クラス転移で一人だけ地味スキル【回避】が無能だと判断され理不尽にも追放された男の復讐劇

Leiren Storathijs

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第1章 解放

勇者視点・その2

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 一条光輝、伊吹茜、鬼堂正晴、如月玲香、岩井康太郎。勇者一行は、最終目標である魔王討伐の為に全員でレベル上げをしていた。
 全員のレベルは大体既に20レベル程に到達しており、そこら中にいる狼などはほぼ一撃で倒していた。もちろんレベル20に到達するまでに狼狩りだけをしていた訳ではなく、度々他の地域に行っては最初の王国近辺にあった村を拠点にして活動していた。

 勇者達はもうそろそろ拠点も移動しても良いと考え、拠点を移動する際に必要なお金を稼ごうとしていた。が、もっともコツコツ稼ぐのに適していた魔物討伐の一つ。狼の縄張り制圧が依頼を出されていても尚、何故か既に終わっているということが最近になって何度も起きるようになり、勇者達は思うようにお金を稼げていなかった。

 ならばさらに報酬の良い魔物討伐をすれば良い。そう考えるが、魔物討伐の報酬は基本討伐数による歩合制のため、どれだけ強く一匹の報酬が高い魔物を狩っても、一度に大量に狩らなくては非常に効率が悪く、実質小遣い稼ぎにしかならず、強い魔物では有れば討伐自体にも時間がかかるため勇者達はこれに苦悩していた。

 そんな状況にだんだんと苛つきを募らせるのが鬼堂であった。

「あぁ! クソッ! 俺らはこんなにも 強くなったんだ! なのになんでこうも上手く稼げねぇんだ!? 狼討伐とかマジでどうなってんだよ!!」

 狼の縄張り制圧依頼が受ける事が出来れば一気にお金稼ぎの効率は上がる。しかし現状、勇者達の王国ギルドでは"他の冒険者が小さな依頼を占領しており新たな依頼は無い"と説明されており、これもまたよくあることだと知る。

 そんな鬼堂を光輝がなだめる。

「鬼堂、落ち着けって。ギルドでも良くあることだって言ってたろ? 日が経てばまた依頼は来ると思うから」

「クソ……一体何処のどいつなんだぁ? 狼の縄張りって程のでけぇもんをここまで占領するほどに素早く狩ってるってことだろ。ぜってえ何か目的があるとしか考えらんねえ……。もし見つけたらぶっ殺して金をうばってやらぁ……」

 その発言に康太郎が笑う。

「はっはっは! 勇者とは到底思えない発言だな!」

「あ? てめぇ今なんつった?」

「ヒィッ!?」

 そこに茜は場を治めようと、玲香は険しい表情をして悩む。

「喧嘩はダメだよぉ~鬼堂くん。康太郎くんも今はみんな本当に悩んでいるんだから」

「それにしても、どうした物かしら。鬼堂の言う通り何処で依頼が消化されているのか確認するのも手かもね」

 暴力で解決だけは決してしてはならない。そう考える光輝は玲香の提案を一部承諾する。

「あぁ、殴るのは良くないけど、何処でその冒険者が依頼を受けているのかが分かれば依頼の協力とかもできそうだ」

◆◇◆◇◆◇

 光輝達は王国ギルドで何処で依頼が消化されてるのかを特定した。その場所とは王国より北にあるノルデン帝国だと知る。
 歩けば一日掛かる距離だが、馬車では半日で到着すると言う。

 光輝達の所持金は全員分合わせて45万オロあり、馬車の料金はノルデン帝国まで片道2万5,000オロ掛かる。
 拠点移動するにはそれほど有れば十分ではあるが、これから魔王の元を目指すにおいて沢山の国や海を越えなければならないとなると更なるお金が必要という。
 逆に何処にそんな大金が掛かるのかと言うと一番は国境の検問所越えである。

