13 / 14
王家の話合いについて2
しおりを挟む
「案というのは?」
父王に聞かれてルイスが答える。
「今まで魔術塔に通って編み出したものですが」
ルイスは話し始めた。
魔術塔というのは国家が認めた高い技術を持つ魔術師たちがその技術を研鑽するための施設だ。
様々な新しい魔法理論や新しい技術、魔法の効率化等が行われている。
かなり長い期間、魔術塔の後ろ盾として王太子が様々な研究に資金を投入し、そして成功に導いていることは有名な話だった。
魔法使い達は王太子を信頼し、また忠誠を誓う者すらいる。
それはルイスが、王太子として、次の王としてふさわしいとすることの理由の一つになっていた。
「案は二つ。一つは彼の同意をとらないといけませんが……。
一つは架空の妃を娶ってその偽の姿を魔法で映し出すものです」
はあ、という王妃のため息が聞こえた。
無理な物は無理なのだ。
「もう一つの方法は、カイルに子を孕んでもらう方法です」
そう言ったところでルイスの弟は茶も飲んでいないのに、せき込むように何かを吐き出した。
「は?兄さん本気ですか?」
「勿論お前の子を養子にする方が早いとは思っているが、政争がおきるリスクはあるな」
王と、王子の父が違う。
王子の父を担いで実権を握ろうとする不届きものが出てもおかしくない。
ルイスとしては別段それで政争に敗れたふりをして表舞台を離れるのでもいい。
現在味方をしてくれている貴族たちに被害が最小限で留まるなら。
「その場合、名目上の母親が必要になるだろう。
まさかそれも魔法で作り出すつもりか?」
父王が聞いた。
「嘘は多すぎると瓦解しやすいですから、この案は二つ同時には行いません。
その場合理解のある女性と表向き結婚をします」
この国で同性婚は認められていない。
市井では同性にも祝福を与える教会があるという話だが、王侯で行っているものはいない。
「その女性の候補の絞り込みは?」
確認の様に父王は言った。
「候補はおります」
ルイスは言った。
「資料を回すように」
父王は言った。
「理解のある女性と形だけの結婚をして、あの影を愛人とするだけではだめなのですか?」
王妃は聞いた。
ルイスは穏やかに笑った。
けれどそれは作られた王太子としての笑顔だった。
「そして、適当なタイミングでカイルを暗殺する。
そうなるに決まってるし。私がそのことを知っている立場ならそうします」
それを防ぐためには彼を守るしかない。
守るために彼を離宮にでも押し込める。
それは彼の臣下たちが許さない。
「架空の姫君と結婚する場合も、彼に子を産んでもらう場合も、彼が万が一その立場の所為で暗殺されるようなことがあれば事実を公表します」
国はどうなる事でしょうね。とルイスは笑った。
「彼に仕事を引退させるつもりは?」
父王は聞いた。
「今のところありませんね」
「私が彼に過酷な任務を与えたら」
「意味のあるものならどうぞ。けれど私が王になったら彼に命令を与えられるのは私だけだ」
それに、とルイスは付け加えた。
「彼の仕事が後ろ暗く、血なまぐさく、命を落とす可能性があることくらいずっとわかっていることですよ。
それを与えているのが私たちだという事も。
だから、通常の任務で彼が命を落とすならそれは今まで通りのこと、という事になります」
ふむ、と父王は考える仕草をした。
「彼が彼岸の者となったとして、私が他のものを抱けるかというと無理でしょうけどね」
ルイスは自嘲気味に笑った。
「あの影の幻影を令嬢にかけて、令嬢があの男に見える魔法をかけるというのは?」
王妃が最後の希望をかけるように言った。
「昨日までだったら何度かは騙されたかもしれません。だけど本物を知ってしまった今は多分無理でしょうね」
ぐう、とうなるように王妃はハンカチをくしゃくしゃに握りつぶした。
「他の方法は?」
「弟が王位を継ぐまでのつなぎでいるのが一番穏当だとは思いますよ。王兄として即位後もサポートできることはしますし」
