ミロス公爵の独白〜君の愛こそが本物だとやっと気づいた〜

早乙女 純

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オレリアがミロスに送った手紙

聖暦1256年3月14日

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親愛なるミロス様へ 

 拝啓 早春の候 ミロス様お変わりなくお過ごしでしょうか。さて、私がこうして手紙を送ってくることにあなたは不思議に思うかも知れません。私も不思議な感覚と共に緊張を感じながらこの手紙を書いております。小さい頃からずっと身近にいたミロス様にこのように手紙を書くことになるとは私も思っていませんでした。ではなぜこの手紙を書こうかと思ったかと言いますと今年で私たちは14歳を迎えました。これから学園生活が待っております。そうなれば、私たちはあまり会うことができなくなってしまうと思ったのです。ですから、私はこうして手紙を書き私の思いを伝えてみようと思ったのです。ミロス様はきっと私のことが嫌いであると思いますが、どうかお付き合いしてきただけると幸いです。

 私はあなたのことを愛しています。誰よりも愛していると言える自信があります。私は小さい頃に、あなたに会ったときを鮮明に覚えております。あれは、私たちが5歳の時のことです。私はお父様に連れられ、よく分からないままランベール公爵様の屋敷にきたのです。そこには様々な貴族の子供たちが集まっていました。そう、それは子供たちの交流のために開かれたランベール公爵家のパーティでした。そして、その中であなたと出会ったのです。あなたは幼ながら知性的な目をして大人たちと対等に話しており、他の子たちとは一線を画した存在でした。私はそんなあなたに一目惚れをしてしまいました。そんなことで?と思いになるかも知れませんが、それでもあなたのその凛々しい姿に惚れてしまったのです。

 それで、私があなたの婚約者であるとお父様から聞かされた時はその会場で叫びたくなるほど嬉しかったのを覚えています。もちろん、淑女の嗜みとして声を押し殺して喜びました。それからあなたに見合うだけの能力が必要であると私は思い、より一層勉強に励みました。お父様にお願いして様々な教師も集めていただきました。そうして忙しい日々を過ごしました。そんな日々の唯一の楽しみがあなたにお会いすることでした。しかし、あなたは私のことが気に食わなかったようでよく睨んできましたね。毎回心が壊れそうな思いでしたが、私はあなたに認められようと必死に勉強を頑張りました。幼かった私にはそれしか方法が分からなかったのです。

 しかし最悪なことに、どんなに頑張っても私はあなたの前で素直になれなかったのでそれは意味はありませんでした。どうしてもあなたの前では、ツンと澄まし顔をして別に大したことないといった感じで振る舞ってしまいました。それは私が自分に自信が持てなくて、あなたに見捨てられたくないの思いで出来る人ぶってしまったのです。しかし、いつの間にかそれが精神にも染み付いてしまったのかあなたの前では素直になれなくなってしまったのです。今回手紙を書こうと思ったのは、あなたに直接愛していると言うことが出来ないのでこのような形で伝えておきたかったと思ったのも一つの要因です。どうかこのような形でしか愛を伝えられない私を許してください。あなたの前では、緊張していつもの澄まし顔になってしまうのです。それにこの歳になってやっと手紙を送ることを決意できた私の弱さを許してください。愛している人に手紙を書くというのは途方もなく緊張することだったのです。そのせいで家は書きかけの手紙だらけです。お父様には紙の無駄だと叱られましたが、この一通の手紙をなんとか仕上げ切りました。こんな短い文で想いが伝わるとは思いません。ですので、これから手紙を出しますのでよろしければ返事を書いていただけるととても嬉しいです。またお会いできる日を楽しみにしております。

                                                 敬具

                                       聖暦1256年3月14日
                            
                                       オレリア・ド・ローラン
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