王家の影ですので

渡辺 佐倉

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王家の話合いについて2

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「案というのは?」

父王に聞かれてルイスが答える。


「今まで魔術塔に通って編み出したものですが」

ルイスは話し始めた。
魔術塔というのは国家が認めた高い技術を持つ魔術師たちがその技術を研鑽するための施設だ。

様々な新しい魔法理論や新しい技術、魔法の効率化等が行われている。
かなり長い期間、魔術塔の後ろ盾として王太子が様々な研究に資金を投入し、そして成功に導いていることは有名な話だった。
魔法使い達は王太子を信頼し、また忠誠を誓う者すらいる。


それはルイスが、王太子として、次の王としてふさわしいとすることの理由の一つになっていた。


「案は二つ。一つは彼の同意をとらないといけませんが……。
一つは架空の妃を娶ってその偽の姿を魔法で映し出すものです」

はあ、という王妃のため息が聞こえた。
無理な物は無理なのだ。

「もう一つの方法は、カイルに子を孕んでもらう方法です」


そう言ったところでルイスの弟は茶も飲んでいないのに、せき込むように何かを吐き出した。

「は?兄さん本気ですか?」
「勿論お前の子を養子にする方が早いとは思っているが、政争がおきるリスクはあるな」

王と、王子の父が違う。
王子の父を担いで実権を握ろうとする不届きものが出てもおかしくない。
ルイスとしては別段それで政争に敗れたふりをして表舞台を離れるのでもいい。
現在味方をしてくれている貴族たちに被害が最小限で留まるなら。

「その場合、名目上の母親が必要になるだろう。
まさかそれも魔法で作り出すつもりか?」

父王が聞いた。

「嘘は多すぎると瓦解しやすいですから、この案は二つ同時には行いません。
その場合理解のある女性と表向き結婚をします」

この国で同性婚は認められていない。
市井では同性にも祝福を与える教会があるという話だが、王侯で行っているものはいない。

「その女性の候補の絞り込みは?」

確認の様に父王は言った。

「候補はおります」

ルイスは言った。

「資料を回すように」

父王は言った。

「理解のある女性と形だけの結婚をして、あの影を愛人とするだけではだめなのですか?」

王妃は聞いた。
ルイスは穏やかに笑った。

けれどそれは作られた王太子としての笑顔だった。


「そして、適当なタイミングでカイルを暗殺する。
そうなるに決まってるし。私がそのことを知っている立場ならそうします」

それを防ぐためには彼を守るしかない。
守るために彼を離宮にでも押し込める。

それは彼の臣下たちが許さない。

「架空の姫君と結婚する場合も、彼に子を産んでもらう場合も、彼が万が一その立場の所為で暗殺されるようなことがあれば事実を公表します」

国はどうなる事でしょうね。とルイスは笑った。

「彼に仕事を引退させるつもりは?」

父王は聞いた。

「今のところありませんね」
「私が彼に過酷な任務を与えたら」
「意味のあるものならどうぞ。けれど私が王になったら彼に命令を与えられるのは私だけだ」

それに、とルイスは付け加えた。

「彼の仕事が後ろ暗く、血なまぐさく、命を落とす可能性があることくらいずっとわかっていることですよ。
それを与えているのが私たちだという事も。
だから、通常の任務で彼が命を落とすならそれは今まで通りのこと、という事になります」

ふむ、と父王は考える仕草をした。

「彼が彼岸の者となったとして、私が他のものを抱けるかというと無理でしょうけどね」

ルイスは自嘲気味に笑った。

「あの影の幻影を令嬢にかけて、令嬢があの男に見える魔法をかけるというのは?」

王妃が最後の希望をかけるように言った。

「昨日までだったら何度かは騙されたかもしれません。だけど本物を知ってしまった今は多分無理でしょうね」

ぐう、とうなるように王妃はハンカチをくしゃくしゃに握りつぶした。

「他の方法は?」
「弟が王位を継ぐまでのつなぎでいるのが一番穏当だとは思いますよ。王兄として即位後もサポートできることはしますし」

王位継承から離れて変わり者としてカイルと余生を過ごす。
それがルイスにとって一番の幸せの形だった。

「まずは魔術塔の責任者を呼び、事の内容及びそれをどの程度秘匿できるかの確認を行う。
それでいいか?」
「御意」

どちらにせよこれでしばらくは妃選びという面倒事から遠ざかれる。ルイスは父王に是を返した。

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