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92 王妃と

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 王太子サミュエルから、アシェルに恋の相手を乗りかえた公爵令嬢レオノーラ。

 どれだけサミュエルにアピールしても異性としては見てくれなくて、レオノーラはその恋に疲れてしまっていた。

 その時にレオノーラは王宮で、この世の者とは思えない程に整った容姿のアシェルに出会ってしまう。

 これはもう運命の出会いじゃないかしら?

 そう周りの大人達もみんな私がアシェル様にお似合いだと言うし、私と結婚すればアシェル様は強い後ろ楯が得られて王となれる。

 そして私も王の妻となり王妃となる。

 なんて素敵な出会いなのでしょうか?

 私に振り向いてくれないサミュエル様なんて、このまま廃嫡されてしまえばいい。

 そう、王妃に相応しいのは公爵家の私。

 そして公爵令嬢レオノーラは、周りの大人達の思惑通りにアシェルに恋をした。

 この二人を王と王妃にすれば、現王妃にひと泡吹かせられるし、王家の力は弱まる。

 ただし、そんな思惑関係ないとばかりに裏でフローレンスが楽しそうに遊び始めたけれど。

 まだ誰も知らない、国を王家を荒らし倒した厄介なヒロインが姉を睨み付けたという理由だけで、次の目標に公爵家を捉えているなんて。

 そして真に国を操っていると言っても過言ではない苛烈な現王妃に、謁見を王太子サミュエルを通じて申し込み本日スカーレットは久し振りに王妃と面会する。

「あらスカーレット私に会いたいなんて可愛い子、サミュエルとは、仲直りしたのかしら? また二人が仲睦まじく国を支えてくれるなんて私はとても嬉しいわ?」

「王妃殿下、私はサミュエル様とは復縁は致しません、ですがサミュエル様の後援となりお支えする覚悟でございます」

「復縁しない? ……では誰がサミュエルの王妃となるのかしら、侯爵家の貴女でなくては困るのよ?」

「フローレンスも侯爵令嬢です、我が妹フローレンスをサミュエル様の妃として推させて頂きます」

「……あれは紛い物の侯爵令嬢でしょう? あれでは王家が納得などしない!」

「ですが王妃殿下にとっては血統など、些末な事ですよね? アレも一応は侯爵令嬢です、妹で我慢して頂けません? 大丈夫です、本当は血が繋がっていたとでも噂を流せば問題ありませんよ。それを家は否定も肯定もしませんが」

「まあ……サミュエルが王となるならば、どうでもいいわね?」

「それと、かわりと言ってはなんですが、侯爵領に人員の派遣をお願いします、国王陛下に再三お願いしていたのですが。無視されてまして、やはり王妃殿下じゃないと頼りになりませんね?」

「ふふふ、貴女不敬って言葉しらないの?」

「私が敬っているのは国であって、助けてもくれない国王陛下ではありませんし? それに王妃殿下は一応敬ってますよ? 殿下直々の王妃教育のお陰で色々と助かっておりますし、まあ私の婚約破棄承認の件や、神殿送りについては根に持っておりますが」

「本当、サミュエルが惚れたのが貴女ならよかったのに残念ね? それで貴女の望みはそれだけ?」

「……アシェルを下さいませ」

「あれは殺そうと思っているのよ?」

「それは重々承知しております、ですが私には必要なので下さいませ? それで私の婚約破棄承認の件や、神殿送りの件は水に流しましょう? 頂けないのなら私はこれからどう動くかわかりませんが宜しいでしょうか?」

「……本当に貴女がサミュエルの妃になってくれれば安心なのにね、いいわ好きになさりなさい?」

「ふふふ! 流石王妃殿下でございます!」
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