1 / 17
嫌われものの魔法使い
しおりを挟む
昔々あるところに、ひとつの王国があった。
どのくらい昔かというと、まだ魔法使いがいた時代の話だ。
まだ王侯貴族が国を支配していてこの世界にはたくさんの国々が会った時代。
魔法使いはたくさんいて、王国と協力して、国は栄え、民は幸せに暮らしていた。
魔法使いは身近な賢者として尊敬されながら、魔法の無い人々一緒に過ごしていたのだ。
魔法使いというのは対価を元に様々な奇跡を起こすことのできる存在だった。
その中に一人の魔法使いがいた。
その魔法使いは痩せぎすで、瞳は黒く、肌は青白かった。
いつも黒いローブをかぶっていたため、顔をちゃんとみたことのある人はほとんどいなかった。
美しいという話は誰もしていなかったのでおそらくそういう容姿だったのだろう。
彼自身自分の顔をよく見たことは無いし、美しくも無いと思っていた。
彼の名前は夜露といった。
その見た目が奇妙だったからか、それとも彼の話し方が変だったからか魔法使いはいつも一人だった。
魔法使いには友はいなかったし、彼に本当の意味で信頼を寄せる人もいなかった。
ずっとその魔法使いは一人で生きていた。
国のはずれのほとんど誰もいない森に一軒の家を自分で建てて一人で住んでいた。
魔法使いが住むにしては質素で粗末な家だったが夜露はあまり気にしてはいなかった。
日がな一日彼は魔法の研究をしたり魔法薬を作り、わずかばかりの対価でひっそりと暮らしていた。
誰からも褒められることも無ければ、権力も富もない生活だった。
けれど、彼はそれで満足だった。
自分が独りぼっちだと知っていたけれど、一人でいることは別に苦痛ではなかった。
* * *
ある日、魔法使いの夜露はお城に呼ばれた。
お城は国の丁度真ん中にあって、王都はとても栄えていた。
夜露は初めて王都を訪れていた。
王都には煌めくお店が沢山あって、王宮は壁が白くとても美しかった。
この王宮も王都もこの国の誇りらしい。
その王宮の一番大きなホールに夜露は呼ばれていた。
お城には着飾った貴族と綺麗なマントをつけた魔法使いが沢山いた。
そこにいるのがみな権力や富があるものだと夜露はすぐにわかった。
王侯貴族やそれに連なる魔法使いばかりがいるのだと、世間とあまり関わってこなかった夜露にも分かる。
夜露は自分の恰好を見て少しだけ恥ずかしくなる。
夜露の恰好は普段着にしている、みすぼらしい茶色のローブだったからだ。
お城に呼ばれたとき、キレイな招待状も何もなかったからこんな大きな会なのだと夜露は思わなかったのだ。
まるでこれはお話に出てくる舞踏会みたいじゃないかと夜露は思った。
それくらい皆美しく着飾っていた。
夜露は魔法で新しい洋服を作ろうかと思ったけれど、生憎代償にできそうなものを何も持ち合わせてはいなかった。
魔法には対価が必要だった。
何もないところから魔法はおこせない。
何らかの対価を元にしなければよくないことがおきてしまう。
夜露が魔法を使う時も必ず何か対価になるものを準備していた。
他の魔法使いもみなそうだろう。
今日は魔法を披露する場ではないと思っていたし、対価になりそうなものを持っていて攻撃的な魔法を使うと勘違いされたくなかった夜露は今日何も持ってきていない。
一人広い会場内で夜露がうつむいていると、ラッパが吹かれる。国王様のおなりの合図だ。
「今日、皆に集まってもらったのは他でもない。
隣国との戦争のことだ」
夜露たちのいるところより一段高い場所にあらわれた王様が、大きな声で言った。
豊かで穏やかなこの国に隣国が攻めてくるという話はひとりぼっちの魔法使いでも知っていた。
外交で解決するものだとばかり思われていたが、ついに戦争となるのか。
大きな広間にざわめきが広がる。
皆が不安げに顔を見合わせている。
「隣の国の大軍に勝つための手段を我が国は探しているのだ」
なにかいい知恵はないかね?
