【完結】身代わりの仮婚約者になったら、銀髪王子に人生丸ごと買い占められた件

ななせくるみ

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第12話:冷徹王子の甘いおねだり

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「……っ、ふ……は……れん、もう……チャイム、鳴ったよ……?」

乱れた呼吸を整えようと、私は蓮の肩を弱々しく押し返した。けれど、彼は離れるどころか、私のうなじに顔を埋めたまま、深く、深く、私の香りを吸い込んだ。

「……行くな」

その声があまりに低くて、震えていたから。私は心臓が跳ね上がるのを感じた。そのまま抱き上げられるようにして、私たちは人目を避けるように黒塗りの最高級車へと乗り込んだ。

車内に入り、カーテンが閉められた瞬間。
蓮は、私の腰に腕を回して、そのまま自分の胸元にぐいっと引き寄せた。驚く私を無視して、彼は私の肩に頭を乗せ、まるで温もりを求める子供のように擦り寄ってくる。

「……れん? あの、さっきからどうしたの……?」

「……ひまり。さっきあの女に言われたこと、気にしてるだろう」

「え……?」

「俺にふさわしくないとか、借金のこととか……。……あんなの、どうでもいい。俺が、お前を離したくないんだ」

蓮の声が、耳元で切なく響く。
彼は私の制服の袖をぎゅっと掴むと、上目遣いで私を見つめてきた。その瞳は、いつもの支配者のものではなく、大好きな飼い主に置いていかれそうな、不安げな子犬そのものだった。

「お前は、俺のことが嫌いか? 金で縛り付ける俺が、憎いか?」

「っ……そんなこと、ないよ。蓮は、助けてくれたし……」

「なら……俺だけを見てろ。あんな女の言うことに傷つくな。……俺はお前がいないと、もうダメなんだ」

そう言って、蓮は私の手のひらに自分の頬を擦り寄せた。
ゴツゴツとした男らしい手なのに、私に触れる仕草はどこまでも脆くて、愛おしい。

彼はそのまま、私の指先一つ一つに、ちゅ、と小さな音を立ててキスを落としていく。

「……ひまり、おねがいだ。俺を置いていくな。……俺のそばにいろ。……いいな?」

「……っ、う、うん……」

私が小さくうなずくと、蓮の顔がパアッと明るくなった。
……と思ったら、次の瞬間。彼は私の唇を、吸い付くように深く、けれどとろけるほど甘く塞いだ。

「……約束だぞ。破ったら、本当に屋敷から出さないからな」

くすりと悪戯っぽく笑う彼の瞳には、やっぱり少しだけ「ドSな支配者」の光が混ざっていた。
でも、私に抱きつく腕の震えは止まっていなかった。

俺様なのに、甘えん坊。
私は、このずるすぎる王子の「子犬の皮を被った独占欲」に、もう一生抗えそうになかった。
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