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朝日

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    綺麗に敷かれた布団の端を持ち、ずるずると引っ張って移動させた。

    もしかしたら春日部は『したい』って言ってくるかな、そしたらしちゃおうかなー、どうしよう、なんてちょっとだけ考えていた自分が恥ずかしい。
    自分から言ったくせに僕って面倒臭いヤツだな、と気付かれないよう苦笑いを漏らした。

「じゃ、寝よっか。」

    春日部はもう自分の布団に入っている。
照明を常夜灯に切り替え、僕も布団に入った。ひんやりとしていて、湯上がりには気持ちがいい。

「あ? そっちかよ。」

    薄暗闇から春日部の声が聞こえ、ガサガサと布団から這い出たような音もした。

    近づいてくる影。

「お前、もうちょっとそっち行けよ。」

    布団が捲られて、温かい塊が割り込んできた。

「えっ!?」
「だから、もうちょっとそっち行けって。……ああ。もういいぞ。ほら、頭上げろよ。」

    言われるままにすると、枕が外され春日部の腕が僕の頭の下に入ってきた。

    腕枕。

「えっと、朝飯8時だよな。20分前にアラームかけとくからな。じゃ、おやすみ。」
「……。」
「ん? 何で黙んだよ?」
「……一緒に、寝る、の…?」
「は? 一緒に寝ねーのか?」

    春日部はびっくりしているが、それが僕にはびっくりだった。

「いやいや、いいんだけど、布団、わざわざ離したのに?」
「あ? 偽装だろ? 朝、仲居さん、びっくりさせねぇ為の。」
「……あ、うん、……そっか、いや、そう、だった。あは、僕、酔っ払ってたみたい。一緒に寝よ。……休みの前の日はいつもそうしてるもんね。確かに明日も休みだしっ。うん、温かーい! おやすみ!」
「騒がしいヤツだな。」

    春日部は「ふあ」とあくびをし、もう一度「おやすみ」と言うと一分もしないうちに寝息をたて始めた。
    よほど疲れていたのだろう。風呂は意外と体力を使うし、慣れない運転疲れ、後は連夜のセックスの蓄積疲労。



    こんな狭い布団で、しかもセックスするわけじゃないのに、春日部は僕と一緒に寝てくれている。
    しかも、それを"普通のこと"として、なんてことないようにやってのけて。

    今日は僕の誕生日じゃなくて春日部の誕生日なのに、こんなに嬉しいことばかり。舞い上がり過ぎて昇天しそう。
    チンポも「カスカベダイスキダヨ!」とムクリと頭を出してきそうだが、春日部をゆっくり休ませたいから我慢する。
    何より、今はこの腕の中から出たくない。

    作り物みたいに綺麗な横顔にキスをして僕も目を瞑った。



    眠れないかも、なんて思っているうちに意識は遠退き、次に目を開けた時には、障子から淡い光が差していた。
    手元のスマホを見ると6時半。
    もう一眠りするよりも、風呂に入り目を覚ました方が良さそうだ。

    僕は春日部の腕の中をそっと抜け出し部屋の露天風呂へと向かう。
    浴衣を脱ぎ扉を開けると、肌を刺すような冷気に一瞬で包まれた。慌てて湯船に入るとザバーっと湯が溢れた。

    夜間は冷え込んだ為、昨晩よりも湯は少しぬるめだが、顎まで浸かれば問題ない。

    今はまだ山に隠れてる朝日を待ちながら、ゆっくり湯に浸かる贅沢にニンマリしていると、更なる贅沢が飛び込んで来た。

「うわ、寒っ。」

    僕と同じリアクションを取り、慌ててザブンと湯船に浸かる春日部。

「おはよう。春日部も起きたの?」
「くぅ、温けぇー。……お前なぁ、起きたの? じゃねーよ。俺も起こせよな。自分だけ朝日見ながら風呂なんて、ずりぃだろ。」
「ごめん、まだ眠いかと思って。」


    結局、山の間から昇ってくる朝日は見れなかった。
    方角が違ったらしい。
    それに気付いたのは、辺りが、かなり明るくなった頃。

    よく考えてみれば分かることを、湯中り寸前まで無駄にドキドキしながら待っていた僕たち。
    「間抜け過ぎだろ」とゲラゲラ笑いながら部屋に戻って、顔を見合わせてまた笑って。
    何度もぶり返してくる笑い。
    繰り返すうちに距離が段々と狭まって、唇が触れた。

    春日部からミントの味がする。露天風呂に入る前に歯を磨いていたようだ。僕はまだだったから、恥ずかしくなって、唇を離したら春日部の手が頭の後ろに触れて引き戻された。
    深い深いキスをしたらもう我慢が出来なくて、浴衣の胸元に手を突っ込んだ。
    乳首を触ると、春日部は気持ち良さそうに鼻を鳴らし、勃起したチンポに触れると、春日部も僕のものに触れてきた。

    布団に倒れ込むように横になって、僕はアナルを舐めながらチンポを扱き、春日部はしゃぶってくれた。

    証拠隠滅に互いのものを全部飲み込んで、一応換気の為に窓を開けた。そこで昨日セットしたアラームが鳴った。



    楽しい時間はあっという間。

    帰り道、雪道だけは僕が運転し、それ以外は春日部が運転した。
    すっかり運転には慣れたようで、もう肩に力は入っていない。
    ドライブの楽しさも覚え、次はどこ行こうかとか、車を買うなら何の車種にするか、なんて話をしながら帰った。
    マンションに戻ると、春日部はもう何度目か分からない「ありがとう」を僕にくれた。
    「マジ楽しかった」とも。
    とびきりの笑顔付きで。




    こうして、春日部の誕生日サプライズは大成功に終わった。
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