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第二章 わたし、めりーさん
こっくりさんも幻?
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「こっくりさんって、テーブルターニングのことだよね?」
「……なんですと?」
目を丸くさせて、首を傾げる沢村さん。
「ぜんっぜん理解に及ばず、申し訳ないんだけど…??」
「僕もあんまり知らないんだけどね。こっくりさんって、確かテーブルターニングを起源にしていたんだと思う。元来幽霊を科学的に解明しようって動きは外国が先進的だったし、科学が発展したと同時にスピリチュアルの動きも見られた筈。そのスピリチュアルを扇動した出来事の一つがテーブルターニングなんだけど、降霊会と言うべきか、それとも占いの一種と言うべきか。僕からしたら後者なんだけどね」
「へええ。樋脇くんって幽霊のことも詳しいのね」
爛々とした目で僕を見つめてくる。まるで黒川くんみたいだ、と顔に出ている。「いや、黒川くんの方が詳しいんじゃないかな」と苦笑すれば、「ううん、私からしたらどっちも凄いよ!」と返された。
「僕の場合は、祖母が占いについて詳しいからね。たまたま知っていただけだよ」
「それでも凄いと思うよ。テーブルターニングって、頭にテーブルがついているくらいだし、本当にテーブルでも使用するの?」
テーブルでゲシュタルト崩壊しそうだ。
「うん、そうだよ。複数人が一つのテーブルを囲んで、幽霊を呼び出すんだ。するとテーブルが何かしらの反応を見せる。それこそ動いたり、ノック音が聞こえたりするみたいだよ。そこで質問をすると、また反応を返してくれるんだって」
「なんかシュールだねえ」
「ふふ、確かに。幽霊は時々ポルターガイストを起こすらしいから、おそらくポルターガイストを介して幽霊との対話を試みたんだろうね。仮に本当に幽霊を呼び出せることが出来たのなら、どうしてテーブルだけが動いたり音が聞こえたりするんだろうね」
「ああ~別に同じ部屋にいるのなら、壁でも天井でも音を立てれば良いもんね。確かにどうしてテーブルだけ……? それに幽霊だって素直にテーブルで反応を返すとか、律儀すぎて逆に怪しいって言うか」
「まあ、そうだね。僕が思うにテーブルターニングも人が動かしていたんじゃないかな」
「テーブルターニング、も?」
引っ掛かりを覚えたのか、沢村さんが聞き返した。不思議そうに首を傾げている。
そも幽霊や怪現象を人間が喚び出すことなんて不可能だ。あいつらは人間の言うことなんて聞かないし、仮に応じたとしても単なる気まぐれ。存在だって不確か。人間の定めた手順で彼らが歩みを止めるのか疑問だな。
「こっくりさんで幽霊や妖怪なんて呼べないよ」
現に僕も安易に呼び出せたことがない。
沢村さんが食い入るように僕を見た。
「……それはどうして?」
「人間は無意識の内に筋肉が動いてしまうんだ。コインが動く理由はそういうことだね」
「じゃあ私たちは無意識でコインを動かしているってことなの?」
「勿論それだけじゃないけどね。例えばこっくりさんを数人で呼び出したとする。呼び出せたかな、と思った人は、何かしらの質問をするよね」
沢村さんがうんうん、と頭を揺らす。
「その答えは予め僕たちの中にあるんだ。勿論僕たちは本当の答えを知らない。でも人は推論をすることが出来る生き物だ。別に根拠がなくても良いし、単なる予想でも良いんだ。つまり僕たちは偶然真実を当ててしまっても、全く違っていても、答えを知っている状態なんだよ」
「つまり真偽の程は確かじゃなくても、私たちの胸の奥に潜む考えが答えになっちゃうってこと??」
「まあ、そういうことだね。答えを知っていて、筋肉が無意識に動いてしまう。それらが相互作用を引き起こし、こっくりさんが降臨するんだ。……研究員さんがそう唱えていたんだよね」
