47 / 50
【第四章】
【第四十七話】下山を見据えて
しおりを挟む
一年が、経ったのだ。
僕は寝る時、ふとそう思った。
散々な一年だったが、今はこうして穏やかな日々を送れている。
有り難いことだったが、いつまでもこうしてはいられなかった。
全ては、志のためなのだ。
僕はよく、そのように考えるようになっていた。
僕がこの世界に召喚された意味とは、【レジスタンス】のジョブが示しているのだ。
いつの間にか十九歳になったのか、と僕は思い、気付いたら眠りについていた。
◇◇◇◇◇
少しずつ、ハンス老人の動きについていけるようになっていた。
勝てはしないものの、ハンス老人に汗をかかせるくらいにはなっている。
修行の成果が、現れてきているのだ。
「ユキトは、監獄を抜けてきたのじゃったな」
その日の修行を終えると、ハンス老人が行った。
「はい」
「それでは、手配書が回っているのかもしれん」
それは、僕でも予想していたことだった。
脱走した囚人は、死刑しかないのだ。
「ユキト、名を変えなさい」
「えっ、名前ですか?」
「そうじゃ、ただでさえジョブの件で王国から目を付けられておるのに、脱獄までしたとなると、おそらく軍は血眼になって探しておることじゃろう」
「しかし、名前を変えると言っても、どうしたら・・・」
小屋に入ると、ヘルベルトとザイフェルトが夕食の支度をして待っていた。
暖炉の火のおかけで、中はとても暖かい。
◇◇◇◇◇
「名前か、たしかに必要だな」
ザイフェルトが言った。
「脱獄したという意味では、お主らも同じだろう」
「しかし、俺とヘルベルトは目立っていないし、ユキトと関わりがある事を知っている兵士も、ごく限られていた」
やはり軍から一番追われているのは、僕なのだろう、と思った。
ちなみに雪斗という名前にどんな意味が込められているのか、僕は知らない。
産まれたのは九月で、冬も雪も関係がないのだ。
「・・・アイラト」
全員が、僕を見た。
「適当に思い浮かんだだけなんだけどね」
「うん、悪くないと思います」
ヘルベルトが頷きながら言った。
「じゃ、よそではアイラトと呼ばせてもらうぜ」
ザイフェルトは、楽しそうだった。
そしてハンス老人の助言で、口調や言葉遣いも変えた方が良いとの事だった。
少々違和感があったが、何とか意識して生活するようになった。
「今年は例年に比べて雪解けが早い。三月になったら一度山を下りるぞ」
「山を下りてどうするんだ、ハンス老人」
ザイフェルトは興味深そうだった。
「冬の間に作った動物のなめし革を売りに行くだけだ。わしは、それ以外で山を下りることは滅多にない」
ハンス老人は、何かから隠れているのではないか。
ふと、そんな疑問が湧き上がった。
僕は寝る時、ふとそう思った。
散々な一年だったが、今はこうして穏やかな日々を送れている。
有り難いことだったが、いつまでもこうしてはいられなかった。
全ては、志のためなのだ。
僕はよく、そのように考えるようになっていた。
僕がこの世界に召喚された意味とは、【レジスタンス】のジョブが示しているのだ。
いつの間にか十九歳になったのか、と僕は思い、気付いたら眠りについていた。
◇◇◇◇◇
少しずつ、ハンス老人の動きについていけるようになっていた。
勝てはしないものの、ハンス老人に汗をかかせるくらいにはなっている。
修行の成果が、現れてきているのだ。
「ユキトは、監獄を抜けてきたのじゃったな」
その日の修行を終えると、ハンス老人が行った。
「はい」
「それでは、手配書が回っているのかもしれん」
それは、僕でも予想していたことだった。
脱走した囚人は、死刑しかないのだ。
「ユキト、名を変えなさい」
「えっ、名前ですか?」
「そうじゃ、ただでさえジョブの件で王国から目を付けられておるのに、脱獄までしたとなると、おそらく軍は血眼になって探しておることじゃろう」
「しかし、名前を変えると言っても、どうしたら・・・」
小屋に入ると、ヘルベルトとザイフェルトが夕食の支度をして待っていた。
暖炉の火のおかけで、中はとても暖かい。
◇◇◇◇◇
「名前か、たしかに必要だな」
ザイフェルトが言った。
「脱獄したという意味では、お主らも同じだろう」
「しかし、俺とヘルベルトは目立っていないし、ユキトと関わりがある事を知っている兵士も、ごく限られていた」
やはり軍から一番追われているのは、僕なのだろう、と思った。
ちなみに雪斗という名前にどんな意味が込められているのか、僕は知らない。
産まれたのは九月で、冬も雪も関係がないのだ。
「・・・アイラト」
全員が、僕を見た。
「適当に思い浮かんだだけなんだけどね」
「うん、悪くないと思います」
ヘルベルトが頷きながら言った。
「じゃ、よそではアイラトと呼ばせてもらうぜ」
ザイフェルトは、楽しそうだった。
そしてハンス老人の助言で、口調や言葉遣いも変えた方が良いとの事だった。
少々違和感があったが、何とか意識して生活するようになった。
「今年は例年に比べて雪解けが早い。三月になったら一度山を下りるぞ」
「山を下りてどうするんだ、ハンス老人」
ザイフェルトは興味深そうだった。
「冬の間に作った動物のなめし革を売りに行くだけだ。わしは、それ以外で山を下りることは滅多にない」
ハンス老人は、何かから隠れているのではないか。
ふと、そんな疑問が湧き上がった。
0
あなたにおすすめの小説
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
【完結保証】科学で興す異世界国家 ~理不尽に死んだ技術者が、「石炭」と「ジャガイモ」で最強を証明する。優秀な兄たちが膝を折るまでの建国譚~
Lihito
ファンタジー
正しいデータを揃えた。論理も完璧だった。
それでも、組織の理不尽には勝てなかった。
——そして、使い潰されて死んだ。
目を覚ますとそこは、十年後に魔王軍による滅亡が確定している異世界。
強国の第三王子として転生した彼に与えられたのは、
因果をねじ曲げる有限の力——「運命点」だけ。
武力と経済を握る兄たちの陰で、継承権最下位。後ろ盾も発言力もない。
だが、邪魔する上司も腐った組織もない。
今度こそ証明する。科学と運命点を武器に、俺のやり方が正しいことを。
石炭と化学による国力強化。
情報と大義名分を積み重ねた対外戦略。
準備を重ね、機が熟した瞬間に運命点で押し切る。
これは、理不尽に敗れた科学者が、選択と代償を重ねる中で、
「正しさ」だけでは国は守れないと知りながら、
滅びの未来を書き換えようとする建国譚。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
勘当された少年と不思議な少女
レイシール
ファンタジー
15歳を迎えた日、ランティスは父親から勘当を言い渡された。
理由は外れスキルを持ってるから…
眼の色が違うだけで気味が悪いと周りから避けられてる少女。
そんな2人が出会って…
神様の失敗作ガチャを引かされた俺(元SE)、ハズレ女神たちと寂れた異世界を「再創生(リ・ジェネシス)」する
月下花音
ファンタジー
過労死した社畜SE・天野創が転生したのは、創造神に見捨てられた「廃棄世界」。
そこで待っていたのは、ポンコツすぎて「失敗作」の烙印を押された三人の女神たちだった。
「麦が生えない? ……ああ、これ土壌パラメータの設定ミスですね」
「家が建たない? ……設計図(仕様書)がないからですよ」
創は持ち前の論理的思考と管理者権限を駆使し、彼女たちの「バグ(欠点)」を「仕様(個性)」へと書き換えていく。
これは、捨てられた世界と女神たちを、最強の楽園へと「再創生」する物語。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる