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神明山の遊歩道

ウマが合わない二人

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「……っていうことがあって」と、ほたるは碧ちゃんに優太君のことを説明した。

 もちろん、悪ガキ部分はオブラートに包み、いろいろ掻い摘んだけれど。

「ふうん」と、碧ちゃんが優太君をジロジロ眺めて、意味ありげに笑う。

「なんだよ。つか、誰この人。ダメほたるの友達?」
「うん、同じ大学に通う大水碧ちゃん」

「オオミズアオ? それって本名?」
 優太君が太い眉を寄せて、疑いの眼差しを碧ちゃんに向けた。

「優太君、それってどういう」
「なっるほっどねー。神明三家の子供かー」

 明るい口調で「なるほど、なるほどー」と頷く碧ちゃん。

(そっか。碧ちゃんは地元民だから、神明三家のことも知ってるんだ。やっぱり有名な地主さんなんだな)と、ほたるは思う。
 確かに、あの家は大きくて目立つし。

「それより優太君は、ここで何してるの?」
「オレは……つか、ダメほたるこそ」

「あたしは大学から帰るところだよ。碧ちゃんがね、ここ通る方がハイツまで近いって教えてくれたの。あ、わかった! 優太君、また塾が休みになって、大家さんに内緒で山登りしてたんでしょ!」

 ふふん、と、名探偵ほたるは鼻を膨らませる。

「あー。まあ、そんなとこ」
 細いつり目の瞳を泳がせ、歯切れ悪い優太君。

 あれ、違う? てゆーか、なんか隠してるっぽい。
 そういえば、ランドセル持ったままだし。
 ううむ。

「なら一緒に戻ろうよ。暗くなる前に山から出た方がいいよ」と、ほたるは明るく提案する。

 10月のこの時期、日の入りの時刻は遅いけれど、いったん暮れ始めれば、夜になるのは早い。
 日没ともなれば、山の中は真っ暗になってしまうだろう。
 遊歩道があるとはいえ、外灯があるわけでもないし、夜の山道はやっぱり危険だ。

「いや。オレは」
「てゆーかぁ、タソガレ時に神明三家の子どもが神明山に分け入っちゃって、いっいのっかなー」

「あ? それ、どういう意味だよ」
 からかうような口調の碧ちゃんに、優太君が、ムッとしている。

「まあまあ」
 ほたるは慌てて二人の間に割って入った。
 なんかこの二人、馬が合わない気がする。

「とりあえず、話は帰りながらにしようよ」
「いや、オレ、まだ用事が残ってて」

「用事って?」
「それは、その」
 
「あっれー、あんなところに神社があるよー」
 口ごもる優太君に(やっぱり何か隠してるな)と、ほたるが疑った時、小さなおでこに手で傘を作って、碧ちゃんが森の奥を指さした。
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