付け足すように言っておく。
「ふうむ、結局こっくりさんも只の幻だったのね」
沢村さんが腕組みをして唸る。
「……なんですと?」
目を丸くさせて、首を傾げる沢村さん。
「ぜんっぜん理解に及ばず、申し訳ないんだけど…??」
「僕もあんまり知らないんだけどね。こっくりさんって、確かテーブルターニングを起源にしていたんだと思う。元来幽霊を科学的に解明しようって動きは外国が先進的だったし、科学が発展したと同時にスピリチュアルの動きも見られた筈。そのスピリチュアルを扇動した出来事の一つがテーブルターニングなんだけど、降霊会と言うべきか、それとも占いの一種と言うべきか。僕からしたら後者なんだけどね」
「へええ。樋脇くんって幽霊のことも詳しいのね」
爛々とした目で僕を見つめてくる。まるで黒川くんみたいだ、と顔に出ている。「いや、黒川くんの方が詳しいんじゃないかな」と苦笑すれば、「ううん、私からしたらどっちも凄いよ!」と返された。
「僕の場合は、祖母が占いについて詳しいからね。たまたま知っていただけだよ」
「それでも凄いと思うよ。テーブルターニングって、頭にテーブルがついているくらいだし、本当にテーブルでも使用するの?」
テーブルでゲシュタルト崩壊しそうだ。
「うん、そうだよ。複数人が一つのテーブルを囲んで、幽霊を呼び出すんだ。するとテーブルが何かしらの反応を見せる。それこそ動いたり、ノック音が聞こえたりするみたいだよ。そこで質問をすると、また反応を返してくれるんだって」
「なんかシュールだねえ」
「ふふ、確かに。幽霊は時々ポルターガイストを起こすらしいから、おそらくポルターガイストを介して幽霊との対話を試みたんだろうね。仮に本当に幽霊を呼び出せることが出来たのなら、どうしてテーブルだけが動いたり音が聞こえたりするんだろうね」
「ああ~別に同じ部屋にいるのなら、壁でも天井でも音を立てれば良いもんね。確かにどうしてテーブルだけ……? それに幽霊だって素直にテーブルで反応を返すとか、律儀すぎて逆に怪しいって言うか」
「まあ、そうだね。僕が思うにテーブルターニングも人が動かしていたんじゃないかな」
「テーブルターニング、も?」
引っ掛かりを覚えたのか、沢村さんが聞き返した。不思議そうに首を傾げている。
そも幽霊や怪現象を人間が喚び出すことなんて不可能だ。あいつらは人間の言うことなんて聞かないし、仮に応じたとしても単なる気まぐれ。存在だって不確か。人間の定めた手順で彼らが歩みを止めるのか疑問だな。
「こっくりさんで幽霊や妖怪なんて呼べないよ」
現に僕も安易に呼び出せたことがない。
沢村さんが食い入るように僕を見た。
「……それはどうして?」
「人間は無意識の内に筋肉が動いてしまうんだ。コインが動く理由はそういうことだね」
「じゃあ私たちは無意識でコインを動かしているってことなの?」
「勿論それだけじゃないけどね。例えばこっくりさんを数人で呼び出したとする。呼び出せたかな、と思った人は、何かしらの質問をするよね」
沢村さんがうんうん、と頭を揺らす。
「その答えは予め僕たちの中にあるんだ。勿論僕たちは本当の答えを知らない。でも人は推論をすることが出来る生き物だ。別に根拠がなくても良いし、単なる予想でも良いんだ。つまり僕たちは偶然真実を当ててしまっても、全く違っていても、答えを知っている状態なんだよ」
「つまり真偽の程は確かじゃなくても、私たちの胸の奥に潜む考えが答えになっちゃうってこと??」
「まあ、そういうことだね。答えを知っていて、筋肉が無意識に動いてしまう。それらが相互作用を引き起こし、こっくりさんが降臨するんだ。……研究員さんがそう唱えていたんだよね」
付け足すように言っておく。
「ふうむ、結局こっくりさんも只の幻だったのね」
沢村さんが腕組みをして唸る。
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