 勇者となれば国境検問所を通るのに割引がされる。なんてことは無く、この世界では国間関係は勇者がどうこうできる問題では無い。誰であろうが検問所では必ず身分を証明する必要があり、どんなに関係が悪い国同士でも、大金を支払うことて金銭問題をギリギリに緩和し、関係を保っているという。
 だからもし何者かが検問所を強行突破しようものなら他国の刺客だと思われ、戦争の火蓋が切られてしまうのだ。

 そしてその検問所に支払うお金はその国の関係に依るが、最低でも100万オロ必要だという。つまり、これからの移動で光輝達が持つお金では圧倒的に足りないのだ。

「馬車、ちょっと高いけど歩くよりはマシだし、これだけでお金をケチってちゃあ、今後も移動は厳しそうだよね」

 光輝達はこうして馬車に乗り込み、ノルデン帝国へ向かった。

◆◇◆◇ノルデン帝国◆◇◆◇

 光輝達は教えられたとおり半日でノルデン帝国に到着した。日はもう夕焼けで出来れば帝国内の宿に泊まりたいと考える。

「よおし、到着だ。馬車といってもかなり距離あったからね。もう休もうか」

「畜生、ケツが痛え……んだよあの乗り心地の悪さはよぉ」

「あはは~でも半日で良かったよぉ。もしあの馬車に二日三日も乗っていたら……」

「えぇ、私は馬車には乗ったことはあるけどあそこまででは無かったわ」

「ヒッヒッヒ! 異世界の馬車は乗り心地最悪とはよく言われる話ですな!」

 さてと、光輝は紐を通したガラス板の通行証を門番へ見せてすんなりと帝国へ入るが、全員が帝国内に入った瞬間、門番兵が光輝達の後ろ姿に唾を吐く。
 何故唾を吐いてきたのか。それだけ全員を先導する光輝はノルデン帝国の治安の悪さに感づき、それに気が付いた鬼堂は怒りを露わにしようとするが、帝国の兵士に喧嘩を売るには流石に不味いと光輝が判断し必死に治る。

「あのクソ野郎が……」

「落ち着くんだ鬼堂! この帝国は何か不味い空気を感じる……とにかく怪しまれるのはよそう」

 国民達の雰囲気は門番兵の態度とは変わって活気のある元気な姿があったが、光輝はこれを何らかの権力でこうなっているのだと考え、とにかく宿に入るまで無言を貫こうと全員に指示した。

◆◇◆◇翌日◆◇◆◇

 宿に泊まって翌日の朝。光輝達はこれまでに急速にレベルを上げていっていたが、今日で異世界に転移してから一週間が経った。

 そうして光輝達は計画通り帝国ギルドに赴き、依頼の状況を確認すれば、狼の縄張り制圧は何処にも一切貼り出されておらず、依頼内容についてギルドの受付に聞いても、現在は難易度E以下の依頼は在りませんと言うだけで特にこれといった情報を得られなかった。

「すみません。本当に依頼は無いのでしょうか? こちらで請け負っている冒険者が片っ端から依頼を占領していると聞いて来たのですが……」

「いいえ。申し訳ありません。ここ一週間ほどこちらにも狼の縄張り制圧のような依頼は来ておらず、狼の一匹すら討伐の報告は出ていません」

「そんな……」

 王国で聞いた話と違う。ノルデン帝国で縄張り制圧の依頼が集中しており、王国では新しい依頼は取り消されている。王国の情報が間違っているのか? それともノルデン帝国が嘘を付いているのか?

