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第二章 わたし、めりーさん
4.遅刻してきた三人衆
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授業が終わり、俺は視線を左にずらした。そこには沢村が机へと覆いかぶさっていた。途中から居眠りを始め、本格的に寝ていた。教師の目が光ったようにも見えたので、沢村の点数は引かれるだろうな。まあ、自業自得ってやつだ。
するとバタバタと慌ただしい足音が聞こえ、教室の扉が勢いよく開いた。月島たちだった。
月島と千堂は息も荒々しく、その後ろにいた立川もずり落ちた眼鏡を上げていた。そのまま月島の席を囲んで、三人は重苦しい沈黙でお互いを見合っている。
目が死んでいるんだが……?
「遅刻か?」
そう聞くと、月島が「いやあ、まあちょっと、色々あってな」と苦笑した。
月島と千堂だけならともかく、立川がいると話が変わる。
「それで?」
話を促せば、月島の視線が俺を飛び越える。おそらく沢村を見たのだろう、横から小さく「あっ」と声が聞こえてきた。
沢村も巻き込まれる空気を察し、慌てて席を立とうと腰を浮かしたが、月島が「沢村も見てくれよ」と笑いかけたことで逃げ道を失った。苦虫を噛み潰したかのように沢村が顔を顰めた。先月、学園保護委員会からちょっかいを掛けられたことで、あまり俺たちと関わりたくないらしい。
俺はともかく、月島のような人気者と関われば周囲から鋭い視線が飛んでくる。とは言っても、人気者からの誘いを蹴ってしまえば、責めるような眼で見られる。どちらを選択しても地獄だ。沢村の空っぽな頭でも演算出来たようで、月島を無視することも叶わずに、「ええ、と」と口を開いた。
「何かあったの?」
沢村の返答に満足した月島が、沢村と俺に見えるよう、体をずらした。月島の机上にあったのは、一つの青い携帯電話だった。えらく年季の入ったもので、泥に塗れた痕も窺えた。
「何それ?」
「千堂が拾ってきたんですよ。登校中に道端でね」
腕を組んだ立川がそう答える。
「へえ」
沢村が物珍し気に頷くと、千堂が「そうなんだよお!」と大声を出した。教室内にいるクラスメイトたちが驚いてこちらを見やる。
その途端に、沢村の背中が小さくなった。目立ちたくないんだわ、と顔に出ている。……ここまで分かりやすいと、最早笑えてくるな。
「わり、何でもない!」
月島が周囲のクラスメイトに声を掛けると、彼らはすぐに自分らの世界へと戻っていった。その間に、俺たちはその怪しい携帯電話を眺める。
「よく拾ってきたな」
薄汚れた誰かの携帯電話を拾ってくる莫迦がいるのか? ――ここにいたか。
「本当にその通りですよ。僕だってそう言いました」
立川がやれやれ、と溜息を吐いた。
「ま、まあ、確かにこんなに怪しそうな物なんて拾って来ないよね……普通は……」
沢村も声を落として、そう言った。
「でしょう? だけど、こいつは人の話を聞かないんだ」
呆れ果てたような口調に、千堂が「何だとぉ!?」と立川へと掴みかかろうとした。だが、立川の「お母様」と言う一言に、仰け反るようにして離れていった。
どれだけ恐ろしい親なんだ、千堂の母親は。
「交番に届ければ良いんじゃないか」
拾ってしまったからには仕方がない。持ち主が探している可能性が全くの零ではないだろう。それなら、と提案してみたが、彼らは貝のように黙り込んでしまった。こいつらが一限をすっぽかした理由はそこにあるのか。
「それが……交番には届けたんだよな」
神妙な顔つきで月島が答える。
「それなら、どうしてここにあるんだ?」
するとバタバタと慌ただしい足音が聞こえ、教室の扉が勢いよく開いた。月島たちだった。
月島と千堂は息も荒々しく、その後ろにいた立川もずり落ちた眼鏡を上げていた。そのまま月島の席を囲んで、三人は重苦しい沈黙でお互いを見合っている。
目が死んでいるんだが……?
「遅刻か?」
そう聞くと、月島が「いやあ、まあちょっと、色々あってな」と苦笑した。
月島と千堂だけならともかく、立川がいると話が変わる。
「それで?」
話を促せば、月島の視線が俺を飛び越える。おそらく沢村を見たのだろう、横から小さく「あっ」と声が聞こえてきた。
沢村も巻き込まれる空気を察し、慌てて席を立とうと腰を浮かしたが、月島が「沢村も見てくれよ」と笑いかけたことで逃げ道を失った。苦虫を噛み潰したかのように沢村が顔を顰めた。先月、学園保護委員会からちょっかいを掛けられたことで、あまり俺たちと関わりたくないらしい。
俺はともかく、月島のような人気者と関われば周囲から鋭い視線が飛んでくる。とは言っても、人気者からの誘いを蹴ってしまえば、責めるような眼で見られる。どちらを選択しても地獄だ。沢村の空っぽな頭でも演算出来たようで、月島を無視することも叶わずに、「ええ、と」と口を開いた。
「何かあったの?」
沢村の返答に満足した月島が、沢村と俺に見えるよう、体をずらした。月島の机上にあったのは、一つの青い携帯電話だった。えらく年季の入ったもので、泥に塗れた痕も窺えた。
「何それ?」
「千堂が拾ってきたんですよ。登校中に道端でね」
腕を組んだ立川がそう答える。
「へえ」
沢村が物珍し気に頷くと、千堂が「そうなんだよお!」と大声を出した。教室内にいるクラスメイトたちが驚いてこちらを見やる。
その途端に、沢村の背中が小さくなった。目立ちたくないんだわ、と顔に出ている。……ここまで分かりやすいと、最早笑えてくるな。
「わり、何でもない!」
月島が周囲のクラスメイトに声を掛けると、彼らはすぐに自分らの世界へと戻っていった。その間に、俺たちはその怪しい携帯電話を眺める。
「よく拾ってきたな」
薄汚れた誰かの携帯電話を拾ってくる莫迦がいるのか? ――ここにいたか。
「本当にその通りですよ。僕だってそう言いました」
立川がやれやれ、と溜息を吐いた。
「ま、まあ、確かにこんなに怪しそうな物なんて拾って来ないよね……普通は……」
沢村も声を落として、そう言った。
「でしょう? だけど、こいつは人の話を聞かないんだ」
呆れ果てたような口調に、千堂が「何だとぉ!?」と立川へと掴みかかろうとした。だが、立川の「お母様」と言う一言に、仰け反るようにして離れていった。
どれだけ恐ろしい親なんだ、千堂の母親は。
「交番に届ければ良いんじゃないか」
拾ってしまったからには仕方がない。持ち主が探している可能性が全くの零ではないだろう。それなら、と提案してみたが、彼らは貝のように黙り込んでしまった。こいつらが一限をすっぽかした理由はそこにあるのか。
「それが……交番には届けたんだよな」
神妙な顔つきで月島が答える。
「それなら、どうしてここにあるんだ?」
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