審判を覆し怪異を絶つ

ゆめめの枕

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第二章 わたし、めりーさん

一人目の『白』

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 そいつの狂乱ぶりに、教室内はあっという間に静まり返った。自分から声を掛けていく月島も様子を見ている。

「ふざけんなよっ! 俺だって信じてる訳じゃねえけど、クラス全員のスマホが一斉に鳴ったんだぜ。あの時から教室も何だか変わっちまった! 思いつめるような感覚じゃなくて、こう……何かっ、張り詰めてる感じがするんだ! 俺は昨日、怖くて眠れなかった! もしこれが悪戯だったのなら許せねえ。真実を知ってるやつがいたら、さっさと教えろよ!」

 きゃんきゃんと吠えやがって。面白味もない。

「まあさ、落ち着けよ。斎藤」

 月島が一度、頭をくしゃりと撫でつけて言う。あれが二人目の斎藤か。

「お前も不安なのは分かるけどな。お前がそう叫ぶと、皆が不安に思うんだわ。知ってるか? 集団の心理ってやつ。誰か一人でもそうやってパニックに陥ったらな、皆が疑い深くなる。そうして魔女狩りが始まるって訳さ」
「だけど、誰かが仕組んでるんだろ。そうでなきゃおかしいだろうよっ。このメールは一体何なんだ! 俺はメールなんて使ったことないしっ」

 確かに今はメッセージが主流だしな。

「ついさっき、自分で『信じてる訳じゃないけど』って言ってただろ。お前はこれが非現実的なものか疑ってる訳だ。でも証明は出来ない。勿論、オレたちの誰かがやったのかもしれねえけど、それも分からねえ。何が目的なのかもな。んでどうする? オレたちにメールを送ってきた正体不明のそいつの思い通りに、パニックになってみるか? そんでお前に嫌気がさしたオレに殴られてみる? お前が静かになるなら殴ってやっても良いぞ」
「いや、駄目だろ」

 俺が冷静に突っ込むと、皆が月島の冗談だと思ったのか、何人かは静かに笑った。そんな中、沢村だけは肩を震わせている。月島は本気で殴るつもりだったろう。

「まっ、誰も欠けていないところから見ても、そんなに気にする必要なんてあるか?」
「……でも」
「お前はこのクラスで一番のムードメーカーって自負してんだろ。クラスの輪を乱してどうする? それともお前自身がクラスの輪を滅茶苦茶にしたいと思ってんのか」
「そんなことねえよ!」

 斎藤が叫んだ。

「……悪かったよ。確かに俺が騒ぎ出したら、皆も余計に不安になるよな」

 それは少し自意識過剰だな。

「……月島の言う通りだ。皆もごめんな」

 そう言って、斎藤が頭を下げる。近くにいる生徒が「いいよ」「そんなことない」「気持ちは分かる」と各々声を掛けている。
 果たして斎藤がムードメーカーなのか疑問も残る。月島や師堂がこのクラスの中心人物と言っても過言ではない。教室内で何かしらのトラブルが起きたとしても、こいつらに任せておけば問題は解決する。
 だが、最終的にクラスを纏めるのは立川だ。立川は意外と放任主義で、自分たちで解決出来るのなら介入して来ないが、クラスが団結できていないと判断すれば、自分で指揮するタイプだな。まだ高校二年生なのに有能なことだ。

「何とか騒動が収まって良かったわね」

 沢村が傍観を決め込んでいた俺に言う。

「……ああ、まあな」
「何?」
「何でもない」

 ……誰も犠牲にならなかった。その意味を考えるに。いや、今は余計なことを考える暇はない。

「立川。お前に聞きたいことがあるんだ」

 自分の席に向かおうとする立川を引き留める。

「お前のところにメリーからのメールが届いていないか?」
「メリーの? ああ、深夜に届いたメールのことですかね。でもあれは悪戯でしょう。気にすること無いですよ」
「お前がそう思おうがどうでも良い。内容はどうだったんだ?」

 立川は面食らったような顔で、

「まあ……そうですね、僕は占う役に抜擢されたようです。今日、いや昨日ですかね。強制的に占わされまして、師堂くんは白だそうです」
「――『白』?」

 千堂が首を傾げる。
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