 光輝はとりあえずギルドの受付に謝り、再度頭を悩ませる。

 するとそこで康太郎が大笑いしながら話し掛けてきた。

「フフフ……ハーッハッハッ! 皆よどうやらお困りのようだな! 実は我から皆に朗報がある。我は皆が寝ている早朝に起きていてな。こんなことがあろうかと情報を集めていた! それも今の状況からするとなかなかに信憑性が高いと思われる」

「てめぇな。んなこといってふざけたこと言ったらマジでぶっ殺すからな……」

「まぁ、聞けよ。とりあえずかなりのお金を勝手に使ってしまったことは先に謝ろう。んでだ。どうやら我が集めた情報によるとそこの受付嬢は嘘を付いているのは確かである! だからといって責める必要は無い。何せ今回の縄張り制圧の受注者がギルドに隠すようにと言っていたらしいからな。
 それでだ。どうやらその縄張り制圧依頼を占領し全部完了させたのは今日の今さっきらしいぞ! たった一人の冒険者が三十一の縄張りを制圧し、縄張りの大ボスであるグレートウルフを撃破したってな。
 外を歩いていた解体師がウキウキ顔で話してくれたよ」

 康太郎は早朝に仕入れた情報を説明する。その情報とはたった一人の冒険者が確かに縄張り制圧依頼を占領し、さらには大きなボスまで討伐してしまった。だから実質依頼が無くなっているという。

 たしかに良い情報だがそんな無駄と思える情報に鬼堂が苛つき始める。

「はぁ……康太郎。それがてめぇの仕入れた情報か?」

「ま、まて! ここからが重要なんだ。光輝や茜さんにとっては重要だと思う」

「え? 俺?」

「あぁ、まず結論から言うと、かげり はくは生きている! どうしてかと言うとそもそもどんなに強い冒険者でもグレートウルフを一人で討伐なんざ化け物に違いねえんだとよ。
 グレートウルフを一人で討伐するならそれは歴代勇者に匹敵する力らしくてな。影にそんな力無いだろうとは思うけど、何と言うことか自分のことを"ハク"と名乗る冒険者が現にグレートウルフを討伐したって話だ。
 このハクって人が影白と同一人物なのかはまだ分からないが、もし本人だった場合生きている確率は非常に高いということだ!」

「なんだって!?」

「んだとゴラァッ!!」

 鬼堂は光輝が影白が生きているかも知れないと言う話に驚くと同時に康太郎を思いっきり殴り飛ばす。

「ぼへぇっ!?」

「お? 康太郎、てめぇその情報に幾ら使ったんだ?」

「え、えーとざっと40万オロ……ぎゃあ! ぐへぇっ!?」

 鬼堂は倒れた康太郎に馬乗りになって更に殴る。

「影が生きている事なんて俺にゃあどうでも良いんだよ!! これまで金を貯めんのにどんだけ苦労したと思ってんだ!! まとも戦えねえお前はずっと後ろで見ていたくせによ! オラァ! あああぁ畜生!! もう2万5,000オロしかねぇじゃねぇか! 向こうに帰ったらすっからかんだぞオイ!!」

「だ、誰か止め……ぎゃあっ!!」

 ブチ切れた鬼堂を止められる者は居ない。前回は玲香の言葉で鬼堂は止まったが、玲香も康太郎がボコボコに殴られる様に何も言うことが無かった。

「な、なら影からお金を貰えば良いじゃ無いか! アイツは終わった後帝国を出て行ったって話だ!! まだ近くにいるかもしれないっ! ヒィッ!?」

 その話を聞いて鬼堂は次の康太郎の顔面を殴る拳が寸前で止まる。

「ほう? そりゃ良い話を聞いたぜ……あいつは国の人間でも兵士でもねえ。あいつなら半殺しにしてもいいよなぁ? 康太郎。それで良いんだよ。俺の求めることが良くわかってるじゃねえか……ククク……んじゃあ探しにいくぞ!!」

 鬼堂はニヤついた表情で、最後のついでと言わんばかりに拳を寸止めされた事で安心し切った表情で倒れる康太郎の顔面を、思いっきり踏みつけ、蹴り飛ばしてからギルドの外へ向かった。

 鬼堂はどんなことでも止められない限り有言実行する男だ。光輝や茜、玲香は戸惑い、呆れた表情で鬼堂に付いていくことしか出来なかった。
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