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21 凛と胸を張って

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「それでユーフェミア様はどうしてお一人でこちらに……? 、歓迎の宴にご出席なされるおつもりでは……ありませんよね?」

 『まさか行くつもりじゃないだろうな?』

 と、存外にアレクサンドは告げているが。

「ふふ、そのまさかです! 私の元にこの夜会の招待状が届きましたので、と思いやって参りましたのよ?」

 ユーフェミアは胸を張って、アレクサンドにそう自信満々に答える。

 その様子に、呆れたと言わんばかりの顔のアレクサンドは今にもまたネチネチと嫌味ったらしい言葉を吐きそうだが。

「貴女は本当に……面白いですね? いいでしょう私がユーフェミア様をエスコート致します」

「いいえ結構です、廃妃をエスコートなんてこの夜会でしていたら貴方の評判が下がりましてよ? 宰相……ではなく侯爵様?」

「……アレクサンドで結構です、それだと誰かわかりづらいので。それに宰相を辞めた時点で私の評判など地に落ちていますよ? 国政が滞り始めているので」

「え?」

「私が少し一人で仕事をこなし過ぎていたみたいですね、後任の方には悪い事をしてしまいました。ですのでユーフェミア様、行きますよ?」

「えー……性悪のエスコートなんて、やだなぁ……」

「……ユーフェミア様?」

 本当に嫌そうな顔をして一歩後退りするユーフェミアに対して、アレクサンドは笑顔なのだがその声は。

 『我が儘言ってないで早くしろ』

 と、脅している。

「はあ……もう仕方ありませんね? エスコート、お願い致しますアレクサンド様?」

「もう宰相ではない私に、ユーフェミア様が敬称など使われる必要ありません」

「なら私にも必要ありませんよアレクサンド? 私も王妃ではありませんし? 貴方のおかげで私は自由の身なのです」

「っ……そう、ですねユーフェミア」


 そして勝手知ったる王宮を、通路ですれ違う者達に二度見されつつユーフェミアは夜会が行われる大広間までやってきて。

 その扉を開ければ。

 見知った顔の貴族達の視線が全てユーフェミアに注がれた、そしてその視線はエスコートするアレクサンドにも注がれる。

「うわ、すごいみんなに見られてる! これが針のむしろというやつ……! あは、なんかコレ楽しい……」
 
「ユーフェミア……貴女はどこまで肝が据わってらっしゃるのですか、普通はここでたじろぐものです」

「そりゃ……10歳という幼少期から王妃なんてつまらない仕事していましたから? この程度なら私はなんともありませんよ」

 そしてにっこりと嫋やかに、そして優雅に微笑んで見せたユーフェミアは。

 廃妃となった今でも高貴さと気品を息をするように自然に醸し出して、凛と胸を張っていた。

 そんな物怖じなど全くしない、高貴さとは淑女とはなんたるかを体現するユーフェミアに。

 会場中の貴族達はやはりユーフェミアが王妃に相応しい、こんな小国の社交も碌に出来ない王女よりも。

 やはりこの大国ガーディンには、正当なる王家の血統を持つユーフェミアが国母として一番相応しいと思ってしまった。

 その貴族達の羨望の眼差しに、フェリクスの隣で楽しそうに笑っていたレオノーレ王女の表情は凍った。

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