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王子の誕生と呪い
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戦争が回避されてから数年後、お妃様が懐妊した。
国中がその事実を喜んだ。
国全体がお祝いムードで慶事を喜んでいた。
戦争になるかもしれなかったということは国民も貴族も民も、ほとんどの人たちが忘れていた。
平和な国では穏やかな時間が過ぎていた。
ただ一人、夜露だけは日ごとに呪いに代わる魔法を抱えてそれどころではなかったけれど、それ以外のすべての民はその事実を喜んだ。
勿論王様もとても喜んだ。
二人に子供ができるのはこれが初めてだからだ。
王様とお妃様には長い間子ができなかった。
それゆえ喜びもひとしおだ。
夜露は日ごとに呪いに変わりゆく魔法の残渣を抱えながら途方に暮れていた。
別に国が亡びるほどの大量の対価が必要な訳ではない。
戦争を回避するために作った迷いの森の対価は王様が個人所有している宝石類よりも少ない対価で支払いが終えられるはずのものだった。
けれど、浮かれている王家からはなんの連絡も無かった。
夜露はもはや生活するのにも支障をきたす程呪いに変わろうとする魔法を制御することで手一杯だった。
それから数か月後、王子様が生まれたと知らせられた。
金髪がまるで絹糸の様で瞳はエメラルド色をしたとても美しい赤子だという。
喜ばしい知らせが国中に広がった。
夜露以外の国民は皆笑って、皆将来の統治者である王子の誕生を喜んだ。
王様は王子の誕生を祝うパーティを盛大に執り行う事とした。
国中の貴族、それから賢者と呼ばれる魔法使いがパーティに呼ばれた。
その中に夜露はいなかった。
夜露が招待されていない事を不思議がるものも、異議を唱える者もだれもいなかった。
誰ももう夜露の事は覚えていなかった。ただ、嫌われ者の魔法使いが辺鄙な場所で一人で暮らしているという事だけを皆が知っていた。
嫌われ者の魔法使いをおめでたいパーティーに呼ぼうと思う者はいないのは当たり前だった。
おめでたいパーティはこの国に必要とされているもの、能力の高いもの、人望を集めるものだけでやればいいのだ。
嫌われ者の魔法使いはそのどれにも当てはまらないとこの国のほとんどの人は思っていた。
* * *
誕生パーティー当日。
会場はとても華やかで、招待された人すべてがめでたい事実に浮かれていた。
宮殿で盛大に開かれたパーティは豪華に飾り付けられ、おいしそうなごちそうが並んでいる。
参加した人たちは誰も彼も皆、美しく着飾って王子の誕生を祝う。
幸せな雰囲気に会場全体が包まれていた。
迷いの森は相変わらず人を迷わせるが、馬車に札を貼ることで問題なく貿易をおこなう事も出来たし、観光に行き来することもできた。
出入国の管理もしやすくなったし、観光は特別感があっていいと評判になっている。
今までよりもこの国は良くなっている、と誰しもが思った。
王子が生まれてこの国も安泰だと誰しもが思った。
沢山の豪華な食事ときらびやかなドレス。
穏やかに微笑む貴族たち。
隣国が攻めてくる前と何も変わらなかった。
むしろ生活には余裕がある。
和やかな雰囲気の中で生誕パーティは進んでいく。
「それでは、私は富を」
ある魔法使いが、一人歩み出て王子の前で呪文を唱える。
彼女の持っていた綺麗な髪の毛の束が、一瞬で跡形もなく消える。
彼女の後ろには何人も何人も魔法使いらしき人々がずらりと並んでいる。
この国では王族が生まれると決まって魔法使いから“祝福”を受ける風習があった。
魔法使いが持ち寄った対価で、王子に簡単な魔法をかけていく。
少しでも賢く、美しく、豊かに。王族の素晴らしい未来を願って魔法をかけていく。
それは魔法使いの力の強さによってさまざまな願いになるが、ある程度の強制力をもって働く魔法となって、王子に降り注ぐ。
富をと魔法使いが祝福を与えれば王子は一生富を得ることができるし、美貌をと言えば元々持っている美貌が崩れにくくなる。
昔からそうやって魔法使い達は王族に祝福を与えてきた。
今の王様も生まれたときにたくさんの祝福を与えられている。
そうやって魔法使いが一人一人並んで祝福を与えていっていた。
後十数人、となったところで、突然パーティをしていた広間の灯りが落ちる。
数秒後灯りは元の通り灯ったけれど、そこにはその場に似つかわしくない男が立っていた。
