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21 可哀想な子に見える社畜
しおりを挟む私達が彼女の貴族としての位を剥奪するように国に嘆願し、彼女は貴族の令嬢ではなくなった。
私達が調べあげた、スカーレットが行ったはずの、義理の妹フローレンスへの、いじめや、殺人計画と暗殺ギルドへの依頼という犯罪の罪状。
その罪状のせいでの王太子との婚約破棄。
そして、私たちはスカーレットを神殿に送り出家させて神官として生きるように強制した。
それが本当に間違っていなかったのか、今さら考えた所でどうしようもないのに。
その判断がもし間違えていたとしてももう取り返しなどつかない事だとわかっているのに。
公爵家の嫡男として、この国の宰相の息子として王太子の側近として何も迷うことなど今まで一度もなかった。
この判断にあの時はいっぺんの曇りもなく決断できたはずなんだ。
彼女から、王太子の婚約者としての立場を奪い、貴族としての位を奪い、貴族令嬢としての平穏を奪い結婚し子を産み育てるという道を奪った。
それが間違いだったのではないのかと思ってしまうんだ。
神殿で彼女は下級神官の服を……。
服といってもあんなに薄いボロ布一枚で毎日懸命に女神シャダンの許しを乞い、寒空の下震えながら礼拝堂を床に這いつくばるようにして、あんなボロボロになってしまったアカギレだらけの痛々しい。
手で直接床を清める……。
そして平民相手に笑顔を振り撒く。
髪は貴族令嬢でなくても長く伸ばすというのにあんなに短く切られてしまって。
それに、見るたびに痩せ細りフラついて。
当たり前だ!!
温室で育った令嬢があんな暮らし……。
夜も開けぬうちから深夜まで働かされているんだ。
まさか…こんなことになっているなんて。
私は本当に間違っていなかったのか?!
本当に……?
もし……間違った判断を決断をしていたとしたら!!
償っても償いきれない……。
彼女の人生を罪のない少女の人生を私達は、めちゃくちゃにしてしまったのか……?
今、私に彼女にしてやれることなんて殆どないだろうが、毎日神殿に礼拝堂に通い僅かな献金を行い、目立たぬように、彼女に菓子を渡してやることぐらいか…。
攻略対象者1ライリーさんの勘違いが加速した後悔はまだまだ深みにはまっていく
「スカーレット。」
「はい、どうされましたか?」
「っ……菓子は、好きか?!」
「はい、甘いものは好きですが?」
「これを……!」
ライリーさんが私にプレゼント?賄賂? なぜ?
「えーっと……」
「マフィンだ、休憩の時にでも食べるといい。」
あ、毒入り?! いっそ始末してしまおうと?!
私そこまで恨まれていた?!
ほんと、何もしてないよ!!
「休憩する時間は……ないので……」
「っ……?! 休憩ないのか?」
「はい、あ、でも、夜中お仕事するときお腹が空くのでその時食べます、ありがとうございます」
「夜中も仕事を……?!」
「はい、夜中は孤児院で幼子達の夜泣きの付き添いがありますので」
「……君はいつ寝ているんだ」
「最近は一刻ほどは寝ておりますよ!」
「は? たった一刻……? 神殿は日が落ちたら就寝で夜明けで起床だろう?」
「孤児院で幼子を寝かしつけしたあとは聖書を読んでおりますので。それに夜明け前にはこの礼拝堂に参りまして、掃除を始めますから、あまり寝てる時間が取れないのです。私、要領悪くて……あ、すいません、仕事あるので! お菓子ありがとうございます!」
……やはり、私は間違えてしまっていたのではないだろうか?
応援ありがとうございます!
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