王様は魔法使いたちの方を見て言った。
この国には大国である隣国と真っ向から戦争をして勝てるような強い兵隊も武器もない。
真っ向から勝負しても負けてしまうのは明らかだった。
魔法使い達は顔を見合わせる。
そこまで力の強い魔法使いはもう珍しくなっていた。
たくさんの敵を倒す魔法も巨大な盾を出す魔法も今よりもずっと昔、まだ魔法使いが神様の様にいろんな願いをかなえられた時代のものだ。
伝え聞く古代の魔法使いならまだしも、大軍を撃退する魔法が使える魔法使いはもう珍しくなっている。
隣国の大群と戦う方法を考えて欲しいと言われてもぱっと出てくる答えはない。
魔法使いたちは皆黙り込んでしまった。
そもそも、王様の今の望みを叶える方法を知っていれば王宮の魔法使いがもっと早く提案しているだろう。
それが何もないのでこうやって王様は夜露の様な一人暮らしている魔法使いまで集めたのだろう。
どのくらい昔かというと、まだ魔法使いがいた時代の話だ。
まだ王侯貴族が国を支配していてこの世界にはたくさんの国々が会った時代。
魔法使いはたくさんいて、王国と協力して、国は栄え、民は幸せに暮らしていた。
魔法使いは身近な賢者として尊敬されながら、魔法の無い人々一緒に過ごしていたのだ。
魔法使いというのは対価を元に様々な奇跡を起こすことのできる存在だった。
その中に一人の魔法使いがいた。
その魔法使いは痩せぎすで、瞳は黒く、肌は青白かった。
いつも黒いローブをかぶっていたため、顔をちゃんとみたことのある人はほとんどいなかった。
美しいという話は誰もしていなかったのでおそらくそういう容姿だったのだろう。
彼自身自分の顔をよく見たことは無いし、美しくも無いと思っていた。
彼の名前は夜露といった。
その見た目が奇妙だったからか、それとも彼の話し方が変だったからか魔法使いはいつも一人だった。
魔法使いには友はいなかったし、彼に本当の意味で信頼を寄せる人もいなかった。
ずっとその魔法使いは一人で生きていた。
国のはずれのほとんど誰もいない森に一軒の家を自分で建てて一人で住んでいた。
魔法使いが住むにしては質素で粗末な家だったが夜露はあまり気にしてはいなかった。
日がな一日彼は魔法の研究をしたり魔法薬を作り、わずかばかりの対価でひっそりと暮らしていた。
誰からも褒められることも無ければ、権力も富もない生活だった。
けれど、彼はそれで満足だった。
自分が独りぼっちだと知っていたけれど、一人でいることは別に苦痛ではなかった。
* * *
ある日、魔法使いの夜露はお城に呼ばれた。
お城は国の丁度真ん中にあって、王都はとても栄えていた。
夜露は初めて王都を訪れていた。
王都には煌めくお店が沢山あって、王宮は壁が白くとても美しかった。
この王宮も王都もこの国の誇りらしい。
その王宮の一番大きなホールに夜露は呼ばれていた。
お城には着飾った貴族と綺麗なマントをつけた魔法使いが沢山いた。
そこにいるのがみな権力や富があるものだと夜露はすぐにわかった。
王侯貴族やそれに連なる魔法使いばかりがいるのだと、世間とあまり関わってこなかった夜露にも分かる。
夜露は自分の恰好を見て少しだけ恥ずかしくなる。
夜露の恰好は普段着にしている、みすぼらしい茶色のローブだったからだ。
お城に呼ばれたとき、キレイな招待状も何もなかったからこんな大きな会なのだと夜露は思わなかったのだ。
まるでこれはお話に出てくる舞踏会みたいじゃないかと夜露は思った。
それくらい皆美しく着飾っていた。
夜露は魔法で新しい洋服を作ろうかと思ったけれど、生憎代償にできそうなものを何も持ち合わせてはいなかった。
魔法には対価が必要だった。
何もないところから魔法はおこせない。
何らかの対価を元にしなければよくないことがおきてしまう。
夜露が魔法を使う時も必ず何か対価になるものを準備していた。
他の魔法使いもみなそうだろう。
今日は魔法を披露する場ではないと思っていたし、対価になりそうなものを持っていて攻撃的な魔法を使うと勘違いされたくなかった夜露は今日何も持ってきていない。
一人広い会場内で夜露がうつむいていると、ラッパが吹かれる。国王様のおなりの合図だ。
「今日、皆に集まってもらったのは他でもない。
隣国との戦争のことだ」
夜露たちのいるところより一段高い場所にあらわれた王様が、大きな声で言った。
豊かで穏やかなこの国に隣国が攻めてくるという話はひとりぼっちの魔法使いでも知っていた。
外交で解決するものだとばかり思われていたが、ついに戦争となるのか。
大きな広間にざわめきが広がる。
皆が不安げに顔を見合わせている。
「隣の国の大軍に勝つための手段を我が国は探しているのだ」
なにかいい知恵はないかね?
王様は魔法使いたちの方を見て言った。
この国には大国である隣国と真っ向から戦争をして勝てるような強い兵隊も武器もない。
真っ向から勝負しても負けてしまうのは明らかだった。
魔法使い達は顔を見合わせる。
そこまで力の強い魔法使いはもう珍しくなっていた。
たくさんの敵を倒す魔法も巨大な盾を出す魔法も今よりもずっと昔、まだ魔法使いが神様の様にいろんな願いをかなえられた時代のものだ。
伝え聞く古代の魔法使いならまだしも、大軍を撃退する魔法が使える魔法使いはもう珍しくなっている。
隣国の大群と戦う方法を考えて欲しいと言われてもぱっと出てくる答えはない。
魔法使いたちは皆黙り込んでしまった。
そもそも、王様の今の望みを叶える方法を知っていれば王宮の魔法使いがもっと早く提案しているだろう。
それが何もないのでこうやって王様は夜露の様な一人暮らしている魔法使いまで集めたのだろう。
10
あなたにおすすめの小説
染まらない花
煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。
その中で、四歳年上のあなたに恋をした。
戸籍上では兄だったとしても、
俺の中では赤の他人で、
好きになった人。
かわいくて、綺麗で、優しくて、
その辺にいる女より魅力的に映る。
どんなにライバルがいても、
あなたが他の色に染まることはない。
もう観念しなよ、呆れた顔の彼に諦めの悪い僕は財布の3万円を机の上に置いた
谷地
BL
お昼寝コース(※2時間)8000円。
就寝コースは、8時間/1万5千円・10時間/2万円・12時間/3万円~お選びいただけます。
お好みのキャストを選んで御予約下さい。はじめてに限り2000円値引きキャンペーン実施中!
液晶の中で光るポップなフォントは安っぽくぴかぴかと光っていた。
完結しました *・゚
2025.5.10 少し修正しました。
【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。
きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。
自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。
食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。
秘花~王太子の秘密と宿命の皇女~
めぐみ
BL
☆俺はお前を何度も抱き、俺なしではいられぬ淫らな身体にする。宿命という名の数奇な運命に翻弄される王子達☆
―俺はそなたを玩具だと思ったことはなかった。ただ、そなたの身体は俺のものだ。俺はそなたを何度でも抱き、俺なしではいられないような淫らな身体にする。抱き潰すくらいに抱けば、そなたもあの宦官のことなど思い出しもしなくなる。―
モンゴル大帝国の皇帝を祖父に持ちモンゴル帝国直系の皇女を生母として生まれた彼は、生まれながらの高麗の王太子だった。
だが、そんな王太子の運命を激変させる出来事が起こった。
そう、あの「秘密」が表に出るまでは。
嫌われ魔術師の俺は元夫への恋心を消去する
SKYTRICK
BL
旧題:恋愛感情抹消魔法で元夫への恋を消去する
☆11/28完結しました。
☆第11回BL小説大賞奨励賞受賞しました。ありがとうございます!
冷酷大元帥×元娼夫の忘れられた夫
——「また俺を好きになるって言ったのに、嘘つき」
元娼夫で現魔術師であるエディことサラは五年ぶりに祖国・ファルンに帰国した。しかし暫しの帰郷を味わう間も無く、直後、ファルン王国軍の大元帥であるロイ・オークランスの使者が元帥命令を掲げてサラの元へやってくる。
ロイ・オークランスの名を知らぬ者は世界でもそうそういない。魔族の血を引くロイは人間から畏怖を大いに集めながらも、大将として国防戦争に打ち勝ち、たった二十九歳で大元帥として全軍のトップに立っている。
その元帥命令の内容というのは、五年前に最愛の妻を亡くしたロイを、魔族への本能的な恐怖を感じないサラが慰めろというものだった。
ロイは妻であるリネ・オークランスを亡くし、悲しみに苛まれている。あまりの辛さで『奥様』に関する記憶すら忘却してしまったらしい。半ば強引にロイの元へ連れていかれるサラは、彼に己を『サラ』と名乗る。だが、
——「失せろ。お前のような娼夫など必要としていない」
噂通り冷酷なロイの口からは罵詈雑言が放たれた。ロイは穢らわしい娼夫を睨みつけ去ってしまう。使者らは最愛の妻を亡くしたロイを憐れむばかりで、まるでサラの様子を気にしていない。
誰も、サラこそが五年前に亡くなった『奥様』であり、最愛のその人であるとは気付いていないようだった。
しかし、最大の問題は元夫に存在を忘れられていることではない。
サラが未だにロイを愛しているという事実だ。
仕方なく、『恋愛感情抹消魔法』を己にかけることにするサラだが——……
☆お読みくださりありがとうございます。良ければ感想などいただけるとパワーになります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる