【完結】身代わりの仮婚約者になったら、銀髪王子に人生丸ごと買い占められた件

ななせくるみ

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第16話:絶対零度の再会。王子の反逆

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屋上の扉が、重低音を響かせて蹴破られた。

「……そこまでだ、蓮」 

現れたのは、数人の黒服を従えた、冷徹な眼光を持つ男。
蓮の父親であり、一条グループの現当主だ。

その場にいるだけで空気が凍りつくような圧倒的な威圧感に、私は息をすることさえ忘れてしまう。

「父上……。なぜここに」

蓮は私を背中に隠すように一歩前へ出た。その手は、婚姻届を強く握りしめたまま、白く震えている。

「学園の騒ぎを聞きつけて来てみれば……。一億円で買った玩具に、本物の婚姻届を出そうなどと。狂ったか、蓮」

「玩具じゃない! ひまりは、俺の妻になる女だ!」

蓮の叫びが屋上に響き渡る。けれど、父親は鼻で笑うと、蔑むような視線を私に投げつけた。

「小娘、お前に選択肢をやろう。今すぐその男から離れ、この街を去るなら、親の借金はすべて帳消しにしてやろう。だが、もしこれ以上蓮に固執するなら……お前だけでなく、お前の親もろとも、二度と日の当たる場所へは戻れなくしてやる」

「っ……!」

身体がガタガタと震え出す。私のせいで、親まで……。
絶望に立ち尽くす私の手を、蓮が痛いくらいに強く、強く握りしめた。

「ひまり、聞くな……! こいつの言うことなんて、聞かなくていい!」

「蓮、どきなさい。その女は、我が一条家に泥を塗るだけの存在だ」

「断る。……俺からひまりを奪うなら、俺は今この瞬間、一条の名のすべてを捨てる!」

その言葉に、父親の目が冷酷に細められた。

「……面白い。ならば、力ずくで分からせてやるまでだ」

父親の合図とともに、黒服たちが一斉に距離を詰めてくる。
逃げ場のない屋上。蓮は私を抱き寄せ、耳元で熱く、けれど壊れそうな声で囁いた。

「ひまり、怖くない……俺が、絶対に守るから。……お前は俺だけを信じていろ」

降り出した雨が、私たちの視界を白く染めていく。
かつての「俺様王子」はもういない。ここにいるのは、たった一人の女を守るために、全世界を敵に回そうとする狂おしいほどの愛に満ちた男だった。

一条家のすべてを捨てようとする蓮と、それを許さない絶対的な支配。二人の愛を賭けた、本当の戦いが幕を開けた。
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