王位継承から離れて変わり者としてカイルと余生を過ごす。
それがルイスにとって一番の幸せの形だった。
「まずは魔術塔の責任者を呼び、事の内容及びそれをどの程度秘匿できるかの確認を行う。
それでいいか?」
「御意」
どちらにせよこれでしばらくは妃選びという面倒事から遠ざかれる。ルイスは父王に是を返した。
父王に聞かれてルイスが答える。
「今まで魔術塔に通って編み出したものですが」
ルイスは話し始めた。
魔術塔というのは国家が認めた高い技術を持つ魔術師たちがその技術を研鑽するための施設だ。
様々な新しい魔法理論や新しい技術、魔法の効率化等が行われている。
かなり長い期間、魔術塔の後ろ盾として王太子が様々な研究に資金を投入し、そして成功に導いていることは有名な話だった。
魔法使い達は王太子を信頼し、また忠誠を誓う者すらいる。
それはルイスが、王太子として、次の王としてふさわしいとすることの理由の一つになっていた。
「案は二つ。一つは彼の同意をとらないといけませんが……。
一つは架空の妃を娶ってその偽の姿を魔法で映し出すものです」
はあ、という王妃のため息が聞こえた。
無理な物は無理なのだ。
「もう一つの方法は、カイルに子を孕んでもらう方法です」
そう言ったところでルイスの弟は茶も飲んでいないのに、せき込むように何かを吐き出した。
「は?兄さん本気ですか?」
「勿論お前の子を養子にする方が早いとは思っているが、政争がおきるリスクはあるな」
王と、王子の父が違う。
王子の父を担いで実権を握ろうとする不届きものが出てもおかしくない。
ルイスとしては別段それで政争に敗れたふりをして表舞台を離れるのでもいい。
現在味方をしてくれている貴族たちに被害が最小限で留まるなら。
「その場合、名目上の母親が必要になるだろう。
まさかそれも魔法で作り出すつもりか?」
父王が聞いた。
「嘘は多すぎると瓦解しやすいですから、この案は二つ同時には行いません。
その場合理解のある女性と表向き結婚をします」
この国で同性婚は認められていない。
市井では同性にも祝福を与える教会があるという話だが、王侯で行っているものはいない。
「その女性の候補の絞り込みは?」
確認の様に父王は言った。
「候補はおります」
ルイスは言った。
「資料を回すように」
父王は言った。
「理解のある女性と形だけの結婚をして、あの影を愛人とするだけではだめなのですか?」
王妃は聞いた。
ルイスは穏やかに笑った。
けれどそれは作られた王太子としての笑顔だった。
「そして、適当なタイミングでカイルを暗殺する。
そうなるに決まってるし。私がそのことを知っている立場ならそうします」
それを防ぐためには彼を守るしかない。
守るために彼を離宮にでも押し込める。
それは彼の臣下たちが許さない。
「架空の姫君と結婚する場合も、彼に子を産んでもらう場合も、彼が万が一その立場の所為で暗殺されるようなことがあれば事実を公表します」
国はどうなる事でしょうね。とルイスは笑った。
「彼に仕事を引退させるつもりは?」
父王は聞いた。
「今のところありませんね」
「私が彼に過酷な任務を与えたら」
「意味のあるものならどうぞ。けれど私が王になったら彼に命令を与えられるのは私だけだ」
それに、とルイスは付け加えた。
「彼の仕事が後ろ暗く、血なまぐさく、命を落とす可能性があることくらいずっとわかっていることですよ。
それを与えているのが私たちだという事も。
だから、通常の任務で彼が命を落とすならそれは今まで通りのこと、という事になります」
ふむ、と父王は考える仕草をした。
「彼が彼岸の者となったとして、私が他のものを抱けるかというと無理でしょうけどね」
ルイスは自嘲気味に笑った。
「あの影の幻影を令嬢にかけて、令嬢があの男に見える魔法をかけるというのは?」
王妃が最後の希望をかけるように言った。
