審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第二章 わたし、めりーさん

凡……?

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「ああ、それなら役割のことじゃない?」
「えっ、何々? 樋脇くん、分かるの?」
「文章に書いてあったじゃない。占いが出来る人、守ることが出来る人、私たちを見届ける人、答えを知る人。人って指しているから、僕たちクラスの中から四人は行動する役割を与えられているんだよ。けれども彼らだけで、メリーさんが誰なのか分かるって話でもない。行動する役割は無くても、メリーさんを探す協力は他の人たちにだって出来るでしょ? つまり彼ら以外の役割、その他ってことじゃないかな」
「その他って……凡じゃん!!!!」
「あら、自分の顔を見てみなさいよ。貴方の何処を見ても平凡だと思いません?」

 真緒ちゃんは一言が多いんだから~~~~ッ。

「沢村さんは可愛いでしょ。勿論、渡辺ちゃんもね。可愛いと言うよりは、美麗っていうのかな?」
「樋脇くん~~!!!!」

 ひし、と抱き着きたいけど、真緒ちゃんの目の前じゃ無理だな。
 渡辺ちゃんを見れば、彼女は頬を赤く染め上げ、樋脇くんへと目をかっぴろげ、わなわなと震えている。な、なんか真緒ちゃんから妙な浮力? 重力? が見えるのだけれど、超能力が使える訳じゃないんだよね!?

「まあ、黒川くんたちが動いてくれるんでしょ。僕たちはのんびりと構えていれば良いじゃないかな」

 樋脇くんが、そんな様子の真緒ちゃんに言う。でもどうして真緒ちゃんに……?

「……そうね。彼ら自身で対処が可能でしたら、わたくしは何も言うことはありませんわ。不測の事態になったら早めに言うことね。介入は出来ても、救済は難しいのよ」

 ふう、と大きく息を吐いて、元に戻った真緒ちゃんは意味不明なことを並び立て、そのまま背を向けた。教室から出ていこうとして、その一歩手前で止まる。

「もう一度忠告はしておくわ。わたくしたちの警護の対象には貴方も含まれているのよ。今のところ、貴方への不満は抑えられているとしても、くれぐれも行動には注意することね。只でさえ、あの月島が貴方に陥落しているのだから」

 そう告げて、彼女は今度こそ出て行った。
 私はぽかり、と大きく口を開けて、呆然と見送る。自身の委員会を動かすべきか、見定めに来たのかもしれない。どの委員会よりも組織的と言うか、自立していると言うか。でも学園保護委員会の人たちが怪異を止められるとは思えない。相談する必要性はないわね。
 それに月島くんが私に陥落してるって? 
 只でさえ、殺しのロックオンをされていると言うのに、学校生活まで支障をきたす可能性があるとか困窮させないでよ。

「マジで困る……月島くんにとってお気に入りの玩具に過ぎないのに、そんな誤解が広まってるとか死んじゃう……」
「んー、玩具ではないと思うけどね」

 ハッとして、樋脇くんを見る。彼はほんの少し困った様子で笑っていた。

「月島くんも純真なんだよね。沢村さんと似てるようで、全然違う類の」
「……それって、どういう意味なの?」
「一言で言えば、欲に忠実って感じだよ。分かるでしょ」
「それは分かるけど、純真には見えないよ」
「あはは。渡辺ちゃんも同じこと言ってた。まあ、渡辺ちゃんも渡辺ちゃんで沢村さんのことを心配してるんだよ」
「えー、そうかな?」
「ツンデレだからね」
「それは言えてる」

 思わず笑みが零れる。

「僕も、もう行くね。帰る前に用があるから」

 樋脇くんは小さく手を振ると、真緒ちゃんを追いかけるように教室から出て行った。
 やっぱり二人は仲が良いかも。お互いが否定しているけれど、樋脇くんは真緒ちゃんを気にかけているし、真緒ちゃんも私たちとは違う態度で樋脇くんに接していると言うか。あれは本性を見せても動じないから、見せてるって感じもするような。
 ……それとも樋脇くんは救済の手を差し伸べているのかな。真緒ちゃんにも、私たちと同じ……。
 樋脇くんの机上には、彼の鞄が置かれたままだ。私は昏い目でそれをただ見つめた。
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