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花はしばらくすると散ってしまった。丁度そのころ庭師の男が鉢植えを取りに来た。
ひまわりの種は庭の何もなかった場所に並べて植える。
種を植えてぼんやりと塀を見ると猫が一匹ゆっくりと歩いていた。
この辺では見ない猫だった。
「にゃあ」
大人なのに恥ずかしいと思わなくもない。
けれど、つやりとした毛並みの美しい白猫がかわいかったのがいけない。
猫はこちらをみて「ニャア」と返事をすると、それから数歩塀の上を進んで、庭とは反対側に降りてしまった。
毛並みが美しかったからこの辺の猫なのだろう。
この辺と言っても近くに家は無い。遠くのうちで飼っていてここが散歩コースなのだろう。
「ほんとかわいかったんだ」
「そうかい。めずらしいもんだ」
そりゃあ、そうだ。
この家の周りには民家はまばらだ。
「兄さん。そうじゃない」
「……もしかしてあれが妖怪っていう話じゃ」
「ないな。さすがにこの屋敷に妖怪が来たら、俺も気配を感じるさ」
それに、新年会に猫っぽい見た目いただろう。そこにそのねこさんはいたかい?
彦三郎に言われて思い出そうとするがあんな綺麗な白猫はいなかった気がした。
「じゃあ、何が珍しかったんだよ」
俺が聞くと、彦三郎はにやりと笑う。
「猫とか犬ってやつは俺みたいな悪霊みたいなもんが大嫌いなんだよ」
基本的にはな。
そう言って彦三郎はつづけた。
「だから、この家に犬だの猫だのってもんは寄り付かない。
昔、まだ俺に力があった時は別だったんだけどな」
その言葉でようやく彦三郎が何を言いたかったのかが分かった。
もしかしたら彼に力が戻ってきているのかもしれない。
ぬか喜びになってしまうかもしれない。
ここからがが長いのかもしれない。そんなことはちゃんと分かっている。
「や、やったな!!」
けれど自分から出た声はとても高揚していて、嬉しさがあふれてしまっている。
「なあ兄さんは、俺がここを出れたらどうする?」
彦三郎は笑顔を浮かべながら聞いた。
彦三郎が好きに生きられるようになったら、俺はどうするのだろう。
彦三郎がもうここにいたくないと言ったらお世話係はもう必要ない。
これからどうするのか。
「普通に仕事をして、普通に暮らすよ」
それで、彦三郎と一緒に花見をして、夏は一緒にアイスを食べて、秋には縁日に一緒に行って、冬は、雪うさぎを今度こそ一緒に作るのだ。
そう伝えると、彦三郎は「そうだな。そういう生活もいいな」と言った。
いつか叶うかもしれない約束に、心がふわふわとした。
ひまわりの種は庭の何もなかった場所に並べて植える。
種を植えてぼんやりと塀を見ると猫が一匹ゆっくりと歩いていた。
この辺では見ない猫だった。
「にゃあ」
大人なのに恥ずかしいと思わなくもない。
けれど、つやりとした毛並みの美しい白猫がかわいかったのがいけない。
猫はこちらをみて「ニャア」と返事をすると、それから数歩塀の上を進んで、庭とは反対側に降りてしまった。
毛並みが美しかったからこの辺の猫なのだろう。
この辺と言っても近くに家は無い。遠くのうちで飼っていてここが散歩コースなのだろう。
「ほんとかわいかったんだ」
「そうかい。めずらしいもんだ」
そりゃあ、そうだ。
この家の周りには民家はまばらだ。
「兄さん。そうじゃない」
「……もしかしてあれが妖怪っていう話じゃ」
「ないな。さすがにこの屋敷に妖怪が来たら、俺も気配を感じるさ」
それに、新年会に猫っぽい見た目いただろう。そこにそのねこさんはいたかい?
彦三郎に言われて思い出そうとするがあんな綺麗な白猫はいなかった気がした。
「じゃあ、何が珍しかったんだよ」
俺が聞くと、彦三郎はにやりと笑う。
「猫とか犬ってやつは俺みたいな悪霊みたいなもんが大嫌いなんだよ」
基本的にはな。
そう言って彦三郎はつづけた。
「だから、この家に犬だの猫だのってもんは寄り付かない。
昔、まだ俺に力があった時は別だったんだけどな」
その言葉でようやく彦三郎が何を言いたかったのかが分かった。
もしかしたら彼に力が戻ってきているのかもしれない。
ぬか喜びになってしまうかもしれない。
ここからがが長いのかもしれない。そんなことはちゃんと分かっている。
「や、やったな!!」
けれど自分から出た声はとても高揚していて、嬉しさがあふれてしまっている。
「なあ兄さんは、俺がここを出れたらどうする?」
彦三郎は笑顔を浮かべながら聞いた。
彦三郎が好きに生きられるようになったら、俺はどうするのだろう。
彦三郎がもうここにいたくないと言ったらお世話係はもう必要ない。
これからどうするのか。
「普通に仕事をして、普通に暮らすよ」
それで、彦三郎と一緒に花見をして、夏は一緒にアイスを食べて、秋には縁日に一緒に行って、冬は、雪うさぎを今度こそ一緒に作るのだ。
そう伝えると、彦三郎は「そうだな。そういう生活もいいな」と言った。
いつか叶うかもしれない約束に、心がふわふわとした。
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