「昨日までだったら何度かは騙されたかもしれません。だけど本物を知ってしまった今は多分無理でしょうね」
ぐう、とうなるように王妃はハンカチをくしゃくしゃに握りつぶした。
「他の方法は?」
「弟が王位を継ぐまでのつなぎでいるのが一番穏当だとは思いますよ。王兄として即位後もサポートできることはしますし」
王位継承から離れて変わり者としてカイルと余生を過ごす。
それがルイスにとって一番の幸せの形だった。
「まずは魔術塔の責任者を呼び、事の内容及びそれをどの程度秘匿できるかの確認を行う。
それでいいか?」
「御意」
どちらにせよこれでしばらくは妃選びという面倒事から遠ざかれる。ルイスは父王に是を返した。
107
あなたにおすすめの小説
実況配信中!没落オメガの通信魔術師と氷の騎士団長の契約結婚~迷宮の底でヒートしたら冷徹アルファの溺愛が始まった
水凪しおん
BL
かつて名門だったアステリア家の生き残りである青年ルミナス。
彼は自身が「オメガ」であることを隠し、ベータと偽って王都の裏社会で通信魔術師として借金を返す日々を送っていた。
ある日、そんな彼に信じられない大仕事が舞い込む。
それは王国最強のアルファと謳われる冷徹な騎士団長レオンハルトとの「契約結婚」。
そして、危険な未踏破迷宮アビスロンドの攻略戦に同行し、その模様を国中に実況配信するというものだった。
オメガを憎悪しているレオンハルトに正体がバレれば、ただでは済まない。
命懸けでベータを演じるルミナスだったが、迷宮の奥深くで吸い込んだ濃密な瘴気により、隠し続けていた「ヒート」が突如として始まってしまう。
絶体絶命の危機。しかし、ルミナスは自らのフェロモンを支援魔法に変換し、魔力暴走を起こしかけたレオンハルトを救い出す。
その気高くも美しい献身に、オメガを憎んでいたはずの氷の騎士団長は完全にほだされてしまい――。
「俺は残りの人生のすべてを懸けて、お前を幸福にすると誓う」
ただの契約結婚だったはずが、最強アルファからの過保護で独占欲全開の溺愛がスタート!
しかもその極甘な様子は、魔法通信を通じて王都の国民たちにすべて実況配信されていて……!?
身分差と過去の傷跡を乗り越え、真実の番となる二人を描く、王道ファンタジー&溺愛オメガバース!
※本作にはオメガバース設定に基づく軽度な性的表現(ヒート、番の印など)、および魔物との戦闘による流血・残酷表現が含まれます。15歳未満の方の閲覧はご注意ください。
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
白金の花嫁は将軍の希望の花
葉咲透織
BL
義妹の身代わりでボルカノ王国に嫁ぐことになったレイナール。女好きのボルカノ王は、男である彼を受け入れず、そのまま若き将軍・ジョシュアに下げ渡す。彼の屋敷で過ごすうちに、ジョシュアに惹かれていくレイナールには、ある秘密があった。
※個人ブログにも投稿済みです。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
愛され少年と嫌われ少年
透
BL
美しい容姿と高い魔力を持ち、誰からも愛される公爵令息のアシェル。アシェルは王子の不興を買ったことで、「顔を焼く」という重い刑罰を受けることになってしまった。
顔を焼かれる苦痛と恐怖に絶叫した次の瞬間、アシェルはまったく別の場所で別人になっていた。それは同じクラスの少年、顔に大きな痣がある、醜い嫌われ者のノクスだった。
元に戻る方法はわからない。戻れたとしても焼かれた顔は醜い。さらにアシェルはノクスになったことで、自分が顔しか愛されていなかった現実を知ってしまう…。
【嫌われ少年の幼馴染(騎士団所属)×愛され少年】
※本作はムーンライトノベルズでも公開しています。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる