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【第四章】
【第四十九話】替天行道
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~王国暦七一〇年 三月~
この所、雪が降る日が少なくなっている。
下山出来る日も近いのだろう、と僕は思った。
「やっと出来たぞ」
ザイフェルトが、達成感に満ちた顔で言った。
ザイフェルトの提案で、僕が語った内容を文字にして、それを冊子に束ねることになったのだ。
それが、ようやく完成したようなのだ。
語ると言っても、僕の考えをぽつりぽつりと出しただけで、とても脈絡など無いものだったが、ザイフェルトが上手くそれをまとめていた。
この国はどう在るべきなのか、志とは何か。
ひたすら、僕はそれを喋っただけである。
当事者が僕だと分からないようにはなっている。
しかし、自分が理不尽な理由で罪人になった事も語った。
その方が、人の心を惹き付けると思ったからだ。
「ハンス老人、まずはあなたが読んでくれ」
ザイフェルトは、数枚の紙を束ねただけの冊子を、ハンス老人に渡した。
文章は、そこまで長くはない。
すぐにハンス老人は読み終え、冊子をザイフェルトに返した。
「どうだった・・・?」
「・・・」
ハンス老人は、何とも言えない表情をしたまま、黙り込んだ。
ハンス老人のそんな姿は、見たことがなかった。
「わ、分かりにくかったのか」
「俺にも読ませてくれないか」
ヘルベルトがそう言うと、ザイフェルトは手渡した。
「これは」
読み終えると、ヘルベルトは唇を震わせていた。
「ど、どうしたんだ」
「心が、打ち震えた」
ザイフェルトに冊子を返す時、ヘルベルトの手も震えていた。
「自分がこの腐敗した王国に対して、何をすればいいのか。それを、よく考えさせられる内容だった」
「わしも、年甲斐もなく熱いものが込み上げてくる」
ハンス老人も、絶賛だったのだ。
僕も読んだが、たしかに深い内容にまとめられていた。
自分で語ったものだったが、文章次第でこうも刺さるものになるとは思わなかった。
翌日から、ヘルベルトはその冊子を書き写し始めた。
その日のうちに四冊の冊子を作り、それぞれが自分の物として持つようになった。
今後もヘルベルトが手書きで書き写し、数を増やしていくそうだ。
「そう言えば、題名を決めていないな」
ザイフェルトがそう言うので、僕は束の間考えた。
日本にいた時に読んだ中国の歴史書で、似たようなものがある事を思い出した。
「替天行道」
ぽつりと、僕は言った。
「「たいてんぎょうどう?」」
ヘルベルトとザイフェルトが、声を合わせて聞き返す。
「うん、替天行道。『天に替わって道を行く』って意味だよ」
この所、雪が降る日が少なくなっている。
下山出来る日も近いのだろう、と僕は思った。
「やっと出来たぞ」
ザイフェルトが、達成感に満ちた顔で言った。
ザイフェルトの提案で、僕が語った内容を文字にして、それを冊子に束ねることになったのだ。
それが、ようやく完成したようなのだ。
語ると言っても、僕の考えをぽつりぽつりと出しただけで、とても脈絡など無いものだったが、ザイフェルトが上手くそれをまとめていた。
この国はどう在るべきなのか、志とは何か。
ひたすら、僕はそれを喋っただけである。
当事者が僕だと分からないようにはなっている。
しかし、自分が理不尽な理由で罪人になった事も語った。
その方が、人の心を惹き付けると思ったからだ。
「ハンス老人、まずはあなたが読んでくれ」
ザイフェルトは、数枚の紙を束ねただけの冊子を、ハンス老人に渡した。
文章は、そこまで長くはない。
すぐにハンス老人は読み終え、冊子をザイフェルトに返した。
「どうだった・・・?」
「・・・」
ハンス老人は、何とも言えない表情をしたまま、黙り込んだ。
ハンス老人のそんな姿は、見たことがなかった。
「わ、分かりにくかったのか」
「俺にも読ませてくれないか」
ヘルベルトがそう言うと、ザイフェルトは手渡した。
「これは」
読み終えると、ヘルベルトは唇を震わせていた。
「ど、どうしたんだ」
「心が、打ち震えた」
ザイフェルトに冊子を返す時、ヘルベルトの手も震えていた。
「自分がこの腐敗した王国に対して、何をすればいいのか。それを、よく考えさせられる内容だった」
「わしも、年甲斐もなく熱いものが込み上げてくる」
ハンス老人も、絶賛だったのだ。
僕も読んだが、たしかに深い内容にまとめられていた。
自分で語ったものだったが、文章次第でこうも刺さるものになるとは思わなかった。
翌日から、ヘルベルトはその冊子を書き写し始めた。
その日のうちに四冊の冊子を作り、それぞれが自分の物として持つようになった。
今後もヘルベルトが手書きで書き写し、数を増やしていくそうだ。
「そう言えば、題名を決めていないな」
ザイフェルトがそう言うので、僕は束の間考えた。
日本にいた時に読んだ中国の歴史書で、似たようなものがある事を思い出した。
「替天行道」
ぽつりと、僕は言った。
「「たいてんぎょうどう?」」
ヘルベルトとザイフェルトが、声を合わせて聞き返す。
「うん、替天行道。『天に替わって道を行く』って意味だよ」
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