いつも通りの薄汚い黒いローブを被った魔法使い、夜露だった。
国中がその事実を喜んだ。
国全体がお祝いムードで慶事を喜んでいた。
戦争になるかもしれなかったということは国民も貴族も民も、ほとんどの人たちが忘れていた。
平和な国では穏やかな時間が過ぎていた。
ただ一人、夜露だけは日ごとに呪いに代わる魔法を抱えてそれどころではなかったけれど、それ以外のすべての民はその事実を喜んだ。
勿論王様もとても喜んだ。
二人に子供ができるのはこれが初めてだからだ。
王様とお妃様には長い間子ができなかった。
それゆえ喜びもひとしおだ。
夜露は日ごとに呪いに変わりゆく魔法の残渣を抱えながら途方に暮れていた。
別に国が亡びるほどの大量の対価が必要な訳ではない。
戦争を回避するために作った迷いの森の対価は王様が個人所有している宝石類よりも少ない対価で支払いが終えられるはずのものだった。
けれど、浮かれている王家からはなんの連絡も無かった。
夜露はもはや生活するのにも支障をきたす程呪いに変わろうとする魔法を制御することで手一杯だった。
それから数か月後、王子様が生まれたと知らせられた。
金髪がまるで絹糸の様で瞳はエメラルド色をしたとても美しい赤子だという。
喜ばしい知らせが国中に広がった。
夜露以外の国民は皆笑って、皆将来の統治者である王子の誕生を喜んだ。
王様は王子の誕生を祝うパーティを盛大に執り行う事とした。
国中の貴族、それから賢者と呼ばれる魔法使いがパーティに呼ばれた。
その中に夜露はいなかった。
夜露が招待されていない事を不思議がるものも、異議を唱える者もだれもいなかった。
誰ももう夜露の事は覚えていなかった。ただ、嫌われ者の魔法使いが辺鄙な場所で一人で暮らしているという事だけを皆が知っていた。
嫌われ者の魔法使いをおめでたいパーティーに呼ぼうと思う者はいないのは当たり前だった。
おめでたいパーティはこの国に必要とされているもの、能力の高いもの、人望を集めるものだけでやればいいのだ。
嫌われ者の魔法使いはそのどれにも当てはまらないとこの国のほとんどの人は思っていた。
* * *
誕生パーティー当日。
会場はとても華やかで、招待された人すべてがめでたい事実に浮かれていた。
宮殿で盛大に開かれたパーティは豪華に飾り付けられ、おいしそうなごちそうが並んでいる。
参加した人たちは誰も彼も皆、美しく着飾って王子の誕生を祝う。
幸せな雰囲気に会場全体が包まれていた。
迷いの森は相変わらず人を迷わせるが、馬車に札を貼ることで問題なく貿易をおこなう事も出来たし、観光に行き来することもできた。
出入国の管理もしやすくなったし、観光は特別感があっていいと評判になっている。
今までよりもこの国は良くなっている、と誰しもが思った。
王子が生まれてこの国も安泰だと誰しもが思った。
沢山の豪華な食事ときらびやかなドレス。
穏やかに微笑む貴族たち。
隣国が攻めてくる前と何も変わらなかった。
むしろ生活には余裕がある。
和やかな雰囲気の中で生誕パーティは進んでいく。
「それでは、私は富を」
ある魔法使いが、一人歩み出て王子の前で呪文を唱える。
彼女の持っていた綺麗な髪の毛の束が、一瞬で跡形もなく消える。
彼女の後ろには何人も何人も魔法使いらしき人々がずらりと並んでいる。
この国では王族が生まれると決まって魔法使いから“祝福”を受ける風習があった。
魔法使いが持ち寄った対価で、王子に簡単な魔法をかけていく。
少しでも賢く、美しく、豊かに。王族の素晴らしい未来を願って魔法をかけていく。
それは魔法使いの力の強さによってさまざまな願いになるが、ある程度の強制力をもって働く魔法となって、王子に降り注ぐ。
富をと魔法使いが祝福を与えれば王子は一生富を得ることができるし、美貌をと言えば元々持っている美貌が崩れにくくなる。
昔からそうやって魔法使い達は王族に祝福を与えてきた。
今の王様も生まれたときにたくさんの祝福を与えられている。
そうやって魔法使いが一人一人並んで祝福を与えていっていた。
後十数人、となったところで、突然パーティをしていた広間の灯りが落ちる。
数秒後灯りは元の通り灯ったけれど、そこにはその場に似つかわしくない男が立っていた。
いつも通りの薄汚い黒いローブを被った魔法使い、夜露だった。
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