審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第一章 七不思議の欠片

筒抜けな情報

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『はあ? 彼女は守護の対象者なのよ』
「黒川くんに任せる? きっとうまく事を運んでくれる」
『あの黒幕だって自分から泥水に足を突っ込んでいく莫迦よ?』

 おっしゃる通りで、と苦笑いを浮かべてしまう。

「そんなお莫迦さんはどんな様子?」
『特に遜色ないわ。でも自分から始めた癖に尻拭いに苦労してるところね。こういうのを何て言ったかしらね。そう、自業自得って言うわ』

 渡辺ちゃんが言い淀むことなく、皮肉を言う。

『あいつが始めたことに彼女を巻き込むのは、本当に辞めてほしいわね』
「それは確かに。でもグループを作っちゃったみたいだし、今後も起こりそうだね」
『グループ? チャットってことかしら?』
「違う違う。仲が良い人たちで集まるグループの方だよ」
『仲良くなられても困るわ』
「まあ、繋がっちゃった縁は中々切れないから」
『そうかしら。案外簡単に切れちゃうものよ』

 世間については渡辺ちゃんの方が詳しそうだ。

「そうなんだ。じゃあ僕たちの関係もすぐ切れちゃうかもね」
『何を言ってるのかしら。彼女を守るためなら、貴方なんかと切っても切れない関係になるわよ』
「渡辺ちゃんって僕の事、そんなに好きじゃないでしょ……」
『貴方だけじゃないわ』

 素っ気ない声が返ってきた。

「そ、そう。ともかく黒川くんは後手に回ってる感じなの?」
『まあそうね。そもそも相手が現実的じゃないし、前例も無いとか言ってたわ。わたくしだって未知数な相手と真正面から張り合おうだなんて出来ないわ。後手に回るのも仕方が無いんじゃないかしら』

 渡辺ちゃんの目にはそう映るらしい。

『それでも結論は出たみたいね』

 先ほどとは打って変わって真剣な声音が聞こえてきた。
 どうやら黒川くんは怪異を強力な切り札として有効だと判断したってことなのだろう。僕からしたら当たり前だと思うんだけどなあ。だって未知である故に能力値が高いのだから。

『今も三人で会話しているけれど、どうやら手段が限られているようね。もっと感度の高い盗聴器を用意すれば良かったわ。急遽用意させたから、そこまで良い性能じゃないのよね。少し聞き取りづらいわ……』
「それって一体誰に取りつけているの? 沢村さん?」
『鏡……? いえ、明日の夜八時に鏡を破壊しに行くつもりみたいだわ』

 僕のふとした疑問は流されてしまった。しかし渡辺ちゃんのおかげで、沢村さんたちの行動が筒抜けだ。確かに渡辺ちゃんとの協力関係も悪くないかも。だって黒川くんが無茶をしないか、気付けるから。

「ちょっとリスキーな行動に出たね。いや、でもフィフティフィフティなのかも。……このスピード性は気になるもんね」
『スピード? 何が気になるのかしら』
「仮に怪異とやらに目を付けられたら、狙われるのは僕たちの命だよね」

 渡辺ちゃんが『そうね』と頷く。

「対処しない限り、それは何処からでも襲い掛かってくる。現に沢村さんは自宅でも危なかったでしょ。つまり対処する時間が延びるほど危険度が高くなる。そう考えると、怪異が顕われて行動に移すまでの時間が異様に早いと思うんだ。たった一日でも後れを取ると危うい」
『それでどうするつもりなの? わたくしでも手に余るわ』

 手に余るどころか、こちらに助力を求めていなかったっけ? 僅かでも不満を漏らせば、渡辺ちゃんが拗ねちゃうから口を閉じる。
 しかし、一瞬の間すら見逃さない渡辺ちゃんが『ちょっと何か思ったでしょ』と鋭い声音を向けてくる。当たり障りなく「そんなことないよ」と返すが、信じて貰えたかどうか……。
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