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24 要らない決意
しおりを挟むまだ日も明けぬ月明かりが差す、息を吐けば白むような冷気が漂う礼拝堂に、スカーレットは下級神官の薄いぼろ布のような薄汚れた衣一枚で、寒さに震えながら一人でその礼拝堂の床に這いつくばり、床に手をついてぼろ布で床を拭き清めていた。
元々艶やかだった美しい金髪は、肩あたりでバッサリと切られていて痛々しい。
それにゆったりとした神官服の上からでもわかるその痩せ細ってしまった身体は触れたら簡単に折れてしまいそうで胸が傷んだ。
自惚れた馬鹿だとおもっていた。
出来もしない事を平気で、やったらなんでも出来るとか馬鹿みたいな事を平気で言うおかしな奴だとおもって、顔を見るたびになぜか苛ついた。
正直、王太子の婚約とかどうでもいいしフローレンスも興味などないし、側近についても勝手にされただけだし。
だからスカーレットが誰を虐めていようが興味なかった。
ただ、なんとなく昔から目障りだったから貴族位を剥奪に賛成した。
まさかこんな風に後悔する事になるなんて。
1日中スカーレットを観察してみたら……あいつはいつ寝てるのか。
1日中働き詰めじゃないか。
彼女の部屋の明かりが消えたのは深夜をだいぶすぎてからだった。
そして彼女を観察し出していて少したった頃に彼女が高熱を出して倒れてしまった。
礼拝堂の礼拝中にフラフラと、しているなと思って見ていたら……。
ゆっくりと崩れるように…彼女が床に身体を、その細い身体を打ち付けた……。
礼拝に来ていた平民達が神官が彼女に気付き駆け寄る。
「スカーレットちゃん? 大丈夫かい?」
「神官様がお倒れになったぞ!!」
「これは熱がひどい! こんなに薄い衣で……」
「スカーレット大丈夫かい? 医者を……!」
ライリーも駆け寄りスカーレットを心配して医者の手配をしようとしていた。
スカーレットが倒れた事で礼拝堂は騒然となる。
……俺が彼女をこんな目に合わせてしまったのか。
あんな働かされて、あんな酷い環境で。
少し苛ついたくらいで、彼女の人生を俺が壊してしまった。
なにが魔法使いだ。特別な人間だ。
少し変わった力があるだけのただの人間なのにそれに……おごり自惚れてたのは自分だった!
彼女をこの神殿から救いだす方法を探さねばならないと、決意する。
彼女を貴族に戻す。
そして、彼女を貴族の位から引きずり下ろそうと画策したものを見つけ出し断罪してやる!
俺一人では出来ることは限られている。
協力者が必要だ……!
目の前で、必死にスカーレットを介抱するライリーならば……!
絶対助けてやるからな!
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