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【第一章】旅立ち
【第二話】どうやら異世界
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ドラシア王国。
その名前に、俺は聞き覚えがあった。
【オールテア・ストーリー】。
連想されるように、そのタイトルが思い浮かぶ。
それは、俺が最近までプレイしていたゲームだった。
ドラシア王国というのは、そのゲーム内の世界に登場する王国である。
「・・・ドラシア、王国」
「ユキト? あんた大丈夫かい?」
返事が無いのを気にしたのか、サーランが厨房から俺の方を伺っていた。
「ここは、本当にドラシア王国なんですか?」
「なにさぁ、ホントだよ」
サーランは、かすかに首を傾げ、再び厨房に戻った。
段々と、思い出してきた。
俺はここ最近、【オールテア・ストーリー】を夢中でプレイしていた。
そして全クリした。
ラスボスはもちろん、裏ボスも倒し、やり込み要素もコンプリートしたのである。
そして俺はスタッフロールを見届け、あまりの疲労にそのまま眠った。
そして目が覚めると、ここに居たというわけだ。
「ゲームの中に・・・、入ってしまったのか」
鳥肌が立つのをはっきりと自覚する。
部屋から見た街並みや港も、そう言えば見覚えがあった。
間違いなかった。
「手が止まってるよ、そんなに不味かったのかい?」
「あっ、そんな事はないです!」
我に返り、朝食を再開する。
味は良かった。
食べ終わると、サーランがすぐに食器を下げに来て、食後のコーヒーを出してくれた。
「ありがとう、ございます・・・」
「サービスさ。ユキトあんた、一文無しなんだろ?」
「はい・・・」
俺の私物は何一つ無く、今着ているジャージだけが唯一の私物だった。
「まぁ、どんな事情があったのかは知らないけどね。早いところ、仕事を見つけなくちゃ」
サーランは笑顔でそう言い、冊子の様な紙の束を手渡してきた。
この世界の、新聞だった。
「求人案内とか載ってるから、参考にでもと思ってさぁ!」
俺の肩を強く叩き、サーランは厨房に消えた。
新聞に目を落とすと、ある事に気付く。
見た事もない文字なのに、書いてある内容が理解出来たのだ。
一文字ずつは分からなくても、文字列を流して見ると文章として意味が頭に入ってくる。
不思議な感覚だった。
やはりここは、俺が今まで居た世界ではないのだ。
手が震えはじめ、次第に腕も震え、気付けば全身が震えていた。
恐怖や絶望からくる震えではない。
抑えきれない程の、期待と興奮。
夢にまで見た、異世界だ。
「やった・・・、やったぞっ・・・」
ここが本当に【オールテア・ストーリー】の世界なら、俺はハッピーエンドになるはずだと思った。
なぜならそのゲームは、「サクサク進めるRPG」というキャッチフレーズ通り、低難易度のゲームとして有名だったからだ。
その名前に、俺は聞き覚えがあった。
【オールテア・ストーリー】。
連想されるように、そのタイトルが思い浮かぶ。
それは、俺が最近までプレイしていたゲームだった。
ドラシア王国というのは、そのゲーム内の世界に登場する王国である。
「・・・ドラシア、王国」
「ユキト? あんた大丈夫かい?」
返事が無いのを気にしたのか、サーランが厨房から俺の方を伺っていた。
「ここは、本当にドラシア王国なんですか?」
「なにさぁ、ホントだよ」
サーランは、かすかに首を傾げ、再び厨房に戻った。
段々と、思い出してきた。
俺はここ最近、【オールテア・ストーリー】を夢中でプレイしていた。
そして全クリした。
ラスボスはもちろん、裏ボスも倒し、やり込み要素もコンプリートしたのである。
そして俺はスタッフロールを見届け、あまりの疲労にそのまま眠った。
そして目が覚めると、ここに居たというわけだ。
「ゲームの中に・・・、入ってしまったのか」
鳥肌が立つのをはっきりと自覚する。
部屋から見た街並みや港も、そう言えば見覚えがあった。
間違いなかった。
「手が止まってるよ、そんなに不味かったのかい?」
「あっ、そんな事はないです!」
我に返り、朝食を再開する。
味は良かった。
食べ終わると、サーランがすぐに食器を下げに来て、食後のコーヒーを出してくれた。
「ありがとう、ございます・・・」
「サービスさ。ユキトあんた、一文無しなんだろ?」
「はい・・・」
俺の私物は何一つ無く、今着ているジャージだけが唯一の私物だった。
「まぁ、どんな事情があったのかは知らないけどね。早いところ、仕事を見つけなくちゃ」
サーランは笑顔でそう言い、冊子の様な紙の束を手渡してきた。
この世界の、新聞だった。
「求人案内とか載ってるから、参考にでもと思ってさぁ!」
俺の肩を強く叩き、サーランは厨房に消えた。
新聞に目を落とすと、ある事に気付く。
見た事もない文字なのに、書いてある内容が理解出来たのだ。
一文字ずつは分からなくても、文字列を流して見ると文章として意味が頭に入ってくる。
不思議な感覚だった。
やはりここは、俺が今まで居た世界ではないのだ。
手が震えはじめ、次第に腕も震え、気付けば全身が震えていた。
恐怖や絶望からくる震えではない。
抑えきれない程の、期待と興奮。
夢にまで見た、異世界だ。
「やった・・・、やったぞっ・・・」
ここが本当に【オールテア・ストーリー】の世界なら、俺はハッピーエンドになるはずだと思った。
なぜならそのゲームは、「サクサク進めるRPG」というキャッチフレーズ通り、低難易度のゲームとして有名だったからだ。
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