黒板を控えるでもなく外を眺めていると、突然後ろから丸めた紙を投げつけられ。
健太は振り反りクラスメート達を見回すが誰も視線を合わそうとはしない。
よくあるイタズラだと笑った健太は、気にもしてない様子で机の上に落ちた紙を開くと[いつも応援ありがとう!ガンバって!]と可愛らしいマル文字で書いてあった。
思わず立ち上がり振り返る健太に「どうした?トイレか?」と先生が親切に尋ね、焦った健太は「いえ!頑張ります!!」と大声で意味不明な返答をして、クラス中の生徒に笑われる。
健太の家にチビからの手紙が送られてきたのは、その数週間後の事だった。
宿題中の夜に母親から手渡された手紙を見て、健太は思わず大声をあげる。
手紙には写真が印刷されていて、サッカー部に入った事と感謝が記入されていた。
仲良さそうにサッカー部員達と笑っている写真を見た健太は、嬉しさのあまりハカセに電話を掛ける。
三人の思い出話しが尽きず、長電話で母親に叱られたその夜は月がとても綺麗な日だった。
数日後の午後。
体育館に集まった健太達は、バスケの試合を応援していた。
「はい、どうぞ~!」
お茶を配るナナに照れる洋介は無言で頷く。
声援も歓声も聞こえなくなる程に、一方的な試合が終わる数分前だった。
ハカセの叩く太鼓の音が虚しく鳴り響いている。
誰もが勝利を諦めていたその時「まだ終わってないだろ、諦めるな!!」
健太の声がコートに響いた。
健太の大声に気付いたチビが振り返ると同時に、無情にも閉まる電車の扉。
不器用そうに慌ててチビが窓を開けると「破門なんかじゃないからな!!」先頭車両前に駆け付けた健太が、今にも泣き出しそうな顔で叫ぶ。
「僕達はいつまでも仲間ですよ‥‥」
笑顔で語りかけるハカセに、思わず泣き出したチビは涙も拭かず頷く。
「何で泣くんや‥‥」
笑顔で送りたかったのか必死で涙を堪えていた健太も、チビの泣き顔を見ると堪え切れず涙が溢れている。
恥ずかしげも無く泣き顔を見合わせる三人に、チビの担任は言葉も掛けられないでいた。
チビは何かを伝えようと口を動かすが声が出ず、三人の別れを惜しむ間もなく電車は走りだす。
もう一度健太が名前を呼ぶと、電車が走りだしたのも構わずチビは窓から身体を乗り出す。
「‥‥あ゛‥ありがと‥‥う゛‥‥」
二人とも初めて聞くチビの声だった。
電車の音で聞き取りづらくても、二人には充分過ぎる程伝わっていた。
時計が秒針を刻むように、電車の車輪はゆっくりと回り始める。
三人の心に刻み込むその一瞬一瞬は、別れを惜しむ三人の気持ちを汲んだかのように、まるでスローモーションに時間が過ぎていく。
気持ちを入れ直すかのように瞼を軽く閉じた健太は、両足を拡げ背筋を伸ばして立ち直した後、大きく深く息を吸い込む。
一瞬驚いた表情のままチビは目を見開き。
健太は身体中に溜め込んだ酸素に気持ちを乗せて精一杯出そうとするが「‥‥だ‥‥旅゛立つ仲間チビの‥‥さ゛らな゛る幸せと‥発展を願いま゛して‥‥」と途切れ途切れな涙声になってしまっている。
それでも構わず叫びながら必死に両手を振り回し、片手に握り締められた団旗がヒラヒラと風に舞う。
靡く団旗が三人に出会いから今日迄の一日一日を思い出させるからか、三人共泣いているが笑顔を交わす。
必要以上の力で木の棒を握り締めたハカセも、健太の声に合わせ恥ずかしげもなく柱を叩き、あっという間に手の平は赤く擦り切れていく。
二人の真剣さに気圧された担任は、近所迷惑を注意する事も出来ず後ずさり下を向いている。
止まる事なく車輪は周り電車は走り続けるが、チビは臆する事なく身体を乗り出したまま懸命に手を振り続けていた。
車窓に反射する光と建物の少ない町並みに吸い込まれ、溶け込むように電車とチビの姿は小さくなっていき、二人からはもう見えなくなっている。
健太の声やハカセの太鼓がこの場所から隣町まで聞こえる事は無いかも知れない、それでも健太とハカセが途中で手を止め声援を送るのを止める事はしなかった。
「行ってしまいましたね‥‥」
「また団員捜さなアカンな‥‥」
健太は平気なふりをしているが、瞳は真っ赤に染まっている。
「次の学校で新しい仲間が出来ると良いですけどね」
「大丈夫やろ!以外と声も大きかったしな!」
自信満々に答える健太に「声の大きさは関係無いと思いますけどね‥‥」と冷静にハカセは冷やかす。
笑顔を交わす二人は、対向車線の電車が起こす風を気持ち良さそうに浴びている。
思い思いに二人が見据えるレールの先には、チビの未来への希望と期待が込められているようだった。
チビが居なくなって数日後、まだ落ち込んでいるせいか健太は授業中に外を見ている事が多くなっていた。
この日の授業中も健太は黒板を控えるでもなく外を眺めていると、突然後ろから丸めた紙を投げつけられ。
健太は振り反りクラスメート達を見回すが誰も視線を合わそうとはしない。
よくあるイタズラだと笑った健太は、気にもしてない様子で机の上に落ちた紙を開くと[いつも応援ありがとう!ガンバって!]と可愛らしいマル文字で書いてあった。
思わず立ち上がり振り返る健太に「どうした?トイレか?」と先生が親切に尋ね、焦った健太は「いえ!頑張ります!!」と大声で意味不明な返答をして、クラス中の生徒に笑われる。
健太の家にチビからの手紙が送られてきたのは、その数週間後の事だった。
宿題中の夜に母親から手渡された手紙を見て、健太は思わず大声をあげる。
手紙には写真が印刷されていて、サッカー部に入った事と感謝が記入されていた。
仲良さそうにサッカー部員達と笑っている写真を見た健太は、嬉しさのあまりハカセに電話を掛ける。
三人の思い出話しが尽きず、長電話で母親に叱られたその夜は月がとても綺麗な日だった。
数日後の午後。
体育館に集まった健太達は、バスケの試合を応援していた。
「はい、どうぞ~!」
お茶を配るナナに照れる洋介は無言で頷く。
声援も歓声も聞こえなくなる程に、一方的な試合が終わる数分前だった。
ハカセの叩く太鼓の音が虚しく鳴り響いている。
誰もが勝利を諦めていたその時「まだ終わってないだろ、諦めるな!!」
健太の声がコートに響いた。
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感想ありがとうございます(o*。_。)oペコッ
出来て良かったです(; ・`д・´)/