審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第一章 七不思議の欠片

協力関係

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「それで貴方はどうするのよ。真摯に答えなさい」
「……渡辺ちゃんの熱意には、負けたよ。沢村さんは、あの計画を邪魔する為に必要なピースの一つだ。彼女を死なせる訳にはいかないから、君の手に余るようなら手伝うよ。でも僕自ら動くことはしないから。ただ安楽椅子に座ってるだけ。まっ、最悪な事態にならない限りはね」
「わたくしがついてて窮地に陥るとでも言いたいのかしら?」

 軽い気持ちで零した言葉が、鋭い視線となって返ってくることに思わず苦笑してしまう。渡辺ちゃんってそういうところが面白いんだよね。

 僕はタロット占いが得意だ。祖母の方がもっと鮮明に未来を占うことが出来るのだが、僕の場合はただの代理だ。 
 何度か、沢村さんに関して占ったことがある。
 大切な欠片である彼女がいなければ、成り立たない未来が横たわっているのだから、占いは必須だった。結果は死。彼女の持つ智慧を最大限に解放することなく、彼女は命を散らす。一度目を回避しても二度目を回避しても巻き込まれる運命にあった。
 その原因は明白だ。黒川くんが彼女を仲間として選んだから。でも、もし黒川くんが死ぬ未来があれば、今すぐにでも未完成の計画を発動させて、彼諸共俺も死ぬつもりだ。
 そうなってしまえば、渡辺ちゃんは沢村さんを守ることも出来ずに、僕の巻き添えになるんだろうけれど。

「その面を見ているだけで、貴方の考えていることが分かりますわよ」
「ごめんね」
「……わたくしに何かしらの落ち度があるのね。それでもわたくしは自分の出来る限りのことを致しますわ。全てが無駄になってしまったら、問答無用で貴方に手伝って貰いますからね。その辺り、理解してますこと?」
「いいよ。それで行こうか」

 僕が頷くと、渡辺ちゃんは安堵の息を吐いた。
 現時点での僕の占いによると、渡辺ちゃんは今回の沢村さんの危機に気付くことなく、幕を終えてしまうと示している。だから彼女は僕に助けを求めて正解だった。渡辺ちゃんも勘が冴えているよね。
 そろそろ教室に戻ろうと思って、手摺から手を離せば、渡辺ちゃんに「お待ちになって」と引き留められた。

「どうかしたの?」
「他にも聞きたいことがあるのよ。貴方、黒川とはどうするの?」
「どうするのって……」
「貴方の感情は分かってるつもりだわ。黒川も貴方のことばかり見ているじゃない。誰がどう見ても相思相愛よ」
「噓でしょ」

 思わず本音が零れた。

「見てるとこっちがじれったくなっちゃうんだから、早く告りなさい」

 一文で告げるように言われて、僕も狼狽する。

「いやいや、黒川くんが僕のことを好きな訳なくないかな。だって僕ら、話したことあまりないんだよ?」
「貴方は黒川のこと、どう思ってるの?」
「大好き、結婚したい」
「……あなたも立派な人間だった訳よ。告白なさいよ」

 渡辺ちゃんが溜息を吐く。呆れたような視線を向けられ、僕は押し黙った。

「――出来ないよ。僕が惹かれたのは似た者同士であって、全然違うからなんだ。きっとそれは黒川くんも感じてる。黒川くんの目的、そして僕の計画にとっても、僕たちは互いに邪魔な存在なんだ」
「だからって遠くから見ているつもりなのかしら? 黒川は月島くんやわたくしのターゲットと仲良くなりつつあるわ。孤高の獣が丸くなろうとしているとでも言うのかしら。そんな転換期に貴方は何もしないつもりなの?」

 渡辺ちゃんは痛いところを突いてくるなあ。
 僕だって黒川くんとはお近付きなりたいし、最終的には付き合いたい。どう転んでもプラトニックなお付き合いにはなるけれども、彼の隣にいたいと胸が訴えかける。
 でも今はどうしても駄目なんだ。どれだけ彼が欲しくても、計画倒れにする訳にはいかない。僕にも彼にも信念がある。

「どんなに欲しくても、手に入れられないものはあるんだよ」

 彼女の真っすぐとした瞳から逃れたくて、遠くを眺める。
 烏が二羽、道路へと降下していく姿が見えた。ぽろ、と道路に丸くて小さいものを落とす。どうやら道路を走る自動車を利用して、木の実の殻を割りたいようだ。それは躍動感溢れる生命を感じるものだった。僕とは違う。思わず自嘲する。

「まあ良いわ。兎にも角にも協力は頼んだわよ」
「うん、分かってるよ」

 そう言い返すと、渡辺ちゃんは少し不満げな様子で踵を返した。その後ろ姿を見送って、僕は校庭の端に立つ時計塔を見ると、そろそろ授業が終わってお昼の時間になる。
 渡辺ちゃんは、本当にタイミングを見計らうのが上手な女王様だな。自然と笑みが零れる。
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