31 / 65
【第二章】蓮牙山同盟
【第三十話】ガンテスの主張
しおりを挟む
ガンテスはオトラス王国で有名な賊徒の頭領であり、その身柄を王国軍に引き渡せば、この村が攻められる事は無くなるだろう。
俺も、初めはそう考えていた。
ガンテスは当然処断されるだろうが、この村は守られるのだ。
しかしドライスによれば、ガンテスを引き渡してもこの村への侵攻は止まらないらしい。
「どうして、ガンテスを引き渡しても駄目なのですか?」
カラバ村長が言った。
またいつ、王国軍に攻められるか分からないのだ。
「確かに蓮牙山の頭領を差し出せば、王国からいち目置かれるだろう。しかし、王国軍は義理堅いとは言えない。何かと理由を付けて、また攻めて来るに違いないでしょう。もともと、王国軍はこの村を攻めて撃退されている。頭領一人を差し出した所で、許されるとは思えません」
もともと王国軍にいたドライスがそう言うのだから、おそらくその通りなのだろう。
だとすれば、ガンテスを差し出してもセトラ村にとっていい事は何も無い。
皆が、押し黙ってしまった。
「俺を、殺せ」
拘束されたまま地面に座っていたガンテスが言った。
「王国軍に突き出されても、どうせ俺は処断されるのだ。ここで殺されても、同じ事だろう」
冷静な口調だが、手が震えているのが見えた。
捕縛された時点で、命は諦めているのかもしれない。
「すぐに決める事は出来ない。村の存亡に関わる、大事な事なのだ」
カシュカがそう言うと、ガンテスは勢いよく顔を上げた。
「駄目なのだ、今すぐ殺せ」
「どうしてそんなに必死なのだ。自分の命だろう」
「俺の命だけなら、何も惜しくはない」
「じゃあ、どうして」
カシュカは、ガンテスをただ見下ろしていた。
「蓮牙山には、俺の他にもう一人頭領がいる。俺がこの村で捕らわれていると知ったら、取り戻そうとして必ずここにやって来るだろう」
ガンテスは、目に涙を浮かべていた。
声も震えている。
「もしもう一人の頭領が来たら、撃退するまでだ」
カシュカが言った。
「だから駄目なのだ。もう一人の頭領は、俺よりも強くはない。だから、カシュカとカイトだったか。お前たちに殺されてしまうだろう」
ガンテスが立ち上がろうとしたが、横で見張っていた自警団員が身体を押さえた。
「俺の為にそいつが殺されるのを見たくはない。だから俺を殺してくれれば、あいつは諦めて蓮牙山に帰ってくれるはずなんだ」
ついにガンテスの眼から涙がこぼれ落ちた。
よほど、もう一人の頭領の事を心配しているのだろう。
カシュカは、またも戸惑っているようだった。
「・・・たかが山賊が、そんなにも仲間を気遣うのか」
カシュカにとっては、理解出来ない事のようだった。
俺も、初めはそう考えていた。
ガンテスは当然処断されるだろうが、この村は守られるのだ。
しかしドライスによれば、ガンテスを引き渡してもこの村への侵攻は止まらないらしい。
「どうして、ガンテスを引き渡しても駄目なのですか?」
カラバ村長が言った。
またいつ、王国軍に攻められるか分からないのだ。
「確かに蓮牙山の頭領を差し出せば、王国からいち目置かれるだろう。しかし、王国軍は義理堅いとは言えない。何かと理由を付けて、また攻めて来るに違いないでしょう。もともと、王国軍はこの村を攻めて撃退されている。頭領一人を差し出した所で、許されるとは思えません」
もともと王国軍にいたドライスがそう言うのだから、おそらくその通りなのだろう。
だとすれば、ガンテスを差し出してもセトラ村にとっていい事は何も無い。
皆が、押し黙ってしまった。
「俺を、殺せ」
拘束されたまま地面に座っていたガンテスが言った。
「王国軍に突き出されても、どうせ俺は処断されるのだ。ここで殺されても、同じ事だろう」
冷静な口調だが、手が震えているのが見えた。
捕縛された時点で、命は諦めているのかもしれない。
「すぐに決める事は出来ない。村の存亡に関わる、大事な事なのだ」
カシュカがそう言うと、ガンテスは勢いよく顔を上げた。
「駄目なのだ、今すぐ殺せ」
「どうしてそんなに必死なのだ。自分の命だろう」
「俺の命だけなら、何も惜しくはない」
「じゃあ、どうして」
カシュカは、ガンテスをただ見下ろしていた。
「蓮牙山には、俺の他にもう一人頭領がいる。俺がこの村で捕らわれていると知ったら、取り戻そうとして必ずここにやって来るだろう」
ガンテスは、目に涙を浮かべていた。
声も震えている。
「もしもう一人の頭領が来たら、撃退するまでだ」
カシュカが言った。
「だから駄目なのだ。もう一人の頭領は、俺よりも強くはない。だから、カシュカとカイトだったか。お前たちに殺されてしまうだろう」
ガンテスが立ち上がろうとしたが、横で見張っていた自警団員が身体を押さえた。
「俺の為にそいつが殺されるのを見たくはない。だから俺を殺してくれれば、あいつは諦めて蓮牙山に帰ってくれるはずなんだ」
ついにガンテスの眼から涙がこぼれ落ちた。
よほど、もう一人の頭領の事を心配しているのだろう。
カシュカは、またも戸惑っているようだった。
「・・・たかが山賊が、そんなにも仲間を気遣うのか」
カシュカにとっては、理解出来ない事のようだった。
0
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる